黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。 -27ページ目

黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。

耕 せ ば ま た よ み が え る 星 だ か ら ぼ く ら は 両 手 を も っ て 生 ま れ た



乱反射
貫井徳郎  2011年



自分と親、そして嫁と姑の関係に悩む
新聞記者の男。

娘に尊敬されるために
街路樹伐採の反対運動を始める主婦。

定年退職したが家族とうまく行かず
飼い始めた犬を溺愛する男。

容姿端麗な妹にコンプレックスを持ちながら
自分の意見をなかなか言えない姉。

この小説の大半で綴られているのは
どこにでもいるような普通の人々の普通の日常。

しかしそこに待ち受けているのは
ある幼児の死だった。


まずプロローグ。


「その幼児は日本人として
ごく平均的な両親の間に生まれ
取り立てて非凡な何かを発揮する
時間も与えられないままに死んだ。」


この一文で一気に心をつかまれました。

そこに書かれているのはある幼児の死。

そしてそれは多数の人間が関わった
「殺人」であるというのです。

本編に出てくる人々は本当に普通の人たちで
でもだからこそ彼らがその幼児の死に
どのように関わってくるのか気になります。

さらに各章には-44から始まる数字がふられていて
数字が0に近づくにつれ
なにか大きなことが起こりそうで
読むのを止められませんでした。

事件が起きるまでの人々の描写は
ここまで長くする必要があったかと
少し疑問にも思いました。

なにせ文庫で600ページですから。

しかしそれでもどんどんページをめくりたくなる
そういう力のある作品でした。


この作品のテーマはまさにバタフライエフェクト。

それぞれの人物が犯した小さな罪の連鎖が
幼児の死という最悪な結末を呼んでしまうのです。

凶悪な犯人に殺されたのなら
その犯人を恨みを向けることが出来る。

しかし幼児を死に追いやった全ての人は
犯人であり、犯人でない。

彼らがしたことは誰もが心当たりのあるような
ちいさなモラル違反、ちいさな間違い。

それで人が死ぬなんて誰も思わない。

じゃあ、許されるのか。

じゃあ、罪に問えるのか。

この本を読むと誰もがこの答のない問に
思い悩むと思います。


一度だけなら、誰も見てないなら
とモラル違反を起こす大人たち。

そして自分の非を認めてしまったら
全てが不利になってしまうからと
謝ることが出来なくなってしまった大人たち。

その描写は生々しくリアルで
誰もが自分と置き換えながら読めると思います。


幼児の死以降は父親が原因を追い求めていき
最後にあることに気づくわけですが
そこでふと違和感が生まれました。

「慟哭」を呼んだときにも感じたのですが
最後に置いてけぼりにされるというか
書き手の気持ちに読み手が追いつかないのです。

そんな状態でエピローグに入っていくので
エピローグはぽかーんとしてしまいました。

いったいなにが言いたかったのか
最後の最後であれ?と我に帰ってしまいました。

私なりに考えて
おそらくこの物語がマイナスの連鎖なので
エピローグではプラスの連鎖もあるんだよ
ということを言いたかったのかなと思いました。

というか、それをもっと言ってほしかったという
私の願望かもしれませんが(笑)


これだけぐいぐい引き込まれて
600ページをあっという間に読ませる力があるのに
最後はもったいないなーと思ってしまいました。

でもそこを除いても非常に読み応えのある
考えさせられるいい作品だと思います。


巴水さんの版画を見ていたら
久しぶりにボールペン画が描きたくなりました。


てことで模写。

photo:01



なんも考えず下から描いてったら
上が足りなくなっちゃった。


ボールペンでこういう絵を描くのは
初めてだったので楽しかったです。

今日は息子と一緒に千葉市美術館へ。

photo:01



千葉市美術館は中央区役所などがある
複合施設の中にあります。

この施設は旧川崎銀行千葉支店の建物の
修復と保存も兼ねて建築されたもので
旧川崎銀行千葉支店を包み込むように
ビルが作られている面白い施設なのです。

photo:02




ここで現在開かれているのは川瀬巴水展。

川瀬巴水は大正から昭和にかけて
版元である渡邊庄三郎とともに
江戸版画を超える新版画を生み出そうと
生涯のほとんどを旅に費やし
絵を描き続けました。

photo:03



旅みやげ第三集 大阪天王寺 昭和2年

計算しつくされた構図だなぁと思います。

今回デッサンなども多く展示されていたのですが
実際の風景の中にアクセントとして
うまく人物を取り入れているなという印象でした。

photo:04



清洲橋 昭和6年

空のグラデーション、橋のシルエット
ほんのりともる灯。

どれをとっても美しいの一言。


巴水は関東大震災で多くの版木を失いますが
翌年には102日間にわたる旅に出て
各地の風景を懸命に描きました。

しかし今度は戦争が始まり
海外で人気のあった巴水版画も
売ることが出来なくなりました。

時代の流れに翻弄されながらも
生涯を通じて600点もの作品を残した巴水。

彼の絶筆は平泉中尊寺金色堂。



雪の降りしきる金色堂へ続く階段。

そこを上っていく一人の僧侶。

初めここには二人の人物が描かれていましたが
巴水はそれを一人の僧侶に描き変えました。

その姿は巴水自身ではないかと言われています。

普段すぐに構図を決めてしまう巴水も
この作品だけは悩みぬいたそうです。


生涯を通じて日本の素朴な風景を描き
それを海外へ発信し続けた巴水。

その人生を辿ることのできる
とても素敵な展覧会でした。

さらに、同時開催の「渡邊版-新版画の精華」では
巴水以外の渡邊版の版画を見ることが出来ます。

こちらもそれぞれ個性があり面白かったです。

川瀬巴水展は一年かけて全国巡回するそうなので
ぜひ多くの方に見てもらいたいです。



生誕130年 川瀬巴水展-郷愁の日本風景

in

千葉市美術館  2013.11.26 ~ 014.1.19