お越しいただきありがとうございます。


今回から新しいテーマでお話をアップいたしました。

いつも仲良しの二人が多い私のお話ですが、今回ちょっとだけ暗い感じのスタートとなりました。

本編のミニョのイメージとは少し違うと思われる方も出て来るかと思いますが、こんな一面も見せても良いかなぁと思い書き始めました。

別なタイトルにしようかと悩みましたがこれからのお話にも少なからず絡んでくるのでテーマだけ変えて書くことにしました。

今回はあまり引っ張らないよう重くならないよう短めで終わりたい(終わらせたい)と思っています。



ではお話に。

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「あとはお風呂に入って時間になったらオッパに電話をするだけ」

“.A.NJELL”の歌を口ずさみながら着替えを準備してバスルームに向かおうとした。

「あっ、オッパの声♪」

大好きな人の声に敏感に反応し、急いでベッドルームから飛び出したミニョはテレビの前に立った。



「あれ?」首を傾げ画面を見つめた。

聞こえてくるのは間違いなくテギョンの声だ。

人気がある彼らの歌がCMで流れるのは特に珍しくもない。むしろ流れない日が少ない方だ。曲が採用されている時は概ねメンバー全員かまたは個人でCMに起用されている。歌だけ使われる事は滅多にない。


ミニョが今見ている画面は景色の良い海岸沿いの一本道をオープンカーが走っている場面だった。


「歌だけだったのかな?。それともこの後誰か出てくる?」

暫くテレビの前に立ってCMを見続けていた。

場面が変わるにつれテギョンの声を聞いた時の嬉しそうな表情とは一転してミニョの目から涙が自然と溢れてきた。


「見なければ良かった」

CMが終わってもミニョはその場から動く事が出来なかった。お風呂に入ろうと胸に抱えた着替えを力いっぱいギュッと抱きしめた。どのくらいの時間その場にいたのか分からない。


(もっと大人にならなくては・・・。どんな事でも我慢できるようにならなくては・・・)


どうすればこの胸の痛みから逃れられるのだろう。この先同じ胸の痛みを何度経験するのだろう?。


お風呂に入ろうとした事も忘れソファーに座り込んだ。


「院長様、どうしたら良いでしょうか?。

こんな気持ちを持ったままこれからもファン・テギョンssiのそばに居る事が許されるのでしょうか?。

どうしたらもっとふさわしい女性になれますか?」

胸の前で両手を組み問いかける事しか今は出来なかった。




「ねぇねぇ。最近見なかったけど久々だよね、ヒョンの携帯と睨めっこ。もう二日目だよ」

ジェルミが小声でミナムに言うと“いや、三日目だ”とシヌが言った。以前ミニョからの連絡をイライラしながら待ってた時も同じような状況だった。


「今回はちょっと違うね。時々溜息ついてるもん、自分では気づいてなみたいだけど」

テギョンが連絡を待っているのはミニョだと三人は考えていた。





ミナムは偶然昨日ミニョと電話で話した時の事を思い出した。


「ミナムオッパが電話してくるなんて珍しいですね。ご飯ちゃんと食べてますか?」

いつもと変わらず明るい声だった。


「アイスの間にちょっとだけ食べてる。俺は大丈夫だよ、倒れたりしないから」

ミニョが夏フェスで倒れた時の事を言っていた。


「今はお仕事忙しいですか?。ちゃんとご飯食べて眠れるときは眠ってくださいね」


「お前、母親みたいだよな。俺の心配よりヒョンの事だけ考えてれば良いよ。最近上手くいってる?」


「はい、いつも大事にして頂いてます。オッパもお仕事頑張ってくださいね」

電話を切った後、ミニョが大きく溜息をついていたのは勿論ミナムは知るはずがない。出来るだけ自分の気持ちをミナムにも知られたくないと。



(当たり障りのない会話だった。他にも話したが特にヒョンの事には触れていなかった。

ミニョの返事が本当ならヒョンが落ち込んでいるはおかしい・・・。ちょっと前までヒョンも普通だったよな。

待ってるのはミニョの電話じゃないって事?。ミニョ以外に好きな人が・・・?。

いや、テギョンヒョンはあり得ない。俺から見てもミニョに対する気持ちは普通じゃないからな。兄としては嬉しいような悲しいような・・・)



「昨日さぁ、久しぶりにミニョに電話を掛けてみたんだ。

ジェルミ、最近ミニョの顔見てないでしょ?。またご飯でも作りに来いって言っておいたから。

ヒョンと自分の家で会ってるから合宿所に顔を出す回数減っただろ?。自分以外の男と仲良くしてるのを見たくないからきっと来るなって言ってるんだよ」

わざとテギョンに聞こえるように言ってみた。


「ミナマ~、ホントに?。俺がミニョの家に行っても良いんだけど?。一人で行くと怒られるからシヌヒョンとミナム三人だったら大丈夫じゃない。ミナマ~、聞いてみてよ。

テギョンヒョンはいつも行ってるからその時は遠慮してよ」

ジェルミの言葉にいつもなら怒るはずのテギョンが全く反応しない。

三人は何も言わないテギョンを驚いて見つめていた。


「テギョン、ミニョと何かあった?」

シヌの問い掛けに携帯をじっと見つめていたテギョンはハッとしたように頭を上げ首を横に振ってその場から出て行った。


三人は明らかに様子がおかしいと思い始めた。仕事に入ると今までとは変わりなくこなしているがそれ以外の時間になると携帯を眺めながら考え込む事が多くなっていたからだ。シヌはミナムにミニョの様子がおかしくなかったか聞いてみたが特に感じられなかったと言っていた。




一人になったテギョンはミニョの登録ボタンを押しミニョが出てくれるのを待った。繰り返し耳に聞こえる呼び出し音。直ぐにでも聞きたいミニョの声は今日も聞けなった。


(どうして電話にも出ないんだ。何があったんだ?。)

毎日ミニョから掛かって来ていた電話もここ数日ない、そしてテギョンが掛けてもミニョは電話に出ることはなかった。思い切って昨日はミニョのマンションの駐車場まで行ってみたが連絡も入れず突然ミニョを訪ねてミニョの驚いた顔を見るのも正直怖かった。


(俺の事が嫌いになったのか?。わがままで自分勝手な俺に付いていけないと思っているのか?。

それとも他に好きな男が出来たのか?。ミナムの電話には出ても俺の電話には出ないのはどうしてなんだ)


面と向かって別れを言われてしまったらと思うと車から出る事も出来ずそのまま合宿所に帰った。


(一人で何かに悩んでいるのか?。ミニョに起きるすべてに責任持つと俺が言った事を忘れてしまったのだろうか?)

何度電話しても何度メールしても未だミニョからの返事は一度も無かった。

何も出来ない苛立ちに携帯電話を握りしめ床を思い切り蹴った。



CMを見た日からミニョはテギョンとの約束の時間になっても電話を掛ける勇気が無かった。


「いつもの私でいれば大丈夫」

何度も自分に言い聞かせ電話を掛けようとした。掛けてテギョンの声を聞けばきっと押さえていた気持ちが出てテギョンを困らせてしまう。


「敏感なオッパの事だから私の声からきっと何かがあると気づかれてしまう。オッパに嘘をつく事も出来ない。

今の自分の気持ちを素直に言ってしまったらきっと嫌われてしまう。

オッパには私でなくてもふさわしい方が周りにたくさんいる。私には・・・・・・オッパしか考えられない。

オッパが離れて行ってしまったら・・・。

今は自分の気持ちが落ち着くまでもう少しだけ時間を下さい。

オッパのどんな姿を見ても大丈夫と自信がつくまでもう少しだけ・・・」



ミニョが電話をしなくなった翌日から仕事の合間と思われる時間帯に毎日テギョンからの着信と留守電が入っていた。


“コ・ミニョ、昨日電話をするのを忘れていただろう?。まぁ1日位なら許してやる。今日は忘れずに掛けて来い”



“コ・ミニョ、2日も忘れるとは良い度胸だ。この留守電を聞いたらとにかく電話をしろ。メールじゃなくて電話だ


“コ・ミニョ、どうして掛けて来ない?。事故でも起こして俺にバレルのが怖いか?。お前の事故には慣れているから気にするな。今日は早く終わるから必ず電話しろ。久しぶりに外で食事しよう”

何度繰り返し聞いただろうか。

何度テギョンに会いたくて、何度声が聞きたくて電話を掛けようとしたか・・・。


「オッパ、会いたいです。顔を見て泣かないと自信がつくまで・・・」

携帯電話に入れられた二人並んだ写真を見て泣いていた。




自分の車で仕事場に向かうシヌは下を向きながらゆっくりと歩いてるミニョを見掛けた。腕時計を見ると仕事が終わったばかりなのかバス停に向かっているようだった。

ミラー越しに見るミニョの様子はテギョンと同じく元気が無かった。


「話をしたいけどこれから仕事だし・・・」

ミニョに気づかれないよう少し先で車を停め、ミニョを見ながら電話を掛け始めた。



「ミニョ、今大丈夫?」


「シヌヒョン、お久しぶりです。とっても元気ですよ。シヌヒョンはどうですか?」

ミラー越しに見えるミニョは元気なふりをして電話で喋っているとしか思えなかった。


「仕事が忙しいのはいつもの事だけど最近ミニョの顔も見てないしどうしてるかなと思って。テギョンも自分からミニョ事喋らないし。

ちょうど美味しいお茶の葉を買ったから一緒に飲もうと思って。明日は合宿所に顔出せない?」


「合宿所ですか?。明日はみなさんいらっしゃいますか?」

誰がいるのか聞いてくるのは初めてだった。


「明日は皆バラバラのスケジュールなんだ。皆、午前中から仕事だけど俺だけ夕方からで。

もし俺一人の時に来るとテギョンに怒られるんだったら別な日でも構わないし」


「シヌヒョンさえ良ければ午後お邪魔しても良いですか?。私もシヌヒョンにお茶を渡さないといけないと思っていてまだお渡し出来て無かったですから。オッパには私から言っておきますから大丈夫です」

ミニョと明日の約束として電話を切った。

電話が終わった後もミニョの様子を見ていると大きく深呼吸をして何かを自分に言い聞かせるように歩き始めていた。

仕事の時間が迫っていると気づきシヌは車のエンジンを掛け約束の場所に向かったがミラー越に小さく映るミニョの姿が頭から離れる事が無かった。

お越しいただきありがとうございます。


このテーマのお話は今回で最終回となります。

八月中に終わるはずが結局9月になってしまいました。

もっとも一か月前に始めようと思ったのに書くペースが遅いのと不定期更新が致命的ですね。

出来る限り季節がずれないようにお話を書いていけるとよいのですが・・・。


ではお話に。


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テギョンの内緒にしていた事もすべてバレ、内心ミニョはホッとしていた。


(内緒にしているのは苦手です。いつばれるかハラハラ、ドキドキしてしまいます。今度からオッパには内緒の事は作りません)


無意識に両手を組んで神様に誓っていた。運転しながら横目でミニョを見たテギョンが聞いてきた。


「まだ俺に許してほしい事でもあるのか?。今、告白するなら何でも許してやるぞ」

ニョは他に何も無いと大きく首を振った。



「そういえば昨日花火を見ていないだろう?。合宿所で花火でもやるか?。

昨日の打ち上げ花火のような派手はものは出来ないが・・・」

花火をした事がないと言って嬉しそうにしているミニョを横目にテギョンは車のスピードを上げ花火を売っていそうな店に向かった。

店の前に車を停めるとミニョが車から降り店の中に入って行くとどれを買おうか悩んでいた。

店から手ぶらで車に戻りどんな物を買って良いのか分からないと困った顔をする。テギョンは“音が煩くないもの”を選ぶように言うと心細そうに店に戻った。

一人で行かせてしまし心配でテギョンは身を乗り出すように店の中を覗いてみるとミニョは店員に話し掛け相談をしているようだった。

話を聞きながら大きく頷いたり関心したような顔をして勧められた花火を次から次に手に持ち、気が付けば手に抱えきれないほど持っていた。


「あいつは何時間花火をするつもりなんだ」

このまま一人で買い物をさせると全部の花火を買ってしまいそうでテギョンは慌てて車から降り左右を確認すると気付かれないように店に入りミニョ後ろに立った。


「もうそのくらいで十分だ、早く会計して来い」

財布からお金を出し花火を抱えたミニョに渡し店の外に出た。知らないうちにテギョンがいたのにびっくりしたミニョは花火を持って会計を済ませ大事そうに花火を抱えて店の外に出た。外で待っていたテギョンに袋一杯になった花火の袋を持ち上げ嬉しそうするとテギョンは袋を貰いミニョと一緒に車まで戻った。


「今日は二人だけの花火大会ですね、凄~く楽しみです」

助手席にミニョを乗せ買ったばかりの花火を後部座席に置くと何度も振り返り花火の袋を眺めてはテギョンの横顔を見つめていた。

途中、買い物を済ませると車はミニョの住むマンションの前を通り過ぎ合宿所に向かった。

車から荷物を降ろし合宿所の中に入るとミニョは買い物した食材を急いで冷蔵庫に入れテギョンと一緒に自分の達の荷物を二階のテギョンの部屋の中に運んだ。


「花火をするにはまだ明るいですから先に夕飯作りますね。オッパはゆっくりしていて下さい。出来たら呼びに行きますね」

ミニョはテギョンの部屋を出て行こうとしていた。


「コ・ミニョ」

テギョンが人差し指を曲げミニョを呼んだ。

首を傾げ小走りで近づいて行くと腕を掴まれそのままテギョンに抱き寄せられた。

何度抱きしめられても慣れることがなくミニョの胸の鼓動はドキドキとし始めた。

テギョンの胸に抱きしめられ同じ胸の動きに安心するとミニョは自分の腕をテギョンの背中に回した。


「やっと二人っきりになれたような気がする。向こうだと色々あったしメンバーも一緒だったからな・・・」

ミニョの顔を見ながらテギョンが言うと恥ずかしそうに下を向き小さく頷いた。


「まずは・・・一晩お前に付き添っていたお礼をしてもらおうか・・・」

慌てて離れようとするとミニョの腰に手を回し離れないようにして見下ろした。不安そうに瞳を揺らしながら恐る恐るテギョンの顔をミニョは見上げた。


「あの・・・昨日はご迷惑をお掛けしてすみませんでした。

これからはオッパにご心配かけないように気を付けます

。本当にありがとうございました」

かしこまってお礼を言うとミニョはテギョンに頭を下げた。


テギョンはミニョの真面目な反応に笑いを堪え、お礼が違うと今度はミニョにも分かるように自分の唇を指で指した。

ミニョは顔を真っ赤にしてテギョンに近づくと少し背伸びをして触れるようなキスをしもう一度お礼を言い“これで良いですか?”と恥ずかしそうに聞いた。

テギョンが首を左右に振ると覚悟を決めたと言わんばかりに大きな深呼吸をしてもう一度背伸びをしさっきより少しだけ長めにキスをした。

首を左右に振るテギョンにミニョはどうすれば良いのか分からないと困った顔をした。

唇の片方を上げニヤリと笑ったテギョンはミニョの頭を支え、息が苦しくなるほどのキスをしてきた。

苦しくてやっとの思いでテギョンから離れ大きく息をするミニョを見ながら


「一晩ずっと付いていたんだ、これくらいではまだ足りないよな」


「あの・・・これくらいではとは・・・。先に夕飯作ったらダメですか?。食べないとまた倒れてオッパにご迷惑を掛けてしまいますし・・・。

それに・・・外はまだ明るいですし・・・」

ミニョの恥ずかしそうな態度を見るともう少しだけ困らせてやろうかと考えたが昨日の事もありテギョンは渋々ミニョの体から手を離した。

ホッとしたように笑顔になったミニョが面白くなく口を尖らせた。


「オッパ、ありがとうございます。

美味しいパスタを一所懸命作ってきますから待ってて下さいね」

そう言うとテギョンの頬にキスをして急いで一階に降りて行った。

ミニョがキスをした頬に触れドアの向こうに走って消えて行ったミニョを思いながら優しく微笑んだ。部屋に残ったテギョンはシャワーを浴び着替えるとミニョのいるキッチンに降りて行った。

テギョンの姿を見るとミニョは嬉しそうにニッコリしながらパスタソースを作っていた。

出来たソースを味見してもらいOKを貰うと茹で上がったパスタを合わせ皿に盛りつけ合間に作ったサラダを冷蔵庫から出しテーブルに並べて二人で食べた。

サラダの器の中をフォークでかき分けながら自分の嫌いな野菜が入って無いと気づいたテギョンがミニョを見ると“今日は特別ですよ”と笑っていた。


夕飯の後片付けを終えると外はだいぶ暗くなっていた。

ミニョは花火の準備をしようとバケツを持って来て水を張り、ロウソクとライター、花火をセットにしてすぐに持って行けるように入り口に並べて置いた。



「オッパ、ちょっとお部屋を借りても良いですか?。私が降りて来るまでお部屋には来ないで下さいね」

分かったと頷いたが自分の部屋なのに部屋に来るなと言われたのが面白くない。

その上、直ぐに降りてくると思ったのになかなかミニョが降りて来ない。もしかしてまた倒れているのではないかと心配になり様子を見に行こうと階段に足を掛けるとドアの閉まる音が聞こえた。

二階に上がろうとしたのがミニョにばれると思いテギョンは急いで水を取りに冷蔵庫に行き扉を開けながら何事も無かったように水を飲み始めた

階段を降りる足音が近付いてくるとリビングに向かって歩き始めた。リビングに上がる階段に足を掛け2階から降りて来たミニョの姿を見て驚いた。

一段一段ゆっくりと降りて来る浴衣姿のミニョにテギョンは水のボトルと口に付けたまま見とれていた。

テギョンと目が合うとミニョは恥ずかしそうにその場に立ち止った。慣れない浴衣姿で慎重に降りて来るミニョをテギョンが階段を上って迎えに行き手を出しミニョがその上に自分の手を重ねた。

危なくないようにと足元を見ながら一階まで降りてきた。


「髪は自分でやったのでオンニにやって貰った昨日ほど上手く出来てないんですけど・・・」

アップにした髪を手で触れ恥ずかしそうに下を向いていた。


テギョンはミニョの浴衣姿を上から下にと何度も見た後、とても似合っていると言ってミニョの手を握りそっと抱きしめた。


「お前の浴衣姿は来年になると思っていたけど良かった。自分で着れるように練習したのか?」

ミナムから浴衣の事は聞いていたが知らないふりをしてミニョに聞くとテギョンにどうしても見て欲しくて練習をしたと恥ずかしそうに呟いた。


「昨日は髪飾りを付けていただろう?。それは?」

ここで付けるのが恥ずかしく二階に置いてきたと言うとテギョンが急いで取りに行った。手には浴衣の柄と同じ五つの赤い小さなバラの髪飾りをミニョの髪に付けた。少し離れた所からミニョの全身の姿を見たテギョンはカウンターに置いていた自分の携帯電話を持って来てミニョの肩に手を回し二人の写真を撮ろうとしていた。


「オッパ、携帯誰かに見られたらどうするんですか?」心配そうにミニョが聞いた。


「別に。暗証番号掛けているし間違いメールを送ってきた奴が自分のメールを削除しようとして俺の携帯を開けようとしない限り誰も俺の携帯電話を覗こうとする奴はいない」

ミニョは前にばれない様に自分が送ったメールを消そうとしたが結局テギョンに見つかってしまった時の事を思い出しバツの悪そうな顔をしてテギョンを見つめた。

改めて二人並んで写真を撮るとテギョンは満足そうに今撮ったばかりの写真を眺めミニョにその写真を送っていた。ミニョに携帯を持って来るように言うと写真がちゃんと送られているかを確認しミニョに見せた。

その後もミニョの携帯を操作しながらニヤリと笑ってミニョに渡した。

ミニョは保存してある写真を見て頬を膨らましテギョンを睨んだ。


「オッパ、勝手に写真消してはダメじゃないですか?。せっかくジェルミと記念に撮ったのに・・・。

あれはどう見ても私だと分からなかったでしょ?」

他の写真も消されてないか確認したがジェルミと二人で撮った物だけを削除していた。


「俺との写真だけあれば充分だろ?」

ミニョは頬を膨らまし睨んだがテギョンは花火をすると言って準備したものを手にして外に出ようとしていた。

明かりがあるが足元が見えにくいとテギョンは駐車場まで連れて行くようにと手を出すとミニョが手を繋いでゆっくりと案内して行った。


駐車場で初めての花火をし、火を点け勢いよく燃え始めるとミニョは目を丸くしながら嬉しそうにしていた。

手に持つ違う花火の先から出てくる金色や色々な火花を見ては喜び、滝や花の形をした火花を見てはその都度テギョンの顔を見て燃え続ける花火を楽しそうに見ていた。

最初テギョンも一緒に花火をしていたがミニョの嬉しそうな顔を見ている方が何倍も楽しくて仕方がなかった。

線香花火を点けたミニョは今までの花火と違うと言って座りながら小さくパチパチと音を立ていくつかの燃え方を変化していく様子を興味深く見ていた。

優しく静かに燃え続ける花火見ているミニョをテギョンは自然と微笑みながら見ていた。

火を点けた時に出来たオレンジ色の丸い火玉が月を思わせミニョの温かさに似ているように思えた。小さいながらも大きく火花を散らしたかと思うと今度は流れるような火花に変わりそして今度は小さな花のようにパチパチと音を立てて燃え方を変えていく。


「この花火終わり方が印象的ですよね。ちょっと寂しく感じるけど終わった後も花火の温かさが目に焼き付いていますよね」

終わり間際に出来た火玉が落ち手に持っていた部分を見せながらミニョが言った。

出会った時、兄のミナムの代わりとして不器用で事故を起こしながらテギョンと過ごし再び会えテギョンによって大人の女性へと表情を変えて行くミニョと重ねていた。


(この線香花火と最後だけは違うようにと・・・。決して消えてなくならない様この暖かさを守ってやりたい)


最後の一本を終えるとミニョは満足そうにテギョンの前に立った。


「オッパ、花火凄く楽しかったです。たくさんの人と見る大きな花火も素敵ですが私にはオッパと一緒にやったこの花火が一番好きです。また来年も一緒にやって貰えますか?」

テギョンを見上げ手を握りながら言うと大きく頷いた。

燃やした花火をバケツに入れ二人は手を繋いでウッドデッキに上がって行った。

空を見るとたくさんの星が出ていたのでミニョと二人で暫く星を眺めることにした。ベンチに座って肩を並べてミニョは空を眺めていた。


「久しぶりに星を眺めました。こっちに帰って来てから寂しいからと星を眺める事は無くなりましたから」と肩にもたれ照れながらミニョが言った。


「当たり前だ。お前の大事な星はそばにいるんだ」

ミニョの肩に回した手に力を入れ自分の方に体を寄せた。顔を見合わせ照れ笑いした。


「ずっとそばで見ていても良いですか?」

恥ずかしそうに聞くと“余所見をするな”とキツク言われミニョは嬉しそうに何度も頷いた。


そろそろ家の中に入ろうと二人が立ちあがると下の方から話し声が聞こえてきた。テギョンとミニョは顔を見合わせ慌てて合宿所の中に入りミニョは二階に上がってテギョンはリビングで様子を見ていた。



「ただいま~。


テギョンヒョンここにいたんだね。ミニョの所にいたらどうしようと思ったけど・・・。

ミニョは?」

きっといるはずだとジェルミは大きな声でミニョを呼ぶとミニョが二階から降りてきた。浴衣姿のミニョにジェルミが大喜びし持っていた荷物を放り投げた。両手を広げてミニョに抱きつこうとしてテギョンから手を掴まれ苦しそうに顔をゆがめた。


「シヌヒョン、ジェルミお帰りなさい。ミナムオッパは一緒じゃないんですね」

浴衣姿が恥ずかしく下を向きながら挨拶をした。


「ただいま、ミナムは明日帰ってくるって。もう元気になったみたいだね」

シヌが聞くとミニョは嬉しそうに頷いた。

予定より早く帰ってきたことをテギョンが聞くとミニョがいないと気が付いたジェルミが“ミニョを守る”と言って早めに帰ってきたと説明していた。


「誰から私を守るんですか?」

不思議そうに三人の顔を見回すとジェルミがテギョンを指差した。


「オッパからですか?・・・」

どうしてテギョンからジェルミが守ろうとしているのがミニョがテギョンに聞くと口を尖らせ“自分で考えろ”とだけ言うと二階に上がって行った。

怒って自分の部屋に戻って行ったテギョンを見てミニョは首を傾げながらシヌに聞いた。


「ジェルミに聞いた方が早いかも」

それだけ言うとシヌも自分の部屋に戻って行った。


残ったジェルミに教えて貰おうと話しかけると“俺の口から言えない”と急いで階段を上がって行った。


一人リビングに残されたミニョはテギョンの部屋に行き教えて欲しいと頼んだが何も言わず荷物を持ってミニョのマンションへと二人は向かった。







せっかく合宿所でゆっくりと過ごすはずだったのにお邪魔な“彼”が戻ってきました。ミニョとしては良かったのか?、悪かったのか?。

合宿所では無理でしたがちゃんと場所を変えゆっくり出来たとご想像下さい。



次回から違ったテーマのお話をアップする予定です。

お越しいただきありがとうございます。


今回で夏フェスのテーマを終わる“予定”に考えていたのですがやっぱり無理でした。

次回をラストにしたいと思います。

相変わらずゆっくりとした時間の流れですが今回もお付き合い下さいませ。



ではお話に。



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テギョンがいなくなった食事の席はなんとなく気まずい雰囲気になり言葉少なく全員が食事をしていた。時々ミニョは大きな溜息を付くとテギョンが機嫌を直して部屋から出て来てくれたらと思っていた。

隣に座っているジェルミは最初ミニョの隣に座ったと大喜びしていたが暗い表情をしているのを見てミナムを睨みながら食事をしていた。

何度かミニョに声を掛け会話を楽しもうとするがなかなか続かず更に重たい空気だけが残った。

全員が食事を終えるとミニョを残し三人はテギョンの部屋を出て行こうとしていた。


「ミニョ、せっかくここまで来たのになんか邪魔しちゃったみたいで悪かったね。テギョンの機嫌も俺たちが帰ったらすぐに直るよ」

シヌはミニョの顔を覗き込み頭を撫でるとミニョは作り笑いをして頷いた。


「全く、ヒョンも大人気ないよな。そろそろ俺の冗談にも慣れて欲しいんだけど」

ミナムにこれ以上余計な事を言わせておけないとミニョはミナムの口を自分の手で塞ぎ、廊下に押し出そうとしていた。


三人はミニョの事が気になりながら手を振って“また合宿所で会おう”と言い自分たちの部屋に戻っていた。


一人になりドアに凭れミニョは大きく深呼吸をした。

これからどうしたら良いのか?。覚悟を決めベッドルームのドアを軽くノックをした。




トン、トン♪




「オッパ、入っても良いですか?」少し待っても返事は聞こえない。

恐る恐るドアを開け顔だけ出して中を覗いてみた。自分の腕で目を覆いベッドに横たわるテギョンを見て疲れて眠っていると思いミニョは音を立てないようにドアを閉めた。


食事を途中で止めベッドルームに入ったテギョンは横になっていたが勿論寝ている訳ではなかった。

メンバーが部屋を出て行った事も、ミニョがノックをして部屋の中を覗いていた事も気が付いていた。


「あいつ覗いたのにどうしてここに来て様子を見ないんだ。俺が本当に眠ってしまったと思ったのか?」

ミナムとミニョの単なる言い争いに腹を立てベッドルームに入ってしまったので自分から出ていくよりミニョに声を掛けて欲しかった。


「俺の事が心配ではないのか?。


あいつも絶対気にしているはずだ。もう一回様子を見に来るはずだ。その時には目を開け普通にすればあいつも安心するだろう」

テギョンはミニョが自分の所に来るのを辛抱強く待つことにした。




ソファーに座ったり窓際に立ち外を眺めたりとミニョは落ち着かなかった。

「昨日は暑い中、ライブをやってその後一晩中私に付き添っていらっしゃったらやっぱり疲れましたよね。

今日はお休みだとおしゃっていたからオッパの目が覚めるまでそっとしておこう」

広いスイートルームにポツンと取り残されたように感じたミニョは急に寂しくなった。


(隣の部屋にはオッパがいらっしゃるのに・・・)


隣にいようかと考えたがミニョが近くにいる事で眠りを邪魔してはいけないと少しの時間部屋を出てホテルの敷地を散歩しようと考えた。

自分だけが歩いていても周りを気にすることもないと・・・。

もう一度テギョンを起こさない様にノックをしベッドルームの入り口から覗くとさっきと同じ姿勢で眠っていた。ドアを閉めると椅子に座ってメモを書き始めた。


ドアが閉まると同時にテギョンは目をパチリと開き首だけ動かしミニョが立っていた入り口辺りを睨んだ。


「あいつは何を考えているんだ?」

徐々にイライラとしてきたがミニョなりに何かを考えているのだろうと自分自身を納得させもう少し様子を見ることにした。



ミニョはメモを書き終えるとバックと鍵を持って部屋を出て行った。



パタン・・・。


テギョンは一自分の聞き間違いだと思った。


「今、ドアが閉まったような・・・。まさか出て行ったり・・・。


そんなはずは・・・」

慌ててベッドから起き上がりベッドルームを飛び出して部屋を見回すとミニョの姿が見えない。バスルームや他の部屋を探してもミニョはいなかった。


「荷物は置いてあるから一人で帰ったわけではなさそうだ。何処に行ったんだ?」

顎に手を当て部屋をグルグルと回って考えているとテーブルの上にある一枚の紙が目についた。

メモを手にしたテギョンの顔が一気に強張った。


 

  ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:


  オッパちょっとだけ散歩に出掛けてきます。

  鍵は持って出ますから心配しないで下さい。


                   コ・ミニョ

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そして携帯電話を手に取るとミニョに電話を掛けた。


部屋を出て行ったミニョはロビーを抜け外の遊歩道に出て散歩をしようとしている所だった。

バックの中の携帯電話から着信音が聞こえると急いで取り出し画面を見た。


(オッパ目が覚めたんだ)


沈んでいた気持ちが一気に晴れ、大好きなテギョンの声が聞こえると携帯電話のボタンを押して自分の耳に当てた。




「今、何処にいる?。すぐに戻って来い!」

優しく心地よいテギョンの声とは程遠く電話を耳から遠ざけてしまう位怒りに満ちた声だった。

一方的に切られた電話をバックにしまうとミニョは下を向きながらさっき歩いて来た道を戻りテギョンの部屋に向かった。

部屋の前に立つとドアの向こうに立っているテギョンの顔を想像すると中に入ることを躊躇う。


(入らないともっとオッパに叱られてしまう)


意を決してバックの中から部屋の鍵を出して開けようとすると


「???


どうして・・・。開かないです」

もう一度やってみても鍵は開かなかった。壊れてしまったのかともう一度やっても鍵が開くことはなかった。手に持っている鍵を見てミニョは真っ赤な顔をした。


「間違って私の部屋の鍵を持って来てしまってます」

ミニョは泣きそうになった。

テギョンに電話をする勇気も部屋のベルを鳴らす勇気も無かった。

ドアの前で途方に暮れ下を向いているとドアが開きテギョンの顔が見えた。


「オッパ、鍵を間違って持って行きました」

潤んだ目で自分を見つめているミニョを見るとテギョンは起こることも出来ずミニョの腕を掴んで部屋の中に入れた。


「メモ一枚で勝手に出て行く。鍵は間違える。



全く・・・何処に一人で行ったのか心配したんだ」

申し訳なさそうに自分を見つめるミニョをそっと抱きしめた。ミニョは何度も胸の中で“ごめんなさい”と謝った。

一生懸命謝るミニョを見てテギョンは寝たふりをせずメンバーが部屋を出て行った後直ぐに起きればミニョを一人にさせる事はなかったと思った。テギョンもミニョを一人にして悪かったと髪を撫でながら謝った。

テギョンはミニョの涙を拭うと二人でソファーに座ってこれからどうするか話をした。ミニョはテギョンと一緒にいられるならそれだけで良いと言った。テギョンは暫く考え家に帰ろうと言うとミニョは嬉しそうに頷いた。

すぐにテギョンはミニョからチケットを預かると時間の変更の電話やチェックアウトの電話と色々掛け始めた。

ミニョは何時でも帰れるようにともう一度荷物を見直し電話を掛けているテギョンを見つめていた。


一通り電話が終わるとテギョンはミニョの方を見て午後一番の便で帰ると言い自分も荷物を纏め始めた。

ミニョもテギョンの服をクローゼットから持って来て渡し、忘れ物がないか全部の部屋を見て回っていた。

テギョンの準備は出来ると部屋を出ようとした時にミニョが聞いてきた。


「オッパ・・・ここから2人で空港に行くのは・・・」


「心配するな。ロビーに行けばわかるから」

テギョンはミニョのスーツケースと自分のバックを両手に持ち部屋を出て行った。後ろから置いていかれないようにとミニョが小走りに付いていきエレベーターに乗り込んだ。

途中で誰かが乗り込んで来たら困るとミニョは自分の荷物を持とうとしたがテギョンに睨まれ渋々諦めエレベーターの動きを表示している数字をずっと眺めていた。


一階に着いてもテギョンは二人分の荷物をもったまま歩きフロント近くにいるワン・コーディーにミニョの荷物を渡し何かを話していた。

話が終わるとテギョンはフロントに向かいワン・コーディがミニョを手招きした。テギョンが完全にいないと分かるとミニョはワン・コーディに近づき頭を下げ昨日の事を謝った。

元気になって良かったと言われミニョは泣きそうになったがこの後空港までの事を教えて貰いフロントにいるテギョンの姿を探した。


「元々今日帰ることにしてたの。さっきテギョンからミニョを空港まで一緒に連れて行って欲しいって。席はもちろん私とあなたたちは離れているけど。向こうの空港に着いてからテギョンの車に乗せるまでが私の仕事。さぁ自分の荷物を持って行くわよ」

ワン・コーディに背中を押されロビーを出ようとしていた。まだフロントにいるテギョンの姿を見たくて後ろを振り返る度に何度もせかされタクシーに乗って二人は空港に向かった。

ミニョがワン・コーディとロビーを出て行った事を確認するとテギョンもタクシーに乗って空港に向かった。

空港に着き待合室に着くとミニョはここで待つように言われワン・コーディが何処かに行ってしまった。

周りをキョロキョロと見ると昨日夏フェスを見に来たような若い人たちを見掛けテギョンと一緒に来なくて良かったと思っていた。

ワン・コーディが戻って来るとミニョの分のチケットを渡すと二人は荷物を預け搭乗口に向かった。


「ちゃんと隣はテギョンだから。決して嬉しそうな顔を見せちゃダメよ。

偶然に隣が“A.NJELL”のファン・テギョンでビックリしたような演技をしてよ。

また向こうに着いたら私から声を掛けるから飛行機から降りたらロビーで待ち合わせね」

上手に演技をするように言われたがミニョは全く自信が無かった。テギョンの顔を見たらきっとホッとした顔をしてしまうだろうと。


自分たちの後からテギョンが空港に向かっている事は分かっていたのでもしかしたらテギョンも搭乗口にいるかもしれないと待合室の中を見回してみた。

テギョンの姿はまだ見つからない。そんなミニョの様子を見てワン・コーディはきっと時間ギリギリに来るだろうとそれまでは何処かで時間を潰しているだろうから心配しないようにと言った。

搭乗案内のアナウンスが流れるとミニョ達二人は機内に乗り込みそれぞれの席に向かった。チケットを見ながら自分の席を見つけ隣を見るとテギョンの姿はまだなかった。


「ちゃんと着いてますよね。時間には必ず来ますよね」

自分の席に座り次々と機内に乗り込んでくる乗客の顔を見てテギョンの姿を探していた。時計を見るとあと少しで離陸時間となったときサングラスを掛けたテギョンが来て自分のチケットの番号を確かめミニョに頭を下げると無言で席に座りシートベルトを締め前を向いた。

テギョンが隣に来てミニョはワン・コーディに言われていた事をすっかり忘れてテギョンの横顔を見つめていた。


「俺の顔を見て思い切りホッとした顔してるぞ。ビックリしなくて良いのか?」

前を向いたままテギョンが囁くとミニョは真っ赤な顔をして口に手を当てオロオロとしていた。


「素直な奴だ。もう諦めろ。

心配するほどお前の表情なんて誰も見ていない」


ミニョはホッとして胸を撫で下ろした。機内が涼しいからとミニョはブランケットを借り膝の上に掛けるとテギョンがさりげなくブランケットの下から自分の手を伸ばしミニョの手を握ってきた。

ビックリした顔でテギョンを見ると表情一つ変えずイヤホンで音楽を聴いていた。ミニョも自分のMP3を出し目を閉じて音楽を聴き始めるといつの間にかテギョンの肩に凭れ眠っていた。


着陸した時の振動で目が覚めたミニョは頭をゆっくりと左右に振るとテギョンと目が合い恥ずかしそうにすると“お前のせいで眠れなかった”と口を尖らせていた。


「何かしました?」

ミニョは心配で何度か聞いたがテギョンは先に降りると言ってシートベルトを外して席を立って飛行機を降りて行った。


残ったミニョは何をしたのか気が気ではなかった。眠っていた間の事は記憶にないのは当たり前で・・・。

ミニョもテギョンから少し遅れて席を立ち、ロビーに行きワン・コーディを待っていた。

2人で荷物を受け取りテギョンと待ち合わせの場所まで行き暫くすると見慣れた青い車が横付けされた。

ワン・コーディに頭を下げ荷物を車にのせるとミニョはテギョンの車に急いで乗り込み空港を後にした。

暫くするとミニョは自分のせいで眠れなかったと言ったテギョンの言葉が気になってきた。


「オッパ、さっきの“私のせいで眠れなかった・・・”のはどういう事ですか?」

テギョンはミニョを横目でチラリと見た。


「お前が俺の肩に堂々と凭れかかって眠っていたからCAが気にして度々俺に“大丈夫ですか?”と聞いてきた。

さすがに恋人ですから気にしないで下さいとも言えず俺は“起こすのかわいそうですから”としか言えなかったんだ

。それでも俺が言いにくいと思ったCAがこの短い時間に何度も聞きに来てくれたんだ。

それも俺が寝ようとした時にだぞ。

お前がちゃんと寝ていれば俺だって・・・。


もういい。


お前きっと大胆な女だと思われているぞ、俺の肩に堂々と凭れて眠っていたって」

ミニョはワン・コーディと隣の席にしてもらえば良かったと言うとテギョンに睨まれ肩を竦めた。


「そういえばお前あのホテルでは結局寝てないんだな。せっかく良いホテルを予約してやったのに残念だったな」

倒れた事でミニョがホテルのベッドで眠っていないので可哀そうだとテギョンは思っていた。


「いいえ、ちゃんと寝ましたよ。倒れたのは予想外でしたけど。ベッドも凄く寝心地良かったです。

オッパのスイートルームのベッドとは違うんでしょうけど・・・」

ミニョが楽しそうに話しているのを見たテギョンは慌てて車を歩道に寄せた。突然車を停めたテギョンをミニョは不思議そうに見つめ首を傾げた。


「オッパ、どうかしました?。

ホテルに忘れ物でもしたのを思い出しました?」

問いかけるミニョ“お前じゃあるまいし”と呟きテギョンは冷静になろうと自分に言い聞かせ優しくミニョに話しかけた。


「コ・ミニョ、これから俺の質問に答えてくれ。良いな」

ミニョはテギョンの質問には何でも答えるとニッコリ微笑み頷いた。咳払いをし大きく息を吐きテギョンは一つ一つ質問をした。


「コ・ミニョ、ホテルのベッドは寝心地が良かったんだな?。


俺の記憶だとリハーサルの日には俺と電話で話したよな?。


夏フェス当日着きましたって俺にメールをくれたよ。」

ミニョは質問ごとにそうだと頷いた。


「そこでだ、俺の勘違いだと信じたいがお前は夏フェス当日に着いてその日の夜には病院のベッドで眠っていたと思うが・・・。横に俺はいたしシヌやミナムもお前を病院で見ていると思う。

もしかして病院のベッドで寝ていたのはお前ではなく幻でお前はその頃ホテルのベッドで眠っていたのか?。それとも・・・俺に隠している事があったのか?」

ミニョは自分の言った事を思い出し口を押えて瞳を左右に揺らした。


「正直に言え。

お前はいつ寝心地の良いホテルのベッドで眠ったんだ?」

ミニョの顔を覗き込むように聞くと逃げ場のないミニョは慌ててテギョンの顔を避けようと横を向いた。

ミニョの顎に手を掛け自分の方に向かせて同じ質問を投げかけた。


「夏フェスの前の日にホテルで寝ました」

ミニョの顎から手を離すと目を見開いてミニョを見た。


「じゃあ、電話で話した時はもしかしてホテルにいたのか?」

ミニョはコクンと頷くとテギョンはハンドルに頭を付け暫く黙ったままだった。

動かないテギョンにミニョは離しかけて良いのか迷っていた。


「もしかしてお前の考えではないよな」

下を向いたままテギョンが言うとミニョは慌てて“ミナムオッパを叱らないで下さい”と言ってしまった。

顔を上げたテギョンは溜息をついてボソッと呟いた。


「今回は全部あいつの仕業か・・・。

勿体ない事をした。お前が前の日から来ていると分かっていたならその日はお前と一緒にいられたのに・・・。だから俺に内緒の事はするなと口を酸っぱくして言っているんだ。

他に俺に内緒にしているのはないだろうな?」

疑いの目で見るとミニョはもう無いと首を大きく振って信じて欲しいとテギョンの腕を掴んでいた。


車の中で“今後は隠し事はしない”と約束をさせられミニョはなんとかテギョンに許してもらった。

再び車を走らせ二人はメンバーのいない合宿所に向かった。