「別離」
原題:Jodaeiye Nader az Simin
公開:2011年
製作国:イラン
監督:アスガー・ファルハディ
脚本:アスガー・ファルハディ
出演:レイラ・ハタミ
ペイマン・モアディ
シャハブ・ホセイニ
娘を連れて外国に移住したい妻と、アルツハイマーの父のためイランに残ろうとする夫。
人々のすれ違いと小さな嘘から生まれる、かなしみの連鎖の物語。
「セールスマン」公開に合わせて地元の映画館で上映してくれたので、大きなスクリーンで観ることができた。
高い評価を得ている作品だが、その期待を裏切らず、鑑賞してから時間が経つほど染み渡ってくるような、素晴らしい作品だった。
ある夫婦の間に生じた亀裂から、この物語は始まる。
相容れない2人の主張。そして妻は家を出て、仕事で父の面倒を見られない夫は家政婦を雇う。
しかし家政婦としてやってきた女性も多くの問題を抱えている。
それはやがて、取り返しのつかない事態を招く。
離婚問題、介護問題、そして大人の犠牲になる子ども。普遍的なテーマの中に、イランという国の内情をうまく絡めている。
まだまだ自由に表現することの出来ないイランで、多くのメッセージを見事に芸術として昇華させている。
ラストシーンの構図は象徴的でとても印象深い。
分かりやすさばかりを追求する商業映画の中で、もう一度映画を芸術へと引き戻すような、そんな力強ささえ感じるような作品だった。