お越しいただきありがとうございます。
今回から新しいテーマでお話をアップいたしました。
いつも仲良しの二人が多い私のお話ですが、今回ちょっとだけ暗い感じのスタートとなりました。
本編のミニョのイメージとは少し違うと思われる方も出て来るかと思いますが、こんな一面も見せても良いかなぁと思い書き始めました。
別なタイトルにしようかと悩みましたがこれからのお話にも少なからず絡んでくるのでテーマだけ変えて書くことにしました。
今回はあまり引っ張らないよう重くならないよう短めで終わりたい(終わらせたい)と思っています。
ではお話に。
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「あとはお風呂に入って時間になったらオッパに電話をするだけ」
“.A.NJELL”の歌を口ずさみながら着替えを準備してバスルームに向かおうとした。
「あっ、オッパの声♪」
大好きな人の声に敏感に反応し、急いでベッドルームから飛び出したミニョはテレビの前に立った。
「あれ?」首を傾げ画面を見つめた。
聞こえてくるのは間違いなくテギョンの声だ。
人気がある彼らの歌がCMで流れるのは特に珍しくもない。むしろ流れない日が少ない方だ。曲が採用されている時は概ねメンバー全員かまたは個人でCMに起用されている。歌だけ使われる事は滅多にない。
ミニョが今見ている画面は景色の良い海岸沿いの一本道をオープンカーが走っている場面だった。
「歌だけだったのかな?。それともこの後誰か出てくる?」
暫くテレビの前に立ってCMを見続けていた。
場面が変わるにつれテギョンの声を聞いた時の嬉しそうな表情とは一転してミニョの目から涙が自然と溢れてきた。
「見なければ良かった」
CMが終わってもミニョはその場から動く事が出来なかった。お風呂に入ろうと胸に抱えた着替えを力いっぱいギュッと抱きしめた。どのくらいの時間その場にいたのか分からない。
(もっと大人にならなくては・・・。どんな事でも我慢できるようにならなくては・・・)
どうすればこの胸の痛みから逃れられるのだろう。この先同じ胸の痛みを何度経験するのだろう?。
お風呂に入ろうとした事も忘れソファーに座り込んだ。
「院長様、どうしたら良いでしょうか?。
こんな気持ちを持ったままこれからもファン・テギョンssiのそばに居る事が許されるのでしょうか?。
どうしたらもっとふさわしい女性になれますか?」
胸の前で両手を組み問いかける事しか今は出来なかった。
「ねぇねぇ。最近見なかったけど久々だよね、ヒョンの携帯と睨めっこ。もう二日目だよ」
ジェルミが小声でミナムに言うと“いや、三日目だ”とシヌが言った。以前ミニョからの連絡をイライラしながら待ってた時も同じような状況だった。
「今回はちょっと違うね。時々溜息ついてるもん、自分では気づいてなみたいだけど」
テギョンが連絡を待っているのはミニョだと三人は考えていた。
ミナムは偶然昨日ミニョと電話で話した時の事を思い出した。
「ミナムオッパが電話してくるなんて珍しいですね。ご飯ちゃんと食べてますか?」
いつもと変わらず明るい声だった。
「アイスの間にちょっとだけ食べてる。俺は大丈夫だよ、倒れたりしないから」
ミニョが夏フェスで倒れた時の事を言っていた。
「今はお仕事忙しいですか?。ちゃんとご飯食べて眠れるときは眠ってくださいね」
「お前、母親みたいだよな。俺の心配よりヒョンの事だけ考えてれば良いよ。最近上手くいってる?」
「はい、いつも大事にして頂いてます。オッパもお仕事頑張ってくださいね」
電話を切った後、ミニョが大きく溜息をついていたのは勿論ミナムは知るはずがない。出来るだけ自分の気持ちをミナムにも知られたくないと。
(当たり障りのない会話だった。他にも話したが特にヒョンの事には触れていなかった。
ミニョの返事が本当ならヒョンが落ち込んでいるはおかしい・・・。ちょっと前までヒョンも普通だったよな。
待ってるのはミニョの電話じゃないって事?。ミニョ以外に好きな人が・・・?。
いや、テギョンヒョンはあり得ない。俺から見てもミニョに対する気持ちは普通じゃないからな。兄としては嬉しいような悲しいような・・・)
「昨日さぁ、久しぶりにミニョに電話を掛けてみたんだ。
ジェルミ、最近ミニョの顔見てないでしょ?。またご飯でも作りに来いって言っておいたから。
ヒョンと自分の家で会ってるから合宿所に顔を出す回数減っただろ?。自分以外の男と仲良くしてるのを見たくないからきっと来るなって言ってるんだよ」
わざとテギョンに聞こえるように言ってみた。
「ミナマ~、ホントに?。俺がミニョの家に行っても良いんだけど?。一人で行くと怒られるからシヌヒョンとミナム三人だったら大丈夫じゃない。ミナマ~、聞いてみてよ。
テギョンヒョンはいつも行ってるからその時は遠慮してよ」
ジェルミの言葉にいつもなら怒るはずのテギョンが全く反応しない。
三人は何も言わないテギョンを驚いて見つめていた。
「テギョン、ミニョと何かあった?」
シヌの問い掛けに携帯をじっと見つめていたテギョンはハッとしたように頭を上げ首を横に振ってその場から出て行った。
三人は明らかに様子がおかしいと思い始めた。仕事に入ると今までとは変わりなくこなしているがそれ以外の時間になると携帯を眺めながら考え込む事が多くなっていたからだ。シヌはミナムにミニョの様子がおかしくなかったか聞いてみたが特に感じられなかったと言っていた。
一人になったテギョンはミニョの登録ボタンを押しミニョが出てくれるのを待った。繰り返し耳に聞こえる呼び出し音。直ぐにでも聞きたいミニョの声は今日も聞けなった。
(どうして電話にも出ないんだ。何があったんだ?。)
毎日ミニョから掛かって来ていた電話もここ数日ない、そしてテギョンが掛けてもミニョは電話に出ることはなかった。思い切って昨日はミニョのマンションの駐車場まで行ってみたが連絡も入れず突然ミニョを訪ねてミニョの驚いた顔を見るのも正直怖かった。
(俺の事が嫌いになったのか?。わがままで自分勝手な俺に付いていけないと思っているのか?。
それとも他に好きな男が出来たのか?。ミナムの電話には出ても俺の電話には出ないのはどうしてなんだ)
面と向かって別れを言われてしまったらと思うと車から出る事も出来ずそのまま合宿所に帰った。
(一人で何かに悩んでいるのか?。ミニョに起きるすべてに責任持つと俺が言った事を忘れてしまったのだろうか?)
何度電話しても何度メールしても未だミニョからの返事は一度も無かった。
何も出来ない苛立ちに携帯電話を握りしめ床を思い切り蹴った。
CMを見た日からミニョはテギョンとの約束の時間になっても電話を掛ける勇気が無かった。
「いつもの私でいれば大丈夫」
何度も自分に言い聞かせ電話を掛けようとした。掛けてテギョンの声を聞けばきっと押さえていた気持ちが出てテギョンを困らせてしまう。
「敏感なオッパの事だから私の声からきっと何かがあると気づかれてしまう。オッパに嘘をつく事も出来ない。
今の自分の気持ちを素直に言ってしまったらきっと嫌われてしまう。
オッパには私でなくてもふさわしい方が周りにたくさんいる。私には・・・・・・オッパしか考えられない。
オッパが離れて行ってしまったら・・・。
今は自分の気持ちが落ち着くまでもう少しだけ時間を下さい。
オッパのどんな姿を見ても大丈夫と自信がつくまでもう少しだけ・・・」
ミニョが電話をしなくなった翌日から仕事の合間と思われる時間帯に毎日テギョンからの着信と留守電が入っていた。
“コ・ミニョ、昨日電話をするのを忘れていただろう?。まぁ1日位なら許してやる。今日は忘れずに掛けて来い”
“コ・ミニョ、2日も忘れるとは良い度胸だ。この留守電を聞いたらとにかく電話をしろ。メールじゃなくて電話だ
“コ・ミニョ、どうして掛けて来ない?。事故でも起こして俺にバレルのが怖いか?。お前の事故には慣れているから気にするな。今日は早く終わるから必ず電話しろ。久しぶりに外で食事しよう”
何度繰り返し聞いただろうか。
何度テギョンに会いたくて、何度声が聞きたくて電話を掛けようとしたか・・・。
「オッパ、会いたいです。顔を見て泣かないと自信がつくまで・・・」
携帯電話に入れられた二人並んだ写真を見て泣いていた。
自分の車で仕事場に向かうシヌは下を向きながらゆっくりと歩いてるミニョを見掛けた。腕時計を見ると仕事が終わったばかりなのかバス停に向かっているようだった。
ミラー越しに見るミニョの様子はテギョンと同じく元気が無かった。
「話をしたいけどこれから仕事だし・・・」
ミニョに気づかれないよう少し先で車を停め、ミニョを見ながら電話を掛け始めた。
「ミニョ、今大丈夫?」
「シヌヒョン、お久しぶりです。とっても元気ですよ。シヌヒョンはどうですか?」
ミラー越しに見えるミニョは元気なふりをして電話で喋っているとしか思えなかった。
「仕事が忙しいのはいつもの事だけど最近ミニョの顔も見てないしどうしてるかなと思って。テギョンも自分からミニョ事喋らないし。
ちょうど美味しいお茶の葉を買ったから一緒に飲もうと思って。明日は合宿所に顔出せない?」
「合宿所ですか?。明日はみなさんいらっしゃいますか?」
誰がいるのか聞いてくるのは初めてだった。
「明日は皆バラバラのスケジュールなんだ。皆、午前中から仕事だけど俺だけ夕方からで。
もし俺一人の時に来るとテギョンに怒られるんだったら別な日でも構わないし」
「シヌヒョンさえ良ければ午後お邪魔しても良いですか?。私もシヌヒョンにお茶を渡さないといけないと思っていてまだお渡し出来て無かったですから。オッパには私から言っておきますから大丈夫です」
ミニョと明日の約束として電話を切った。
電話が終わった後もミニョの様子を見ていると大きく深呼吸をして何かを自分に言い聞かせるように歩き始めていた。
仕事の時間が迫っていると気づきシヌは車のエンジンを掛け約束の場所に向かったがミラー越に小さく映るミニョの姿が頭から離れる事が無かった。