夜、線路沿いの薄暗い道をひとりで歩く。

それは自分にとってよくある日常。


しかし・・・




その日は朝から妙な胸騒ぎがあった。




帰り道にスーパーで買い物をして、冷たい風の中自宅のアパートへ。

毎日通るその道、その日だけは前にも後ろにも人影がない。

そんなに遅い時間ではなかったから「珍しいなぁ」

そう思った瞬間、遠く前方に人影が。


道端に座り込んでいたらしい。

暗くてよくは見えないが、明らかに男性だ。

ずいぶん体格がよく、歩き方でもそれが伺える。

その人は左右の道をキョロキョロ見渡すと、真っ直ぐこっちへ向かって歩き出した。


視界の端でその人の動きを観察していた私は道路を渡った。

理由はない、なんとなくの行動。

そのままだと至近距離ですれ違うことになるから、道路の左端を歩いていたが右端に渡ったのだ。


すると、なんとその人も道路を渡っているではないか。

今朝の妙な胸騒ぎが甦る。


敵はかなりの大柄。

歩き方からして重量級間違いなし。

こんな時に限って、大量に買い込んでしまった。

いつものバッグにお弁当バッグと、スーパーの袋が大2つ。


チラッと後ろを振り返った。

誰もいない。

今この路上には敵と私のみ。


互いの距離はどんどん縮まる。

私は冷静に考えた。

何かの場合に備えなくては。


とにかく両手が塞がっていては不利。

荷物を左手に集めて右を空けよう。

自分の得意技は右の蹴り。

もし接近戦となればヒジかヒザでいこう。

最悪、お弁当バックと買い物袋は諦めるしかないだろう。

あぁ、タマゴと酢の瓶が入ってるから投げ捨てたら偉いことになるな。


そうしている間に距離はかなり縮まっていた。


敵の表情は影で見えない。

私の目の動きは街灯の明かりで敵に見えているだろう。

さぁ、どうくる!?



敵は突然声をあげた。

ビビる私。

顔が上を向いた一瞬見えた表情は・・・ニヤケ顔?

いよいよ怖ろしくなってきた。

だが一体何を喋っているかが分からない。



遂に距離は5メートルを切った。

先に手を出すと私が犯罪者になってしまう。

いつ仕掛けてくるか。

極度の緊張状態でついにすれ違うその瞬間・・・



・・・ビックリ・クエスチョンマーク




イヤホン??





その人は敵ではなかった。

私の緊張をよそに、あっさりすれ違う。

その人はただ、ノリノリで歌っていたのだった。




せめて、歌とわかるくらいに音程つけてくれれば・・・

罪作りなジャイアンに翻弄されたのであった。

いちいち疑ってしまって・・・世の男性方には申し訳ない汗