黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。 -24ページ目

黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。

耕 せ ば ま た よ み が え る 星 だ か ら ぼ く ら は 両 手 を も っ て 生 ま れ た





神様がくれた娘


2011年  インド

監督・脚本:A・L・ヴィジャイ  音楽:G・V・クラカーシュ・プマール

出演:ヴィクラム、ベイビー・サーラー、アヌシュカ



田舎町のチョコレート工場で働くクリシュナは
6歳ほどの知能しか持っていないが
まじめで正直者で誰からも愛されていた。

そんな彼が突然街の裁判所に現れる。

依頼人を探していた新米弁護士のアヌが話を聞くと
娘のニラーを探しているというのだ。

クリシュナはなぜ田舎町から裁判所までやってきたのか。

そして娘だというニラーはどこへ行ってしまったのか。


千葉では数少ないミニシアターの一つ
千葉劇場でインド映画を観てきました。

知的障がい者の父親とその娘の物語というと
やはりアイアムサムを思い出しますが
まさにインド版アイアムサムといった内容でした。


物語はクリシュナが街を彷徨う場面から始まり
その後、どうしてそうなったのかが
回想シーンとして語られていきます。

序盤、大げさな演技やBGMに
150分も観てられるかなと不安になりましたが
だんだんと物語にひきつけられていきました。

私は静かで綺麗で思い映画が好きなので
正直インド映画は好きなタイプではないと思うのですが
なにか不思議な魅力があるんですよね。


この映画はとにかく
父と娘を演じた2人がよかった。

法廷で2人が再会したシーンは
特に素晴らしかったです。

2人にとても惹きつける力があるので
飽きずに観られたんだろうなと思います。

突然歌い踊りだしたり
派手なアクションがはじまったりという
お決まりのインド映画とは違うとのことでしたが
控えめながらも歌や踊りはちゃんと入ってて
やっぱり民族性なんだなぁと思いました(笑)

でもそれも映画の雰囲気に合っていたし
クリシュナとニラーの手遊び歌は
全てを見た後に思い出すとそれだけで涙が出てきます。

父と娘の絆をとても丁寧に描いているので
物語に深みが出て
ラストシーンもとても心に残りました。

笑って泣けて考えさせられる
インド映画らしい全てがつまった素敵な作品でした。




PK
伊坂幸太郎 2012年



サッカーのワールドカップ予選では
小津がPKをもらい、絶好のチャンスを得る。

作家である三島の家には
未来がわかると言うセールスマンがやってくる。

研究施設で働く青木は
人類を脅かす菌の蔓延を防ぐため
ある密使を過去に送り込もうとする。

一見何のかかわりもない人たちの
一見何のかかわりもない言動が
少しずつ未来を形成していく。

「PK」「超人」「密使」という
三つの物語からなる未来三部作。


三部作となってはいますが
もともとは別々に書かれたお話のようで
単行本化にあたり改稿されたそうです。

もとのお話を読んでいないので
どの程度違うのかがわかりませんが
それぞれが少しずつつながり
少しずつずれているという不思議な三部作です。


サッカーのPKの話、政治家の話
未来を予知する話、平行世界の話
一見何のつながりもない様々な話が
時々交わる、というかすれ違うような感じで
最終的に全てが完全に繋がるわけではありません。

そのあたりが賛否を呼んでいるようですが
私はこの微妙なつながり具合が
現実の人と人とのつながりを
とてもよく表している気がしました。

私たちはあくまで個であって
生まれるときも死ぬときも一人。

だけど本当は無数の人と少しずつ繋がっていて
知らないうちに誰かの影響をうけ
知らないうちに誰かに影響を与えている。

その、個であって個でないという
不思議な人と人の繋がりを
とても感じることの出来る作品でした。

特に「密使」における
世界の枝分かれの話は面白かった。


伏線が綺麗に回収されて
スカッとするような結末ではありません。

でも伊坂さんの作品はいつも
結末が全てじゃないんですよね。

というより、結末に至るまでの間で
おそらく伊坂さんは
伝えたいことを伝えきっている。

だから読み終わって
「何が言いたいんだ?」とは思わない。

この作品にもあらゆるところに
印象的な言葉が散りばめられていて
それが本を閉じた後もきちんと心に残りました。

あまりあれこれ考えずに
伊坂さんのリズムに乗っかって読むと
とても楽しめると思います。



あなたになら言える秘密のこと

2005年  スペイン

監督、脚本:イザベル・コイシェ

出演:サラ・ポーリー、ティム・ロビンス



工場で働くハンナは勤務態度もよく
休まず真面目に働いていたが
同僚たちと全く関わりを持とうとせず
そのせいで上司から休暇をとるよう命じられる。

その休暇で訪れた先での偶然の出会いから
油田掘削所で事故にあった男性の
看護の仕事を引き受けるハンナ。

なぜ事故は起きたのか。

ハンナはなにを抱えているのか。


題名からして完全にノーマークでしたが
レンタル屋さんの解説で
「ユーゴスラビア紛争」という文字を見つけ借りました。

ハンナは仕事場でも全く話さず
昼食はご飯と鶏肉と半分に切ったリンゴ。

部屋は不安になるほどの殺風景。

何かを拒むように
何かから逃げるように暮らすハンナは
どんな心の闇を抱えているのだろうと
興味を惹かれます。


そんなハンナが看護の仕事をすることになった
海の上にぽつんと浮かぶ石油掘削所。

事故により目が見えず
寝たきり状態のジョゼフは
そんな状態でも明るくハンナに話しかけます。

最初は何も答えなかったハンナも
ジョゼフや掘削所の人たちと打ち解け始め
そしてある告白をするのです。


物語の軸となるのはハンナとジョゼフの会話で
それ以外の役やシーンもあるのですが
総じて二人芝居のような感覚の映画でした。

だからこそ二人の演技の
素晴らしさが際立っていました。

特にジョゼフを演じたティム・ロビンスがよかった。

ほとんどがベッドの上で動けず
目も見えない状態という演技でしたが
そのなかにちゃんと背負っているものや
彼の包容力が現れていて
ハンナが秘密を打ち明けようと思う気持ちが
自然とわかるのです。

なのでハンナが告白するシーンは
自然に感情移入ができ
嗚咽が漏れるほど泣いてしまいました。


ただ、私にはこの映画は
「描きすぎ」のような印象が残りました。

あまり詳しくは書きませんが
この映画は「その後」を描いていますが
全くいらなかったと私は思います。

その部分は観客が見終わった後に
想像する部分なんじゃないかと思うのです。

これは本当に個人的な好みなので
すっきり終わるほうが好きな方には
ピッタリの作品だと思います。

私は観終わってから自分の中でぐるぐるするような
余白のある映画が好きなので
ここまで描ききってしまうと
感情の入り込む余地がなくなってしまう気がして
どうしても評価が落ちてしまいます。


あとはやっぱり題名がなぁ。。

この題名で「観たい!」と思う人は
こういう映画好きじゃないと思うよ(笑)


題名と描きすぎという点で
個人的に評価は下がりますが
二人の会話から戦争の悲惨さが
ひしひしと伝わってくるのは凄いと思いました。

この映画はフィクションですが
この戦争はノンフィクションです。

ハンナのような女性がたくさんいるのです。

戦争は終わる。時代も変わる。
でも、癒えない傷もある。

めまぐるしく進んでいく世の中のスピードに
ぽつんと取り残されそうなハンナ。

海の中に建つ鉄の塊は
そんなハンナの心を表しているようでした。