見元一夫さんの‘春の恋’
まだ引っ張っています。展示会です。
毎年、いろいろな作品を生みだされている見元さんですが、今回私が一番興味があったのはこの‘春の恋’でした。
個体差はあるのですが、上弁がローズを帯びた薄紅色で、それが咲き進むと更に淡い薄紅色になってくるという、とても上品な色合いの作品です。
実は、初めてこの花を見たときに私は違和感を覚えました。
前へ前へと躍動感があってエネルギッシュなイメージがあるのが見元さんの作品。ところが、この花は控え目でそれに凛とした美しさを持っている・・・。どうも今までの作品と雰囲気が違う。
これ、本当に見元さんが作ったの?誰か女性スタッフが選抜したんじゃないの?そう思えるほどでした。
ところが、あるテレビドラマを見ていたらそのモヤモヤが一気に吹き飛びました。ああ、これは「加尾の恋」だと!
そう、見ていたのは大河ドラマの「龍馬伝」。これは坂本龍馬の生き様を岩崎弥太郎の視点から描いた高視聴率のドラマです。
平井加尾は平井収二郎の妹で坂本龍馬とは幼馴染で恋仲。ところがいろいろな事情で二人の仲は引き裂かれてしまいます。
悲恋の加尾は龍馬の想いを心の内に鎮めて行きます。あきらめるんじゃあない、自らの意思で思い鎮めていく。思いはあるけれども表面には出さない、そこに凛とした土佐の女性の美がある。
そうと分かればこの‘春の恋’は間違いなく見元さんの作品に違いありません。
文学や絵画の世界ではその作家の生まれ育った土地(風土)との関連性は良く論じられます。(例えば、太宰治と津軽など)
育種という創作活動(花を用いた美的創作活動)でも当然それは論じられるべきもの。
特に見元さんの作品に於いては土佐(幕末の動乱時期)という土地柄は切っても切れない関係にあります。
以前、私は見元さんの作品を「エネルギッシュな若者集団」のようであると表現したことがありますが、まさしくそれは坂本龍馬を中心としたその土佐の若者集団。今、はっきりと分かりました。
見元さんはその集団を、そして時の激動の時代をパンジー・ビオラの作品をとおして表現しようとしているに違いない、そう確信します。
‘New歌姫’。
今迄にない赤と白のビオラはセンセーションを巻き起こしました。
赤と白は日本の色。龍馬たちが目指す新しい“日本”の色でもあります。それに「New」が付いている。
‘パッションウェーブ’。
情熱の波。桂浜から龍馬が眺めた土佐灘(太平洋)の波。この波の向こうには何が待っているのか。
‘アレキサンダー’。
ブラック&レッドの世界ではじめの色。画期的な花です。
現時点ではこれが「坂本龍馬」でしょう。
そして、それに続く栄養系が武市半平太、平井収二郎らになるでしょうか。
‘エリザベス’。
複雑な色世界。
‘ソフィア’。
エリザベスと同じものから派生した系統と思われます。
‘トミーの大冒険’。
シャープで端正な色と花型。
もしかしたら、これが岡田以蔵かもしれない。
‘野うざぎミーモ’。
一株でかなりの大株になり花を咲かせる様は見事!
案外、このあたりが岩崎弥太郎かもしれません。
こう見ると個々の品種が関係しあって一つの世界観(幕末の土佐、日本史に残る英雄達を輩出したあの時代)を作り上げていることがお分かりでしょう。
‘アレキサンダー’はあくまで現時点では、です。間違いなくこれから先‘アレキサンダー’を超える坂本龍馬が出てきます。
なぜなら、この見元さんの世界は坂本龍馬を求めてやまない世界だから。
‘エローチャーム’。
付けたしみたいになりましたが、これも目を引いた作品です。
ブラウン&イエローの品種はいっぱいあるのに何故か目を引く・・・。それは上弁がグリーニッシュだからです。画像ではうまく写っていないですが、光の加減でグリーンが見えます。
見元さんの花世界、これからどのように展開するのでしょうか。ドラマの展開と共に期待が膨らみます。
さて、見元さんの未発表作品が
植物自由区(しょくぶつフリーク)http://www.shokubutsu-freak.com/items/mimotobiola2010
で、見ることができます。よろしければアクセスしてみてください。