「或る終焉」
原題:CHRONIC
公開:2015年
製作国:メキシコ
監督:ミシェル・フランコ
脚本:ミシェル・フランコ
出演:ティム・ロス
ビッツィー・トゥロック
サラ・サザーランド
命の期限を目前に控えた終末期の患者たちと、彼らを献身的にケアするひとりの看護師の物語。
近年日本でも、QOLや終末医療という言葉をよく聞くようになった。
意識も無いままたくさんのチューブに繋がれて生かされるよりは、最期まで人間らしく生きたい、そう思うのは人として当然とも言える。
しかし、それを支える周りの人たちの苦労は計り知れない。
例えば家族が「自宅で死にたい」と願っても、様々な理由からそれが実現されないこともまた、現実である。
主人公の看護師デヴィッドは、そんな終末期の患者たちを訪問し、ケアを行っている。
テキパキと仕事をこなしながら、決して事務的にはならず、患者にとって心地よい距離を知っている、そんな看護師だ。
しかしデヴィッドがどんな人間なのか、という視点で見ると全く分からない。
なぜ終末期の患者のケアをしているのか、なぜそこまで献身的になれるのか、誰もが疑問に思うだろう。
一貫してデヴィッドを追うカメラは、次第に彼の過去や抱える歪みのようなものを映し出していく。
しかしそれは決定的なものではなく、いつまでも靄がかかったままだ。
そして訪れる突然のラスト。
ここがどうも私は好きになれなかった。
ちょっと狙いすぎというか、終わらせようという気持ちが透けて見えるようだった。
とはいえ、終末医療への光の当て方はとても素晴らしかったし、空気感も好みだった。
特に娘をつけ回すシーンは秀悦。
まだ長編をあまり撮っていないようなので、今後の作品にも期待したい。