ギミック本体のスペックもさながら、その「完成するまでのコンセプト」が「使ってる最中」とか「壊れちゃったあと」までも網羅でき、一般的に「こんなに直すのに手こずるんだ」に懸念(けねん)を抱いてたひとらに受け入れられるほど、世界は修理代に不当を覚えてたってことでもある気がしますね。
OSの更新やセキュリティ問題をかさにきて、メーカーが10万円単位の買い物をスマホに強いてくる価格帯は、正直「買い替え」するギミックにしては高価すぎるし、長く使いたさは愛着を大事にしたい人には必須項目でもありますから。
資金力でもブランド力でも技術力でも劣るスタートアップが参入し、10年のあいだ生き残る……どころか一定の存在感を示すまでに成長
の、仕方を勘づけた目の良さですよ。
フェアフォンが市場に提示しているのは「ライフサイクルを長期化することで資源・環境に関する負荷を低減する」というビジョンです。
- サステナブルな設計
モジュラーデザインを採用し、ユーザー自身が部品を容易に交換・アップグレードできるように設計することで、製品のライフサイクルを延ばし、廃棄物の削減に貢献する
- リペアラビリティ(修理しやすさ)
既存の多くのスマートフォンが接着剤の使用や構造の複雑性等の理由によって修理が事実上不可能なものがほとんどである中、ユーザー自身によって容易に修理できるようにする
- 透明性
部品の原料供給元や製造過程、コスト構造などを公開することで、企業の透明性を高める
- サプライチェーンのフェアネス
供給チェーン全体にフェアネスを求める。鉱山労働者の権利を尊重し、紛争地域での資源の採掘を避けるために取り組む
- ビジョンとミッション
企業の目的を、単にスマートフォンを売ることではなく、電子製品の生産と消費に関連する社会的・環境的な問題に取り組むことに置く
いいじゃん!日本じゃこの立ち位置に駆け上がってくる魂は損なわれてるわ。
「モジュラーデザインの採用」も「ライフサイクルの延長」も「リペアラビリティの向上」も、直接的に顧客に何らかの便益を与えるものではありません。
言うなれば、フェアフォンは、既存の競合メーカーに対して、後発として差別的優位になるような顧客便益を、何一つとして提供していないまま、参入に成功したのです。これは驚くべきことです。
目の付け所、ですな。
既存のビジネスの慣習に慣れきってしまっている業界や市場に対して、彼ら自身の哲学に基づいて批判的=クリティカルな提言を行った
ただの反骨意識だけでは成り立たんですね、これ。
フェアフォンの創業者たちは「私たちがやっているのはビジネスというより『修理する権利を取り戻す』という社会運動なのです
従来、修理を検討しているユーザーが取れる選択肢は「メーカーが認めた公式修理サービス」の一択で、それ以外を利用すると製品に付帯するメーカー保証自体が消えてしまうのが一般的でした。このような状況下では、メーカーが修理費用を高額に設定できたり、またそうすることで、修理ではなく新製品の買い替えにユーザーを誘導できたりします。
結果として、廃棄物は増え、ユーザーは不当な出費を強いられることになります。
このさ、誰もが薄々勘づいてて、誰もが黙り込んでる、が前提のやり口に楯突くのってすごく大事な姿勢なんだよね。批判精神だけでなく、頭を小突かれた消費者たちが反旗を翻していいことだった!と正気を取り戻す運動。
仕方がない、で済まさせないという、一種の意固地。
わたしたちの「そういうものだ」に疑問符を投げつけて、「不満のなかったところに、まるで正気を取り戻させるかのように、不満を顕在化させ、実相に至らしめる」作用がこれらベンチャーの観念にある。
記事全般に貫かれるコンセプトの発見の愉快さは、なるほどと思わせもするし、脳内でみちびかれるばかりの小賢しさも薫る。
そして人はそういう小賢しさを好む。そのなかでの戯(たわむ)れを、好んで導入もする。