‘花しずく’
今回はなんといってもメインの金屏風(手作り)。
そこで平塚さんの‘ドリームワンダー’と共に目を引いたのがこの‘花しずく’。私の品種です。
実はこの品種、10年ぐらい前の品種。
しだれ咲きという当時としても画期的な品種でしたが、残念ながら評価は今一つ。
何せ、苗での販売。苗の状態ではまさかここまでしだれるとは誰も思わない。つまり完成状態が分からないのですから、評価のしようがない訳です。
この花の育成過程は以下のとおり。
‘ピンク&ホワイト’(ピンクベッター×アルベンシス)の育成途中で花型がややフリルを帯びて星咲きに似た個体(‘ピンク&ホワイト’は丸弁が目標)が出たので拾い上げて‘春の光’(すでに消失)と名付けて選抜を行いました。
この‘春の光’は茎がやや伸びる性質で、その中からある時、茎が異常に伸びる1個体が出現しました。
それが上の画像。(写真はこの2枚のみ。過去のブロク、フローラルシャワーの項でも紹介)
‘フローラルシャワー’とそのしだれる様から名付けました。
このように表記すると分かりやすいかも
ピンクベッター×アルベンシス (交配選抜)⇒ ピンク&ホワイト (変異選抜)⇒ 春の光 (変異選抜)⇒フローラルシャワー (改名&選抜)⇒ 花しずく
もともと‘ピンク&ホワイト’はペチュニアの‘サフィニア’に触発されてクリーピングタイプのビオラを作りだそうとした交配。ですが、そのイメージよりもピンク&ホワイトの上品な色合いの花が出来たので目標がそちらにシフトしてしましました。
ですからこの‘フローラルシャワー’で巡り巡って当初の目的のものが出現したことになります。当時私はまだ素人状態でしたが、この株のすごさは分かりました。
茎が伸びるものは数株系統からも出ていたのですが、花型やバランスが悪く残そうという気持ちになれなかった。ですが今度は違う。なんとも雰囲気のいい株です。改めて見直してもすごい株ですよね。
さっそく選抜の開始。可能な限りセルフで種を採って、同時にバリエーションを求めて他の花と交配(この頃は記録を全く付けていなかった。他のタイプのしだれ咲きがないのでこの時の他家受粉は失敗した模様)。
代を重ねるごとに若干茎の伸びは縮まったようですが、花色は濃い目になり、品種としてまとまってきました(早野さんにもほめられた)。
そんな矢先に施設の運営方針の転換と、異動。維持できなくなったので他系統と共に数社の種苗会社に渡っています。
それからしばらくはこの品種とはまともに付き合うことはありませんでした。(作ったりそうでなったりの状態)
数年前、ある種苗会社から里帰りした‘フローラルシャワー’。色幅がありますが、当時の形質で保存して下さった系統です。‘花しずく’とは若干雰囲気が違います。
‘フローラルシャワー’は、渡って2~3年後に花ろまんさんからは売りだされることになりました。だた、キンギョソウに同名の品種があるのでその時「花しずく」と改名。
販売時の品種の解説には私の「会心の作」と表記。
「ああ、花ろまんさんはこの品種の価値が分かって下さってるんだなあ」と感謝しながらも、一体どれくらいの方がその価値を分かってくれているんだろうと心に引っかかっているものがありました。
苗では絶対に分からない、完成品じゃないと分からないその価値。
で、今回の展示会です。実は今回花しずくを展示する予定はありませんでした。種を播いていないんです。
ところが、片山さんにお願いした夢咲きヴィオラの中にたった一株だけ有った(花しずくは株を見れば一目瞭然なんです)。これはそういう運命、タイミング!
それをラン鉢に植えて展示したらドンピシャ!!多くの方が「いい」と褒めてくださって、平塚さんの‘ドリームワンダー’にも並ぶ展示となりました。
認知されるまでに本当に長い時間がかかりました。でも、やはりその時間は必要だったのでしょう。
2~3年の品種のにはないまるで盆栽のような風格。ブリーダーにもその品種にも時は流れるのじゃない、やった分だけ重なっていくものだということが分かります。
「こんげしてラン鉢に植ゆっともいいねぇ~、家にゃ何ぼでもあっとよ。こりゃ帰って植えにゃいかん(と、思いついたように帰ろうとする)」
「お客様、これはこの品種だから合うのであって、普通に売られている品種ではこのようには・・・・。あの~、お客様ぁ~」
と、中にはこのようなお客さまもいらっしゃいました・・・。(汗)