殻高が低い(=殻高より殻径の方が大きい)ものが一般的になじみがあるが、陸産貝類にはキセルガイ科(左巻き)やキセルモドキ科、オカチョウジガイ科(ともに右巻き)など細長い殻をもつものもある。カタツムリと呼ばれるものの中にも、オナジマイマイ科のトウガタホソマイマイ やニッポンマイマイ科のヤマタカマイマイ なども日本産の一般的な種に比べると殻高が高く、外国産のものでは更に長い殻をもつものも多く知られる。一般的に樹上や岩などの壁面を生活圏とする種類で殻高の高くなる傾向がある。しかし例外も多く殻形の適応については必ずしもよくわかっていない。
海の貝では捕食者に対抗するために棘や瘤などで殻を武装するものも多いが、日本産のカタツムリでは目立つ突起を持つ種はいない。世界的に見ても小型~微小な種で棘をもったものが少数知られるほかは、大部分の種は滑らかもしくは多少のシワやデコボコ、もしくはある程度の螺肋(らろく)や縦肋(じゅうろく)をもつ程度である。これは活動の妨げになることと系統による制約との両方が関係していると考えられるが、明確な説はない。また海の貝によく見られる螺肋は陸の前鰓類ではしばしば見られるが、有肺類に限ってはほとんど見られない。
殻自体の突起ではないが、殻の表面の殻皮が変化して毛状になっている種も知られる。シワクチマイマイ類 やビロウドマイマイ類 では多くの毛状突起で殻全体が覆われており、よく似た殻表を持つ種は外国の別科のものにもいくつか見られる。またオナジマイマイ科のオオケマイマイ などの殻の周囲にはやや長い毛が見られ、ヤマタニシ科のヤマトガイ類 も長い毛を持つものが多いが、これらは老成すると脱落している場合も多い。
殻口
陸貝のうち前鰓類 (ぜんさいるい)のものは殻口を塞ぐ蓋をもつが、カタツムリの大部分は蓋をもたない有肺類である。そのため、敵に襲われて殻内に逃げ込んでも殻口が無防備となりやすく、一部の種では殻口を厚くしたり狭くしたりして、殻破壊の糸口や外敵の侵入などを防ぐように進化している。キセルガイ科では殻の内壁が弁状に突出したバネ式の閉弁構造を発達させており、体が殻奥に引っ込むと自動的に通路を塞ぐようになっている。またキバサナギガイ やスナガイ 、クチミゾガイ類 なども殻口や殻内に多数の歯状突起や襞(ひだ)をもつ。海岸近くに棲むオカミミガイ科 にも同様の歯状突起をもつ種が多い。外国のものではオニグチマイマイやサカダチマイマイなどが殻口内部に複雑な突起を発達させた種としてよく知られている。このような様々な殻口の構造は成貝になって初めて形成されるのが普通で、成長の最後の仕上げとして大きなエネルギーを費やすのである。このような殻口には種類ごとの特徴が出やすく、殻口が破損しているものや完全に形成されていない幼貝などでは同定 が難しい場合も多い。殻口は貝自身にとっても観察者にとっても極めて重要な部分の一つなのである。
殻の模様と色
カタツムリには様々な模様のあるものも多く、特に「色帯(しきたい)」と呼ばれる、殻頂を上にしたとき水平方向に走る帯状の模様をもつものが多い。このパターンは系統とは関係なく世界中のカタツムリに多く見られる。日本産のミスジマイマイ属 (Euhadra)では色帯の出る位置が決まっており、その位置は上から順に1~4の番号が振られ、帯がない場合は0で表記される。全部の色帯が出たものは1234、まったく色帯のないものは0000となる。この色帯も遺伝子に支配されていると考えられており、同一種の同一個体群内でもいろいろなものが見られることも多い。
また色帯と垂直に交わる色の濃淡が見られる場合もあり、これは「火炎彩」や「虎斑(こはん)」あるいは「トラマイマイ模様」と呼ばれる。これはニシキマイマイ やハリママイマイ 、ヒタチマイマイ などでよく見られる。模様の呼称の元となったトラマイマイはシモダマイマイ の斑紋の顕著な一型とされ静岡県 などに分布する。
カタツムリの色は一般に茶色系統のものが多く、特に日本産のものでは色彩の乏しいものが多い。しかし熱帯 にはミドリパプア のような鮮やかな黄緑色や、コダママイマイ やハワイマイマイ のような鮮やかな模様をもつものなど、黄色や紫やピンクなど美しい色彩をもつものも多く、これらも生息環境に適応して進化した結果であると考えられている。また伊豆諸島に分布するシモダマイマイでは殻の色彩が同地域に住むヘビの模様と呼応して変化しており、鳥などの捕食者 に対するベイツ型擬態 (Batesian mimics)ではないかという説もある。
体
体は軟体部とも呼ばれ、殻とは殻軸筋(かくじくきん)によって殻軸で付着している。この筋肉を収縮させることで体を殻内に引き込むことができる。殻と体は別物ではなく、殻は体の一器官ともいえるもので、殻から出たカタツムリがナメクジとして生きていくようなことはなく、殻が大きく破損した場合には死んでしまうこともある。これは他の巻き貝 も同じである。
一般にカタツムリと呼ばれる有肺類では頭部に触角が2対あり、大きい触角の先端には眼があるが、ヤマタニシなどの前鰓類の陸貝では触角は1対で先がとがっており、眼はその根元にある。触覚のある頭部下面には口があり、口内の上には顎板(がくばん:jaw)が、底部にはおろし金状の歯舌 (しぜつ:radula)があり、後者で餌を磨り取って食べる。ガラス面を這うカタツムリの口を観察すると赤味を帯びた小さいものが見え隠れすることがあるが、これが顎板で、さらによく見ると顎板の動きと呼応して透明の歯舌の運動も見られる。
雌雄同体の有肺類の触角の後方側面(右巻き種では右側)には生殖孔と呼ばれる生殖器の開口部があるが、普段は閉じていて目立たない。内部からは雌雄両性の生殖器がそれぞれ開口していて、生殖行動時には内部から陰茎が反転翻出し相互に生殖孔に挿入して交尾が行われる。生殖器の構造は分類上きわめて重要な部分と考えられており、新種記載の際にはその構造を図示記載するのが通例である。同定する際にも解剖してその構造を調べなければならない場合も多く、古い時代に殻の特徴のみで分類されたものが、後に生殖器の構造からまったくの別科であったと判明したものもある。なおリンゴマイマイ科やオナジマイマイ科など一部の群では生殖器に恋矢(れんし)と呼ばれる石灰質の槍状構造を持ち、交尾の際にはそれを相手に刺して刺激することが知られている。またオナジマイマイ科やニッポンマイマイ科では、生殖期に大触角の間の「額」の位置が盛り上がって瘤(こぶ)状になっているのが見られることがある。これは頭瘤(とうりゅう)と呼ばれるもので、性フェロモン を分泌すると考えられている。
生態
生息環境
多くの種は乾燥に弱いためある程度の湿度があるところに多く生息するが、乾いたところを好む種類もあり、中には砂漠の環境に適応した種さえある。ミジンマイマイ やウスカワマイマイ のように海岸や畑地、道路や人家周辺などの開けた場所を好む種や、深山にしか生息しない種などがあり、種ごとに地理的分布や生息環境が決まっていることが多い。中には岩の表面に住むもの、朽ち木にいるもの、あるいは樹上性のものなど、限られた条件にのみ生息するものもある。
また、貝殻の材料となるカルシウムはカタツムリにとって補給の難しい資源であり、個体数の制限要因となり得る。したがって、それを豊富に供給してくれる石灰岩地 はカタツムリにとって好適な環境である。そのため種類も個体数も多いことで知られる。たとえば沖縄 の隆起珊瑚礁 の森林では、温暖な気候も相まってカタツムリの個体数が多く、貝殻を踏まずに一歩も歩けないほどである。また石灰岩地で種分化して固有種 となっているものも多い。このようなことから、ある場所で採取された一群のカタツムリを見ることで、その地理的位置やおおよその環境を推定することも可能である。