黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。 -8ページ目

黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。

耕 せ ば ま た よ み が え る 星 だ か ら ぼ く ら は 両 手 を も っ て 生 ま れ た

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「ひつじ村の兄弟」

 

 
原題:Hrútar
公開:2015年
製作国:アイスランド/デンマーク
監督:グリームル・ハゥコーナルソン
脚本:グリームル・ハゥコーナルソン
出演:シグルヅル・シグルヨンソン
         テオドール・ユーリウソン
 
 
アイスランドの人里離れた村。老兄弟のグミーとキディーはひつじ飼いとして隣同士の家で暮らしているが、40年以上口を聞いていない。
 
ある日グミーは、キディーのひつじが疫病に侵されているのを発見する。保健所は感染が広がるのを防ぐため、村の全てのひつじを処分する決定をくだすが、わが子のように育ててきた2人は諦めきれず、ある行動に出る。
 
 
まず目を奪われるのはアイスランドの大自然だ。雄大な景色を遠景で切り取る絵画のようなシーンが、効果的に使われている。
 
そしてなんと言ってもこの映画の魅力はひつじとおじいちゃん。グミーが手を伸ばすと駆け寄ってくるひつじ。ひつじを抱っこして登場するキディー。並んだひつじのおしり。思わず巻き戻して何度も観てしまった。
 
そして兄弟の唯一の橋渡し役である牧羊犬がまたかわいい。鑑賞中何度悶絶したことか。
 
 
そんなかわいらしさも満載のコメディではあるが、ストーリーはかなりシリアスだ。
 
ひつじ飼いからひつじを奪ったら何が残るのか。若い者は町へ移り住み、やり直すことができるかもしれない。しかしひつじ飼い一筋でやってきた老兄弟には、そんな選択肢もない。
 
何よりも彼らにとってひつじは、生まれた時から一緒に暮らしてきた家族だ。病気にかかったからといって簡単に見殺しにするなんてできない。
 
お互いがそう思っていることを、お互いがわかっている。彼らの行動は無謀に見えるが、だからこそ切実で胸がつまる。
 
 
すっきりと終わる映画ではないが、だからこそ、最後の兄弟の姿に希望を託さずにはいられない、そんな作品だった。
 
 
予告動画はけっこうなネタバレなので、観る場合はご注意ください。

 
 
 
 
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「さざなみ」

原題:45years
公開:2015年
製作国:イギリス
監督:アンドリュー・ヘイ
脚本:アンドリュー・ヘイ
原作:「In Another Country
         デヴィッド・コンスタンティン
出演:シャーロット・ランプリング
         トム・コートネイ


夫ジェフの病気のため出来なかった、結婚40周年のパーティー。45周年で開催することになり、妻ケイトは準備に追われる。

そんなある日、夫宛てに1通の手紙が届く。それは、山岳事故で亡くなったかつての恋人の遺体が見つかったという内容だった。


普段ならスルーしてしまいそうなストーリーだったが、地元の映画館で去年の観客動員数がNo. 1だったことと、邦題に惹かれて鑑賞。

ほとんどが熟年夫婦2人のシーンなのだが、2人の演技が素晴らしく、引き込まれて観ることができた。

2人の過ごした45年は描かれてはいないが、その空気感で穏やかな日々を積み重ねて来たことがわかる。

それが1通の手紙によって静かに崩れていく様子を、とても繊細にじっくりと描いている。


特に印象的だったのはスライドを見るシーン。あの場面のケイトの表情、そしてその撮り方がたまらない。

そしてやはりこの作品の評価をぐっと上げるのはラストシーンだろう。

驚愕のラストなどという宣伝文句をよく聞くが、そういった衝撃ではなく、終わってからも心の中でじわじわと重みを増していくような、実にこの作品らしい秀悦なラストシーンだった。


邦題も素晴らしい。おそらくケイトの心の中の波はもっと激しく、「うずしお」のほうが近いかもしれない(笑)

しかしケイトはそれを心に堰き止めている。その結果が「さざなみ」なのだ。


どこか寂しげな風景描写や何気ないセリフも魅力的で、とてもよくできた作品だった。

ただし、恋人同士や夫婦で観ることはおすすめしない(笑)







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「最愛の子」

原題:親愛的
公開:2014年
製作国:中国/香港
監督:ピーター・チャン
脚本:チャン・ジー
音楽:レオン・コー
出演:ヴィッキー・チャオ
         ホアン・ボー


2009年、中国の深圳で3歳の男の子が突然いなくなった。

両親が必死に探すも見つからず、報奨金をかけメディアで情報提供を呼びかけるが、来るのは金目当ての詐欺ばかりで、時間が経つにつれそれすらも来なくなる。

そして3年の月日が流れ、ようやく有力な情報を得た両親は安徽省の農村で息子を見つける。

しかし、息子は両親のことを忘れていた。


観ている最中、ずっと苛々してやるせない気持ちでいっぱいだった。でもそれこそがこの映画の作られた意味だと、鑑賞後に調べてわかった。

正直、映画の中の世界は歪んでいる。

年間20万人もの子どもたちが連れ去られ、 売られていく。その一方で、戸籍のない子どもたちがごろごろいる。そして、2人以上の子どもを持つことは、罪となり罰せられる。

しかし驚くべきは、これが映画の中の世界ではなく、現実の世界だということだ。

実際に起こったこの誘拐事件を軸に、人身売買、ひとりっ子政策、経済格差など、中国が抱える様々な問題をリアルに映し出している。

その結果、国内で社会現象となり、誘拐された子どもや女性を買う側も重罪とされる法改正がなされた。


一本の映画が法を変えた。それだけでこの作品には大きな意義がある。

ただ、鑑賞中「これは事実なのだろうか?」と疑問に思う部分がいくつかあり、監督のインタビューなどを読んだところ、やはり事実とは異なる部分や脚色があった。

もちろんそこには監督なりの考えや伝えたいことがあるのだが、個人的には事実を変えたり脚色をしてまでの必要性を感じなかった。

そういった好みの合わない部分はあったが、現代社会の抱える闇を浮き彫りにしながら、子が親を思うという最大の愛を、しっかりと軸にしているところが素晴らしかった。