ぼくならできると思ったんだ | アメブロなpandaheavenブログ

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最近漫画の先生始めました。
好評です☆

写真を撮ったり映画を見たり。でもやっぱり普通が一番!
みんなも無理しないでね!

(これは数十年前のエッセイです)

 

定価50万をはるかにこえるレンズが15万で買えるって聞いたらチャンスだ、って思うよね?

 

でもそれがネットオークションでそういう値段で出てたら「なんでだろ?」とも思うよね。

なんか訳があるのかしらん?

それとも純粋に善意で?

いやいや、とある事情が重なりに重なって苦渋の選択として出品ざるを得ないことに・・・などなど妄想は尽きない。

前々からあちこちで告白しているように、私は戦闘機を写真でパシャリと撮りたく思っている輩の一員でして、それも航空ショーなどで地上に鎮座してるものを「きれいに撮る」なんてものではなく、ギュンギュン飛んでるところを「まさか!の一枚!」になるような機動してる躍動感をとらえたくって仕方ないのですよ。

そんなのはある一瞬間の、滅多にない、そして一種偶然の産物ではあるんだけど、その偶然に立ち会うチャンスってのはこっちから出向いてないと出会えない訳で、それもそのときにカメラ、を持ってないとそれがおさめられないわけで、そのうえ「望遠レンズ」でもないと上空を旋回する機体を画面一杯に写せない訳で、そのうえシャッタースピードやら露出やらで写る画像もてんで違う印象になっちまうわけです。


つまりは「たった一瞬のサイコーにイカす戦闘機の機動を、偶然そこに居合わせた、偶然カメラに偶然ピッタリのレンズを構えてたボクさまが、偶然パシャリとおさめました」という「いやー、運がよかったですよ」的しらじらしさでムフフな写真を目論む訳です。

そんな訳のためにかれこれ1年以上休みになるたび飛行場へ出かけ、レンズ相場を眺め、何曜日の何時だと比較的編隊飛行があるだの、急上昇をしたりするなどの冒険が多いかなど、いまだ出会えぬ偶然に悶々とウキウキが混在したままいるわけです。

これまではシグマの500ミリっていうレンズで撮ってたんですよ。比較的綺麗に撮れるレンズだったんですけど、「ああ、もうひといき近くまで写せるレンズがあったらなあ」っていう妙な欲は常々出る訳です。

カメラ持ってる人、一眼レフ(銀塩でもデジタルでも)持ちの人はどうしてもこのレンズ地獄一直線になる。


「そこに最適のレンズがあればきっと撮り逃した感じにならなかったのに!!」といういわれのない自信と失敗談が禍根を残すレンズ道にあっては、実際いいレンズがあったところで腕前がカバーするでなし、そうそう大した差は写真にでないんだろうけど、きっとレンズ、きっとレンズだ、ともはや宗教じみた不安感にさいなまれ、とらわれちゃうのね。すっかりと。

航空機写真を撮ろうと考える人ってけっこういてね、その撮影スポットってのも限られるんだけど、そういうとこ見つける人がちゃんと、複数いて、キヤノンの白玉レンズ(高くてボディカラーが白くてやたらきれいに撮れる、やたら高価なシリーズ。人呼んでLシリーズ!ジャーン!)を無造作にカメラにヒョイとつけて、「こんなに高いレンズをさりげなく使っちゃってるよ」アピール込みで撮影待ちしてる連中の最中にいるっていうのは、私のようなここ1年の成り上がり程度のカメラ小僧では

「なにしにきやがった、坊主。ここは撮影をライフワークとするモノノフの戦場であるぞ?ガハハ!そんなちんちくりんのドス黒いレンズ抱えてのたのた歩き回ってると、喰っちまうぞ!パクリとな!ガハハ!」的威嚇が空気にまんえんしてるよーな気にすらなる雰囲気なのね。(卑屈になるな、俺!頑張れ俺!)

いやいや実際はあちこちから趣味でやってきた、マニアっていう具合の人たちのゆるやかな集合なんでしょうがとにかくもうそこにそろってきてる白レンズ達の本数を思うと、「今日ここにあるレンズ達だけでざっと300万!」的高価レンズのオンパレードなのよ・・・・・


棍棒かなにか持って原始人よろしくそこで暴れたら、俺はレンズ大尽になれるなぁ・・・と不埒なことを妄想しながら自前の黒い500ミリで黙々と撮ってきた1年だったのね。

ずーっと「600ミリ、欲しいなあ」って思いながらレンズ屋を徘徊するも、値札にはやれ40万で安いだの、それ50万、60万なんてのは当たり前だのが相場なんで「ここは中東ドバイの石油成り金でも住んでんのか!」と毒を心で吐きながら「こんな高いレンズできれいに撮れたところで、写真にこもる性根はきっと薄汚れているに違いない。

ああ、せめて綺麗な心根でみじめではあっても志のある写真を撮ろうではないか」と自ら意気地のあるところをみせようと気丈にしてたのね。

 

でも心の隅で「心が汚れててもいいレンズで撮りたいなあ」って暗黒面がささやくのよ。

そーれがさ、1月に入ってネットオークションに800ミリが15万で出てるじゃない?
うきゃーーーーーーーーーーーーー!!
発奮しましたよ。もんどり打ちましたよ。どったんばったんしましたよ。
 

ふおおお、どうせ誰か買うんだよなあ・・・くっそー、日本在住のドバイの石油成り金めぇ、といわれも証拠もない妄想に悶々としていたものの・・・・15万ならなんとか・・・・とハタと「レンズ買えるカモー」的予感がムックムクとわいてきまして、「だって相場だと50万以上するじゃない。
 

それがこの価格スタートなら私にも無理したら手を出せるジャン。なになに、聞けば世間は不況だとか。(俺も不況だが)なおさらチャンスではないか。それ、🐼、どんといけ、やっちまえ、男と生まれたからには胸をはって挑むべき瞬間があるじゃないか。なぁに、もともと50万以上するものが15万だというのだ。

 

挑戦そのものがすでに本懐と思えばいい。駄目でもいい(すでに心は保険モード)、次がある(いわれのない気休め)。駄目もとでいけ!(当初よりずいぶんわい小な大志に落ち込んでいる)」

ネットでそのレンズの性能を調べた。

私の期待するサイズには間違いない。

重さも随分あるが、まぁこれまで様々なレンズ遍歴のある私だ、そこらへんはまぁ心配するところではない。重さじゃない、800ミリの出物がこの価格で今後何度チャンスがあると思ってんだ!!と叱咤激励し、発奮を促し、800ミリのレンズでこそ見せてくれるファインダー世界を見に行こう!と思った次第です。

そういう大きな買い物をする時に私が当てにするのが学生時分よりの友人N海氏で、氏は首都でカメラ屋さんの丁稚をしているのでたいそう相場と性能に詳しい。


メールで800ミリどーやろー?って聞いたところ
「重いだろうな!筋トレすれば?筋トレだ、筋トレ」

「足腰鍛えなはれ」(携帯メール無断引用)。


おお、これは買うべきだよ🐼!断然応援しちゃうね!っていう彼なりのアピールと永年の友情から推察し、おりゃさー!!!!ってネットオークションに突入しました。


「ああ、どうか神様、誰も入札してきませんように・・・」祈りました。久々に祈りました。
この無神論者のながやが祈りました。無神論者なのでなにに祈ったのか自分でもよくわかりませんでしたが祈りました。

オークション締め切りまではしばらく日にちがあるので悶々とする訳です。
そこぞやの石油成り金(そんな奴いるの?)とか相場師が入札してきたらどうしよう。全然勝てないよー。
もうやめようよー、もう「早期終了」してくれないかなー・・・でもきっとこのレンズ狙ってる人は締めきりギリギリまで見てるんだろうなあ・・・それじゃなんだ?この俺の『現在の最高価格の入札者はあなたです』なんてな表示に浮かれ騒いでる様子は全くのぬか喜びで、無惨に最後に落涙する運命にあるってのか?!


ええいちくしょう!こんなに必死な私の純粋な(?)思いを弄ぼうってのか!よぉし、いいだろう、さぁこい!
どんとこい!・・・・いや、無理してこなくていい・・・いやむしろ来なくていい・・・・いやいやむしろ来ないで下さい。できれば来ないでください・・・全然来ないで下さい・・・お願い、来ないで・・・ひとりにして・・・と時間を追うごとに気弱になり、衰弱してゆきました。

その一念が通じたか、どなたも入札されてこない・・・・・おかしい・・・・・


世間は不況である(私もまたその輪に巣くうものの一員である)。それでも相場50万をくだらないレンズが15万という出物を、日本中のネットオークショナーたちが何ゆえダンマリを決め込むのか・・・・
こうなると変な不安がもたげてくる。この800ミリってのは、なんか訳ありなもんなんですか?

ううむ、では調べるかと、ネットでユーザーを探してみるが、ブログにしろ、エッセイにしろ、どうも使い勝手についてウンチクしてる人が全然見つからない・・・・800ミリに関するレンズ特性やら商品紹介のページ、発売のお知らせこそ見つかるものの、ユーザーの声がとんと見つからないのだ。

むむぅ、なぜだ?航空機撮影スポットではあんなにたくさんの人が三脚に白レンズ乗っけてわーい、ってやってるのに、ネットで自慢の一つもしないってのはなぜなんだ?なにか表に出せない話でもあるのん?
 

・・・いや待てよ、白レンズ軍団共(ちょっと見下した言い方をしてみたくなりました)(くやしくって)よくよく考えれば手持ちの人の方が多いぞ・・・・はっ!あれは200ミリから・・・・せいぜいが400ミリの、大口径レンズたちではないか!・・・・600ミリですらない!・・・・・・・あっ!・・・・・・・航空機写真を撮る人たちは800ミリなんか使ってない!!(今さら!!!)
なぜなんだ!??

そうこうしてるまにオークションは終了。

私は見事落札をし、郵送されるのを待つことになりました。


わーい、800ミリだー!見てろよー白レンズ軍団(この呼称に決定)(くやしくって)、このオレサマが800ミリを手に入れたからには貴様らの白っぽいレンズが日陰で育った植物のように弱々しくみえるくらい猛々しく御活躍をし、威力を発揮し、
「やっぱり航空写真は800ミリがイチバン!」といわせしめてやる!


ぶーんぶん空に向かって振り回してやるんだからね!N海が「ちぇっ、やっぱり800ミリっていいなっ」って悔しがるような写真もりもり撮るんだからねっ!って気分になりましたよ。

さーて、レンズの届く日、部屋にきたのはジェラルミンのケースに入ったレンズでした。
運送業者から受け取って、ズシリと腕に来る重さ・・・・んむぅ?・・・・んむむむぅ?
重い!

常軌を逸した重さ。


・・・・んま、まぁ、その、あれだ。ケースだから重いんだ、と思い直してふたをあける。
バズーカ砲みたいな、自分の腕周りよりも太い口径のレンズがもっちりと入っている。
持ち上げる・・・いや、「抱え上げる」という表現が妥当だろう。

よいしょっと抱えると腕ではなく、腰に来た!

「なぬぅ?!?!」息が止まる重さである。

この重さにには覚えがあるぞ・・・・・ユニキだ。
学生時分に映画撮影してたころ、学校の機材で「ユニキット」という照明機材3台を1ケースにおさめた重い重いセットがあったっけ。

移動のたびごとに照明部のセカンド、サードの後輩達が体力にものを言わせて担ぎ上げてたユニキット。通称’ユニキ’。


坂を登ったりすればどこかで休憩でもしなくちゃ息のあがるあの照明キットの重さをふと思い出す。

はっ!こんな重いレンズは頭上を越えてマッハで突進してる飛行機なんてのを捕らえられるのか??
イマサラか!
イマサラなんですが、

まぁ俺ならなんとなるだろう!
とこれまた論拠のない結論付けて、飛行場に向かいました。

いつもの場所に陣取り、レンズを出しますと、前方が大口径のため随分バランスが悪い。
あんまり、あんまりにも重いので三脚に載せようと四苦八苦していると、レンズ本体と三脚の間に指を挟んだんです。

これがもう「骨折寸前の痛さ」でして、

ここで初めて私は
「巨大レンズによる生命の危機を覚えました。


もう人体に問題のある重さなんです。使うにも限度のある、使い勝手のある重さってものが世の中にあるのなら、これはもう「使える重さじゃない!」ことがみにしみて分かりました!
 

脳で理解する前に、体が分かりました。

悲鳴をあげたのです!あんまりだ!あんまりの重さだよ!
冗談抜きで指が折れかねないレンズだよ、なんでだよ!

体壊してまで写真撮りたいってのかよ!
ばか!おれのばか!健康あっての写真じゃないか!

写真でけがしてどーすんのさ!ばかばかばか!!

普通、望遠レンズっていうものはカメラ本体よりうんと長いのでレンズを片手で軽く支えているものです。
 

ところがこの800ミリってのはもう両手で「抱え込む」ようにしなくては持ち上がらない!!
 

抱えたところで、カメラファインダーが覗けないんじゃ写真が撮れない。

はう!じゃあ一体全体どうやって写真がとれるんだこれ?と腕に抱えたレンズを持ちながら、私は気付いたのです!!
そうか!!こういうわけで誰も買わなかったんだ!と。

それでもええ、800ミリつけましたよ。

レンズが大事な訳じゃないんです。写真を撮る、ってのが本日の本業な訳で、レンズってところで四苦八苦したり喜怒哀楽してる場合じゃないんですよ。
 

だから装着しました。EOS-20Dにシグマの800ミリ。それはまるで「三輪車にターボチャージャー付きのF1エンジンを装着した」かのような不細工さで、バランスを失った風景でした。それでも800ミリです。
渾身の力を込めて「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」とレンズを持ち上げました。


耳には遠くからジェットエンジンが近付いてくる音がします。

シャッターチャンス、800ミリデビューの瞬間の到来です!!


「早くこい!とっとと来い!腕がっ!腰がっ!ちぎれるっ!もげるっ!あああっ!早くっ!死んじゃう!」と心で絶叫しながら800ミリを天に向け上げ続けます。

ごう音!片目で見やるとF2とF15の編隊飛行!
稀に見るチャンス!

いいデビュー!!

さぁ来い、今来い!

すぐ来い!

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおお
おおおおおおおおおおおおお
・・・

 


頭上を編隊を組んでたF2とF15が抜けていきました。
パッと別れて綺麗に着陸準備に入りました。

・・・・・・・私は800ミリを介して、「空」しか見れませんでした。

腕と腰と頭脳をフル回転させ、この1年で培ってきた音速機をファインダーに捕らえる最善最高の方法を駆使し、これに挑みました。たとえすぐにファインダーに捕らえられなくても、構えを少しづつずらしていけば、普通なんとか接近した写真になるものなんです。

 


それが、
ああ、
ああああ


ああああああ~~~~~~~

駄目だぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

全く捕らえられませんでした。
どこに飛んでるのか皆目見当もつかない有り様でした。

すごい!
800ミリ、狭すぎる!!
音速をこえるものをターゲットにするレンズじゃなかった!!
それがわかった!!
それがわかりました!

んでもね、
それでもね!!!
「おれならできると思った!!」んですよ!
おもったのになぁーーーーーーーーーーーーーーー
だめだったなぁーーーーーーーーーーーーーーーー

うんでもまぁ、すがすがしいですよ。
山とかで、バードウォッチングなんかにはいいだろうな。
ホラ、こう、鳥とか・・・・・・ムムゥ、じゃあ、山奥までこのレンズ担いでいくってのか?
今ですら「車にのっける」までも苦労するこのレンズを抱えて山に入るってのか?
そんな奴はいない!
まずいない!


ふおおお
そうかぁぁぁぁ、これが800ミリの体験談の少なかった訳かぁ・・・・・・
いやぁ勉強になりました。


早速キヤノンのビデオカメラXL-1Sに装着してみます。


このカメラ、なんとEFレンズアダプターがついており、一眼レフレンズを装着できるのです。
それも一眼レフのおよそ7倍換算!つまり一眼レフで「標準レンズ」である50ミリレンズであってもこのビデオにつけるとなんと自然に「350ミリ」以上の望遠となる、って寸法。
 

これまでも500ミリを装着したことがあって、それはつまり「3500ミリ相当」になる上におもしろがってケンコーの3倍テレコンつけたので「10000ミリ以上!」を体験していましたので(もう画質なんてのはぼろんぼろんですよ)、この800ミリならきっとなんだか愉快にしてくれることでしょう・・・・(ちなみに魚眼レンズをつけても、標準画角くらいになりました)

ええっと・・・・・こうして🐼の800ミリの冒険は開幕したのでした。

 


・・・・・オートフォーカスも効くんだよ・・・・・・えーっと・・・・・・うん、そうなの。うん。

P.S
撮影のたびごとに、この800ミリっていうのは「内臓」にくる。お腹をくだすのだ
それは「重すぎていつ落とすかも、という恐怖」と、重さからくる腰、腕などへの、普段強要されない筋肉の御活躍から、全身がひどくストレス状況下に置かれることが原因と思われる。
それでも私はこのレンズが大好きである。

P.S 好きだったけど売り払いました。すまぬ。