諸星大二郎氏・原作、井上淳哉氏・漫画、『妖怪HUNTER 闇の客人』 は、
『月間コミック@バンチ』 (新潮社;毎月21日頃発売)で、短期集中連載され
ました。
本作は、諸星大二郎氏の 『妖怪ハンター』 シリーズ、『稗田礼二郎の
フィールド・ノート』 シリーズなどと呼ばれる作品群の中から、「闇の客人」
(『諸星大二郎 妖怪ハンター 地の巻』 所収、初出は1990年の 『月刊
ベアーズクラブ 1月号』)をリメイクしたものです。
ストーリーは、
長髪黒衣の異端の考古学者、稗田(ひえだ)礼二郎。
彼が日本各地でフィールドワークを行い、そこで起こる事件・怪現象を追う
内に、超自然的な存在が明らかになる。
稗田は、町興しの為、永年途絶えていた「鬼祭り」を復活させた大鳥町を
訪れていた。
稗田は「鬼祭り」の監修をしていたが、観光事業としての利益を追求する
実行委員によって、祭りの作法は都合よく変えられてしまっていた。
大盛況の「鬼祭り」の最中、突然異形のモノが現れる・・・
ストーリーは、概ね原作通りですが、異なる点も幾つか見受けられます。
先ず、主人公である稗田礼二郎。
原作でも、考古学者とされますが、民俗学的アプローチも多いです。
そもそも、こんなにあちこちウロウロする考古学者もいないでしょうからね
・・・(;^ω^)
「妖怪ハンター」といっても、実際、妖怪を狩る訳ではありません。
原作では、稗田は人間性に乏しく(敢えて抑えられ)、傍観者であり、
(読者に対する)解説者であるのが常です。
感情移入する隙は、殆ど有りません。
これに対し、本作では、かなり人間味あふれるキャラクターとなっています。
(サムズアップまでしてしまうとは!)
次に、舞台となる大鳥町。
本作では、「鬼祭り」を取り仕切る大鳥一族の本家と、町中から虐げられる
分家が設定され、オリジナルキャラクターである分家の娘・綾女が物語に
大きく関わります。
原作でも登場する、本来の「鬼祭り」を知るおじいさんは、本作では綾女の
おじいさんであり、前の「鬼祭り」の唯一の生き残り、その体験のせいか
少しおかしくなってしまっています。
そして、マンガとしてのバランス。
原作では、祭りの作法や文献、常世の国についてなどの表現が有りますが、
本作では、物語の流れの中で目を止めるような部分は排され、常世の国
から来訪したモノ(「鬼」と呼ばれています)とのアクションの比重が高く
なっています。
井上淳哉氏は、『月刊コミック@バンチ』 で、『BTOOOM!(ブトゥーム)』
を連載されているのですが、私は本作が初見でした。
パソコンによる緻密な絵を、巧く織り込んでいると思います。
イマドキといえばイマドキ風の作風です。
男性キャラには、園田健一氏のタッチを感じました。
『妖怪ハンター』 シリーズは、物語の骨子が 『宗像教授異考録』 に似て
いますが、作者同士が 「本棚に同じ本が並んでいて苦笑した」とされるなど、
懇意にされています。
諸星大二郎氏と云えば、『諸怪志異』 の第3集の発売が8月17日に決まり
ました。こちらも楽しみです (^ω^)
更に更に、発売中の 『幽 VOL.15』 では、諸星大二郎氏と京極夏彦氏の
対談が掲載されています。
何と、京極夏彦氏は、自作のスクラップブックを作る程 『妖怪ハンター』
シリーズのファンであり、「榎木津礼二郎の名は、稗田礼二郎に由来する
のかも」といった、興味深い内容です (^ω^)
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