森博嗣の百年シリーズ第二弾。
第一弾の「女王の百年密室」を読んだのがだいぶ前だったので
さらっと読み直そうと思ったんですが
ぐいぐい惹きこまれちゃって結局熟読。
でもそのぶんわくわくしながらこの第二弾を開きました。
ジャーナリストのミチルとウォーカロン(ロボット)のロイディが訪れたのは
周囲を海で囲まれた島、イル・サン・ジャック。
殺人など起きたことのない平和な島をミチル達が訪れた直後に首のない死体が見つかり
ミチルは容疑者として追われることになる。
百年シリーズで描かれるのは未来。
人間を補佐するロボット、ウォーカロン。
様々な情報を瞬時に投影するゴーグル。
でも舞台となる場所はどこか古代の風景を思わせる。
そんな不思議な空間で起こる不思議な事件。
これだけでも充分に魅力的ですが
この百年シリーズの本質は「生と死」です。
人はなぜ生きるのか。生きなければならないのか。
人はなぜ人を殺すのか。殺してはならないのか。
いつ死んでもいいと思っているのに、まだ生きている。
でも自分が生きているのか死んでいるのか時々わからなくなる。
そんな不安定な気持ちのまま生きるミチルの感情の動きが
この答のない大きな「命」という疑問を容赦なく読者にぶつけてきます。
「宇宙のところどころで死はいつも輝かしい。
両眼を覆い、眩しさに目を細めるようにして、僕たちは常に死と直面してきた。」
「自己の存在を確かめるために、どれほど凄惨な悲劇が繰り広げられてきたことか。
自分が生き延びるために相手を殺す、という自然の摂理を越えて、
もっと高い望みだと信じて、相手を殺すために生きてきた。」
「常に自分を救うために、人は死を選択するんだよ」
自然に生まれてきたのに、自然に死ぬことを恐れ、不自然に生き続ける私達。
生きるために生きる、それだけでは不安で、いつも理由を探している私達。
自然の中で、命あるものの中で、人間だけが、異物。
なんで人間なんてものが存在するんだろう。
時々思ってしまう。人間は自然界に侵入したウイルスなんじゃないかって。
でも。だから。
私達にしかできないこともあるはずなんだ。
森さんの小説を読んでいると、自分の中に何処までも思考がひろがっていく。
底の見えない海に潜って行くように。
小説を閉じた瞬間、あたしは水面に浮き上がる。
目を開けて、大きく息を吸う。
そして、異物として生きていくことを
考えることをやめないことを決めるんだ。
装丁もとても美しくて
辞書のようにぶ厚くて重いけど
第三弾までそろえて
大事に本棚に並べておきたい。
そこで、見てて欲しい。
そういう、本です。
