黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。 -9ページ目

黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。

耕 せ ば ま た よ み が え る 星 だ か ら ぼ く ら は 両 手 を も っ て 生 ま れ た

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「独裁者と小さな孫」

原題:The President
公開:2014年
製作国:ジョージア/イギリス
            フランス/ドイツ
監督:モフセン・マフマルバフ
脚本:モフセン・マフマルバフ
         マルズィエ・メシュキニ(英語版)
音楽:グジャ・ブルドゥリ
         タジダール・ジュネイド
出演:ミシャ・ゴミアシュヴィリ
         ダチ・オルヴェラシュヴィリ


どこでもないどこかの国。街はイルミネーションで彩られ、活気に溢れている。

大統領は孫とともにきらびやかな街を見下ろし、電話一本で街の灯りをつけたり消したりしてみせる。

無邪気に驚く孫。しかし不穏な空気はすぐそこまで忍び寄っていた。


この作品が寓話的に感じるのは、架空の国という設定もあるが、主役2人のキャラクターによるものも大きいと思う。

特に孫の存在は大きく、支配する側とされる側の間に立つ無垢な視点が、様々なことを考えさせられる(しかも超かわいい)。


しかし内容は悲痛だ。

冒頭のきらびやかな街は大統領の視界に入る範囲だけであり、そこを外れれば独裁政治の実態が見えてくる。

悪魔のような独裁者に苦しめられていた人々が、今度は悪魔になる。そんな光景を、私たちは現実に何度も見てきた。

どこでもないどこかの国は、実はどこにでもある国なのだ。


独裁政治やそれが崩壊した後の社会というものを、面白い切り口で痛烈に描いていると思うが、詰め込みすぎだったり語らせすぎだったりと、監督のメッセージ性が強すぎる気はした。

孫に関しては存在だけで様々なことが伝わってくるのに、色々言わせすぎているように感じる。

また、終わり方は考えさせるものなのに、それまでのメッセージが強すぎて、観客に委ねているように思えない。

そういった点は好みではなかったが、設定や映像の雰囲気、音楽、そしてキャスティングはとてもよかった。







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「消えた声が、その名を呼ぶ」

原題:The Cut
公開:2014年
製作国:ドイツ/フランス/イタリア/ロシア/
            ポーランド/カナダ/ヨルダン
監督:ファティ・アキン
脚本:ファティ・アキン
         マルディク・マーティン
音楽:アレクサンダー・ハッケ
出演:タハール・ラヒム
         ヒンディー・ザーラ


第一次世界大戦中のオスマン・トルコ、マルディン。鍛治職人のナザレットは、妻と双子の娘と慎ましく暮らしていた。

しかし突然憲兵に連れていかれた夜から、彼の人生は180度変わってしまう。


ヒトラーが手本にしたとも言われるアルメニア人虐殺は、100年以上経った今でも様々な意見があり、犠牲者の数も20万人から200万人と見解が分かれている。

そんな歴史を、アルメニアではなくトルコにルーツを持つ監督が映画にしたことに、まず非常に大きな意義がある。


主人公はただの鍛治職人である。裕福な客を妬んだことをすぐに懺悔するような善良な人物だ。

そんな彼が壮絶な経験を経て、必要以上に強くなっていくのが痛々しい。

地球半周、8年という壮大な旅を、誠実に、重厚に描いている。

そして人々が映画を観るシーンは、映画の素晴らしさ、笑いの尊さ、チャップリンの偉大さを感じる名シーンだった。


監督はこの映画を作ったことで、脅迫をうけ、気軽にトルコへ行くことは出来なくなったそうだ。

そういったことも覚悟のうえで、この難題に果敢に挑んだ彼の姿は、映画界の多くの名匠の心を動かし、世界各地で観客の心を動かした。

歴史は変えられない。しかし歴史と向き合うことは、今を変えるかもしれない。未来を変えるかもしれない。

観た後に意味を噛み締められる邦題も素晴らしく、多くの人に観てもらいたい作品。







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「ディーパンの戦い」

原題:Dheepan
公開:2015年
製作国:フランス
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール
出演:ヴァンサン・ロティエ
         アントニーターサン・ジェスターサン


内戦下のスリランカ。元兵士の主人公は国外へ逃れるため、赤の他人である若い女性と親のいない少女を家族と偽り、フランスへ渡る。


これで命の危険から逃れられると思われたが、新たな恐怖が3人を襲う。



26年もの間続いたスリランカ内戦は、7万人以上の犠牲者を出した。


仏教徒の多数民族シンハラ人とヒンドゥー教徒の少数民族タミル人の民族紛争であるが、そこには植民地時代に英国がタミル人を重用し、独立後の政府がシンハラ人を優遇したという背景がある。



この作品では内戦の様子は描かれておらず、彼らが逃れたフランスの地での生活がテーマになっている。


戦争の残酷さはもちろんだが、そこから命からがら逃げ出せたとしても、それでハッピーエンドではない。


戦地からいくら離れようが、戦争の影はいつまでもつきまとうのだ。



移民問題の難しさをよく描いているが、この映画はそれだけでは終わらない。


終盤の展開は好き嫌い別れるところだと思うが、私はラストシーンも含め、正直ついて行けなかった。


ただ、冒頭からいまいち入り込めなかったので、撮り方などがあまり好みではないのだと思う。


とはいえ、スリランカ内戦という悲劇の歴史の一面を知ることの出来る、貴重な映画であることは間違いない。