深海生物(フネカサガイ)が潜水艇に運ばれて外来種に | パンデモニウム

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※何度かのブログフォーマット変更により改行ポイントがずれてしまい、ほとんどのページがガタガタになっております。
読み難くて申し訳ないです。

 ↓ ナショナルジオグラフィック公式日本語サイト より


カサガイという軟体動物に関する最新の研究が発表された。

それによると、この深海の侵略者は潜水艇に“密航”して、極限環境から別の極限

環境へと移り住んでいるらしい。

                                                                               

今回の発見は、深海生物を研究目的で採集する際に非常な注意を払わねばなら

ないことを、改めて思い知らせるものだ。

研究のきっかけとなったのは、2006年の深海潜水艇アルビン号のミッションだ。

このとき、アルビン号はまずカリフォルニア沖の水深2.7キロの熱水噴出孔を調査

した。

ここで調査用サンプルとして堆積物や生物を採取すると、アルビンはいったん

浮上し、母艦に載せられて2日かけて移動した後、今度はワシントン州沖の調査

地点で、水深2.2キロまで潜水した。

ワシントン州での調査終了後にアルビンを引き上げると、サンプルの採集カゴの

1つに見慣れた軟体動物が入っていて研究チームは驚いた。

「最初は嬉しい驚きだったが、喜んでばかりもいられなくなった」と、この調査の

メンバーだったジャネット・ボイト(Janet Voight)氏は語る。

ボイト氏はシカゴのフィールド自然史博物館で無脊椎動物を研究している。

◆偶然ではありえない

何年もかけて放射特性や遺伝子配列、身体的特徴を調べた結果、ボイト氏の

チームは、ワシントン州沖で発見されたフネカサガイの一種(学名:Lepetodrilus

gordensis)は、カリフォルニア沖の熱水噴出孔で採取されたものと完全に同じ種

であるとの結論に至った。


 ↓ canada.com より  Lepetodrilus gordensis


パンデモニウム-フネカサガイ01


チームは最初、これまで知られていなかったカサガイの個体群を発見したものと

思っていたが、調査の結果からは、このカサガイが潜水艇に便乗してワシントン

州に到達し、コロニーを作って住み着いたのだろうということが分かった。

後から考えたら、もっと慎重であるべきだったとボイト氏は言う。

ほかのいくつかの深海生物でも、水面までの浮上という過酷な環境の変化が

あっても、ふたたび海底に戻れば元通り生きられることが確認されていたの

だから。

それでもカサガイがこれほど極端な水圧と水温の変化に耐えられるどころか、

長期にわたって空気にさらされていても問題ないとは、研究者たちには思いも

よらなかったとボイト氏は認めた。

アルビン号の運用規則では、海底の調査地点から別の調査地点に移動する前

に、すべての装置を水洗いするよう定められている。

しかしカリフォルニアでの調査終了後、チームは必要な装置の洗浄を怠った。

「そうしてしまったのは本当に恥ずべきことだ。もっと慎重であるべきだった。

しかし、それが直ちに明確な危機につながるとは思っていなかった」とボイト氏は

言う。

◆「環境破壊の元凶」

深海潜水艇の洗浄を怠れば、研究データに悪影響が出るだけでは済まないと

ボイト氏は言う。

特に、関係する生物の繁殖力が高い場合は問題が大きい。

地球上の各地に海底火山脈があり、そこにできる熱水噴出孔からは、きわめて

高温でミネラルの豊富な水が噴出している。

噴出孔の周辺にはチムニーと呼ばれる煙突状の構造物ができ、極限環境微生物

と呼ばれるバクテリアはそこに繁殖する。

このバクテリアの存在に支えられて、チューブワームやマキガイ、カニやタコの

仲間など、風変わりな生物のオアシスが形成される。

「火山脈の広がりが早ければ、生存環境もそれだけ変わりやすくなる。これらの

生物はチムニーが倒れたり噴出孔が活動しなくなったりしても、適応しなくては

ならない」とボイト氏は言う。

その結果、これらの種はしばしば、驚異的な早さで成長し繁殖するようになった。

この特性ゆえに、これらは侵入生物として厄介視されている。

「これらの種はあらゆる開放環境に住み着くことができる。環境破壊の元凶と

言っていい」とボイト氏は言う。

カサガイの場合特に問題なのは、エラの部分にバクテリアを寄生させられるように

なっていることだ。

場合によっては、このバクテリアが病気を巻き散らすこともある。

また、カサガイの生殖器にはカイアシという極小の甲殻類が寄生することがあり、

この場合もやはり、カサガイの移動した先の生物に悪影響を及ぼしかねない。

このように、カサガイの“密航”は、手つかずの生息域を損なう恐れがあるとボイト

氏は懸念する。

「熱水噴出孔の周辺は、1つ1つが島のように」独自の生態系を育んでいるとボイト

氏は言う。

「だから私たちは今、ほかの研究者らに呼びかけたい。本当に慎重にしなくては

いけない、私たちの失敗から学んでほしいと」。

                                                                        

                                                                          

人間の調査活動すら、生態系に重大な影響を及ぼしてしまうとは!

洞窟でも、人間が踏み込む事で、二酸化炭素濃度や地形が変わってしまう場合

が有りますからね・・・

本来決められていた洗浄を怠る、なんていうのは言語道断ですが。


フネカサガイは、腹足綱古腹足上目フネカサガイ科Lepetodrilus属に分類される

巻貝の一種です。

                                                                         

                                                                           

参考記事:「新発見・メキシコの熱水噴出孔 その1:チムニー」

      「新発見・メキシコの熱水噴出孔 その2:ゴエモンコシオリエビ」

      「新発見・メキシコの熱水噴出孔 その3:カイロウドウケツ」

      「新発見・メキシコの熱水噴出孔 その4:チューブワーム」

      「新発見・メキシコの熱水噴出孔 その5:シロサンゴ」

                                                                           

                                                                                  

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