お越しいただきありがとうございます。


日曜日には書き終え今日から別のテーマで書くつもりがパソコンが使えず遅れてしまいました。

今までの私のお話にしては短い方ですね。

今回このテーマを書きながらやっぱりハッピーなお話の方が良いのかなぁと思いました。悲しいお話だと書いていて自分も切なくなります。

暫くは悲しいテーマは封印したいと思います。


上手く纏められた自信はありません。


誤字・脱字が有ったらお許し下さい。


ではお話に。




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寝返りしてゆっくりと目を開けると見慣れたテギョンの人形が目に入った。大好きなテギョンが目の前にいるかのようにニッコリ微笑み無意識に手を伸ばし自分の胸の中でギュッと抱きしめた。そして自分がどうしてベッドに寝ているかぼんやり考えた。



「あっ!」

慌てて布団を捲りベッドから飛び出ると左手に人形を抱いたままベッドルームのドアを勢いよく開けその場に立ってリビングを見回しテギョンの姿を探した。


「お仕事に戻られたんですね」

ガッカリとしながら眠る前まで2人でいたソファーに倒れこんだ。テギョンの人形をソファーに座らせそれを見ながら大きなため息をついた。時計を見るとテギョンとこの部屋に戻ってから大分時間が経っていた。仕事の合間に時間を作って来てくれたのに・・・。

何日も悩み続け眠れなかったが自分の気持ちを正直に伝えた事で一番居心地の良いテギョンの胸で眠ってしまった。


「オッパ、呆れてますか?」

隣に座ったテギョンの人形に話しかけてみた。テギョンの優しい笑顔を頭に浮かべているとテーブルのに置いてある一枚の紙が目に入った。ソファーから立ち上がりその紙を手にすると落ち込んでいたミニョの顔がパッと明るくなった。



“目が覚めたら直ぐに電話しろ”


紙を置くと携帯電話を手にし電話を掛けた。打ち合わせ中だがミニョの電話を待っていたかのようにテギョンの声がミニョの耳に入ってきた。


「場所を変えるからちょっと待ってくれ」

電話の奥で聞きなれた声がミニョの名前を呼んでいるのが聞こえた。ミニョが返事をしようとするとテギョンが後ろの声に向かって“うるさい!”と怒鳴っているのが聞こえミニョはクスッと笑った。

移動したのか静かになるといつものテギョンの声が聞こえた。


「お前に怒鳴ったんじゃないからな、勘違いするな」」

ミニョは勿論分かっていると返事をし眠ってしまった事をテギョンに謝った。


「五分ですぐに眠れる特技の恋人を持つと寂しいもんだ。わざわざ時間を作っても寝顔しか見れない」

機嫌を損ねたと思ったミニョはどれだけテギョンの胸の中が居心地良かったかを一生懸命説明していた。


「分かった、分かった。そう言って貰えると胸を貸した甲斐があったということだな。

それより明日の夕方、今日と同じ位の時間に迎えに行くからバス停で待っててくれ。出来る限り待たせないように行くつもりだから少しくらい遅れても待ってろ。


良いか、勝手に都合の良い様に解釈して帰るなよ。遅くなるようなら必ず電話するしお前も何かあったら連絡しろ。分かったな」


「大丈夫です。ちゃんとオッパがいらっしゃるまで待ってますから」


「最近お前の“大丈夫”が一番危ないと分かったからな。もし今度約束破ったら・・・一日俺の言う事を聞いてもらおう。

俺はそっちの方が良いから何だったらすっぽかしても良いぞ」


「明日はどんな事があってもオッパのこと待ってます。遅くなってもずっと待ってますから心配しないで下さい」

テギョンの事だからあえて嫌がることを言うだろうと思い、仕事が終わった急いでバス停に行こうと思った。






翌日、仕事が終わるとミニョは急いで帰る準備をして孤児院を出た。テギョンと待ち合わせだと思うと昨日とは違って足取りも軽かった。

どんな理由であれ昨日、今日と続けてテギョンに会えるのがミニョは嬉しくて仕方なかった。バス停の椅子に座って目の前を通り過ぎる車を眺めていた。ミニョの待っている青い車が早く来ないかと立ったり座ったり身を乗り出して待っていた。



テギョンの車はミニョの待っているバス停の近くまで来ていた。そして助手席の前に置かれた小さな箱をチラリと見た。

ミニョが箱を開けた時に喜んでくれるだろうか?。頭の中でミニョが箱を手にする姿を思い思い浮かべた。

喜んでミニョが手にしてくれると良いんだが・・・。ただ普通に渡しても素直に貰うとは思えない。テギョンは心の中で少し不安になってきた。


バス停の手前で車を停めるとテギョンはミニョに分かるようにクラクションを鳴らした椅子に座ってそわそわしながら待っていたミニョは音のした方を向きテギョンの車を見つけると乱れる髪を押さえながら走って来た。外からテギョンの顔を見つけると嬉しそうな顔をして助手席に乗り込んだ。


「お仕事大丈夫でした?。遅れるんじゃないかと思ってました」

思ったより早くテギョンが迎えに来てくれミニョはホッとしていた。


「ちゃんと仕事は片付けてきた。長く待たせると帰られてしまうかもしれないからな」

どんなに遅くなっても待っていたとミニョは頬を膨らましテギョンを見た。


「オッパ、これからどこに行くんですか?」


「合宿所だ。昨日、お前が俺の胸の中で寝てしまって打ち合わせの時間をずらして貰ったからお前がメンバーに詫びを言え。今日はもうみんな帰っているから」

眠ったことを言われミニョは申し訳なさそうに下を向いた。


「皆さんにご迷惑をお掛けしたならちゃんと謝らなければいけませんね。オッパ、途中で何かお土産買っていきますから車を停めて下さい」

ミニョは何かを決意したかのように前を真っ直ぐ見ながら言った。合宿所に行く口実を冗談のように言ったつもりが真面目に反応したミニョを呆れるように見つめた。


暫く車を走らせるとテギョンはミニョの前に置いた小さな箱を見るようにと顎で示すとミニョは不思議そうな顔をして箱を手にした。中を見るように言われ蓋を開けるとミニョの顔がパッと明るくなった。


「わぁ~、可愛い指輪ですね。どうしたんですか?。どなたかにプレゼントされるんですか?」

箱の中にはシルバーのファッションリングが入っていた。星のモチーフの横にミニョの誕生石のブルートパーズが付いたリングだった。テギョンの返事を待ちながら蓋を閉め箱を置こうとしていた。


「誰にって・・・、お前に決まってるだろう」

予想通りにいかないとテギョンは不機嫌そうに口を尖らせミニョを横目で見た。


「私にですか?」

テギョンは頷きながらミニョの喜ぶ顔をこっそり見ようとしていた。


「オッパ、頂く訳には・・・。これって・・・」

指輪を見た時の明るい表情はなくなり下を向いて困ったような顔をしていた。


「貰えないってどういう事だ。お前、まさか婚約指輪だと・・・?」

ミニョはむしろそうではないのかと不思議そうな顔をしてテギョンを見て頷いた。テギョンは婚約指輪ならまだ受け取って貰えないと顔には出さなかったが心の中ではショックだった。


「安心しろ、それは婚約指輪ではない。

お前は知ってるかどうか分からないが、このトパーズは恋人たちが離れ離れになっても一途な愛を育てる石だと言われているそうだ。まぁ、この先俺たちが離れ離れになることはなさそうだから心配はいらないが。それにその石を身に付ける事で幸せが訪れるし、愛する人に贈ると苦しみから立ち直るきっかけを授けてくれるそうだぞ。

お前はとにかく事故多発地帯だからこれからもどんな事に巻き込まれるか分からないだろう。指輪がお守り代わりだ。俺と離れていてもそれを付けていれば大丈夫だ。俺の仕事の事で胸が苦しくなったら指輪を見れば大丈夫と思え」

お守りかわりと言われミニョは納得したようにもう一度指輪を見た。


「それが婚約指輪なら俺の分が箱の中に無いのはおかしいと思わないのか?。デザインを見てお前の指輪しかないと思えば婚約指輪ではないくらい気が付くだろう?」

勘違いをしてしまったミニョは頬を膨らましテギョンを睨んだが直ぐに手にしている指輪を見て“お守り”だと言いながらテギョンと指輪を交互に見て嬉しそうにしていた。


「後でちゃんとつけてやる」

テギョンがぶっきら棒に言うとミニョは恥ずかしそうに頷いた。本当は自分で買いに行きたかった。テギョンが指輪を買ったとなると騒ぎになってしまい誰のものなのかを憶測で書かれてしまうと思い、ツアーの打ち合わせに同席していたワン・コーディにミニョの誕生石の付いた指輪を何点か用意して貰った。そしてその中からミニョが貰っても負担に思わない物をとテギョンが選んだものだった。


合宿所に向かう途中でテギョンがお土産用と言ってビックリするほどアイスクリームを買った。車に戻るとミニョはアイスクリームの入った紙袋を抱え、テギョンに貰った指輪を嬉しそうに眺めていた。


駐車場に付き2人は車から降りテギョンはミニョから紙袋を持ち、ミニョは指輪の入った箱を大事そうに持ってウッドデッキに上がって行った。

そこでテギョンは止まり、ミニョに椅子に座るように言い指輪の箱を受け取った。


蓋を開け指輪を取りニッコリと微笑むとミニョの左手薬指にゆっくりとはめていった。指にぴったりとはまるとミニョは指輪を右手でなぞるようにして“お守りですね”と言いながらテギョンを見た。


「先に言っておくが外すとお守りの効果がなくなるから絶対外すなよ。指輪をしているから事故が起きない訳ではないから勘違いするな。事故を起こしても指輪のお陰で軽く済んだと思えば良い」

ミニョは改めて指輪をした左手を高く上げキラキラ光る誕生石を見つめていた。


「オッパ、ありがとうございます。お守りがあれば大丈夫だと自信がつきます、大切にします」

ミニョの嬉しそうな顔を見てテギョンは良かった。指輪を受け取ってもらうために説明した事を素直に信じ指輪をしてくれテギョンはホッとしていた。



「テギョン、お帰り。ミニョも一緒だったんだね」

先に帰って来ていたシヌがキッチンにいた。


「シヌヒョン、お邪魔します」

数日前に会った事をテギョンに知られないようにと普通に挨拶した。テギョンが着替えて来ると二階に上がるとミニョは椅子に座って恥ずかしそうにシヌを見た。


「あれからどうなったのか気になっていたんだよ。ちゃんと話が出来たんだね、良かったよ。話をしてもテギョン怒らなかったでしょ?」


「はい。

お仕事の事はやはり求められばそれは私が見たくないと言っていても仕事と割り切ってやるとおっしゃってました。私が嫌だと思ってくれて良かったと言っていただきましたし。

また見たら胸が苦しくなるかもしれませんがオッパに私の気持ちが伝わっていると分かったからもう大丈夫です」

シヌは良かったとミニョの頭を撫ぜた。


「今日は私のせいで昨日オッパが打ち合わせの時間に遅れたのでお詫びに来たんです」

ミニョは合宿所に来る途中買って来たアイスクリームの紙袋を差し出し申し訳なさそうにシヌを見た。


「お詫びに?。ジェルミもミナムもミニョの事でテギョンが遅れたって気づいてないよ。だから普通に遊びに来たって事にしておけば良いよ。

テギョンはここにミニョを連れてくる理由が欲しくてわざと言ったんだよ」

ミニョはシヌの言うとおり遊びに来た事にすると頷いた。



「シヌヒョン、テギョンヒョン帰ってきたんだね」

ジェルミがゆっくりと階段を下りながら聞いてきた。


「ミニョも一緒だったよ」

ミニョの名前を聞いた途端ジェルミが二階のテギョンの部屋に向かおうとした。慌ててミニョがジェルミの名前を呼ぶとニョの声のするキッチンに飛んできた。


「ジェルミ、お邪魔してます。アイスクリーム買って来ましたよ。冷凍庫に入れてありますから後で食べて下さいね」

ミニョの目の前に立つと嬉しそうに手を握り一緒にアイスを食べようと誘った。


「あの・・・ミナムオッパは?。せっかくですからちょっと呼んできます」

部屋で寝ていると聞いたミニョは起こして来ると言って二階に上がって行った。

ミニョと入れ替わりに着替え終わったテギョンがキッチンに来ると冷蔵庫から水のボトルと出して飲んでいた。

二階の方からミナムの名前を呼ぶミニョの声と階段を急いで降りて来る足音が聞こえた。キッチンにいた三人は一斉に怒った顔をしたミナムと手を引っ張られ困った表情をしたミニョを見て驚いた。



「ヒョン、これ何だよ?。俺は二人の結婚の話も聞いていないし許可をした覚えもないのに勝手に婚約したって事?」

テギョンの目の前にミニョの左手にはめられた指輪を見せた。シヌとジェルミも驚いた顔をしてテギョンを見つめた。


「ミナムオッパ、違います。婚約指輪ではありません。私がいつも事故ばかりおこすのでオッパがこれをすればお守りがわりになるからとわざわざ下さったんです」

オロオロしてミニョがテギョンから聞いた話をミナムに説明した。

横で聞いていたシヌとジェルミも本当なのかと半信半疑の表情でテギョンを見ていた。

ミニョは同意を求めるようにテギョンに助けを求めた。


「こいつが言ったとおりだ。単にお守り代わりにあげた」

婚約の意味ではないと渋々ミナムにも説明した。

三人は納得いかず疑いの目をしてテギョンを見たがミニョが嬉しそうにお守りに貰った指輪を見ていたのでこれ以上何も言わないようにした。


「良かったよ、婚約指輪でなくて」

ジェルミの言葉にミナムは“簡単にOKするわけない”と言うとテギョンは口を尖らせた。ミニョは三人のやり取りを見ながら嬉しそうに指輪を眺め、そんなミニョを複雑そうな顔でシヌは見ていた。



お越しいただきありがとうございます。


早速、お話に。


誤字・脱字お許し下さい。

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「オッパ…」


(まさかこんな所にオッパがいるなんて・・・・

いつもならこの胸の中にいる時が一番幸せだと思えるのに・・・)


テギョンに対して後ろめたい気持ちのミニョは何も言えずただ体を固くしているだけだった。思いがけないテギョンの行動に車や人が行きかう場所だと考える余裕すらミニョには無かった。


周りの様子がおかしいと少しずつ感じ始めるとミニョはテギョンに迷惑を掛けてはいけないと慌てて体を動かし胸の中から離れようとした。そんなミニョの行動とは対照的にテギョンは周りの事など考えていなかった。


「俺の事がもう好きではなくなったのか?」

頭の上で弱々しく囁かれる言葉にミニョは下を向いたまま首を左右に振った。


「だったら・・・どうして・・・。


数日間でお前に何があったのか、何を考えているのか知りたいんだ。少しで良いから時間をくれないか」

自信なさげなテギョンの声にゆっくりと顔を上げ見つめるミニョの目は返事に困っているようにも見えた。


「あの・・・オッパに付いて行きますから、離してもらえますか?」

少しずつテギョンの存在に気が付いた周りの目を気にしてミニョはテギョンの胸を押すようにして離れた。ミニョの姿を見た途端冷静さを失いかけたテギョンもミニョの困った顔を見るのが辛く急いで助手席のドアを開けるとミニョを乗せ自分も運転席に乗り込むと俯いたままのミニョに話し掛けた。


「仕事の合間を抜けて来たから時間はそんなに取れない、合宿所で良いか?」

ミニョは合宿所で他の三人に今の自分の姿を見られたくない。シヌは何も言わないと分かっているがミナムyジェルミには気づかれたくなかった。


「オッパさえ良ければ私の家でも良いですか?」

顔を上げずに小さな声で呟くミニョにテギョンは車のエンジンを掛けミニョのマンションに向かった。

ほんの少し前、夏フェスの後二人でマンションに向かった時はこんな事になるとは全く予想できないほどミニョも楽しそうにしていたのに・・・。

短い期間で何があったのかテギョンは予想がつかなかった。


マンションの駐車場に車を停めテギョンが車の外に出てもミニョは車が停まった事にも気が付いていなかった。助手席側にまわり、ドアを開けるとテギョンを見上げゆっくりと車から降り二人は無言で部屋へと上がって行った。

狭いエレベーターの中、何も言いだせないミニョは緊張からか今にも泣きだしそうになっていた。先を歩きながら後ろから自分の姿を見られているのが辛かった。ドアのカギを開け先にテギョンを部屋の中に入れ遅れてミニョも入って行った。


久しぶりに来たミニョの部屋の中は少し前に来た時と何一つ変わっていなかった。

リビングに進んだテギョンが後ろから付いて来たミニョを振り返ると下を向いたまま何も語ろうとはしない。そっと歩み寄りミニョの手を引いて一緒にソファーに腰降ろし向かい合った。


「コ・ミニョ。

お前がアフリカから帰って来た時にお互い思ったことをちゃんと言おうと約束したよな」

ミニョは思い出しテギョンの顔を一瞬見て頷いた。


「留守電はちゃんと聞いてくれたのか?」

ミニョはテギョンの質問に頷くだけだった。


「それならなぜ・・・」テギョンの顔が悲しさで歪んでいく。


自分を見てくれないミニョの姿が悲しく、テギョンはやりきれないと顔を横にし、もう一度ミニョの手を握りながら話し掛けた。いつもならテギョンの手を握り返してくるミニョの手に力は無かった。

「言いたくないなら・・・俺の聞きたい事に“はい”か“いいえ”だけ返事をしてくれ」

ミニョは顔を上げて小さく頷いた。


「俺の顔も見たくない程、俺の事がもう好きではないという事か?。他に好きな人が出来てもう俺の声も聞きたくないと思ったのか?」

テギョンの質問にミニョは顔を上げ、驚いたように目を見開き首を大きく左右に振って泣き出した。


「オッパの顔を見たくないなんて・・・・。オッパの声を聞きたくないなんて・・・。

そんな事あるわけないじゃないですか。私が他の人を好きになるなんて絶対ないのにどうしてそんな酷い事を聞くんですか?」

必死に我慢していた涙が一気にミニョの目から溢れだし、口を真一文字にし怒った目でテギョンを見た。


「嫌いになった訳でも他に好きな奴が出来たんじゃないんだな」

流れる涙を手で拭きながらミニョはテギョンを見て何度も頷いた。

テギョンはホッとしたように優しく抱きしめ髪を撫ぜ何度も“良かった”と繰り返し口にした。ミニョが泣きやむまでテギョンはミニョを抱きしめた背中を擦っていた。

時間が経ちミニョが落ち着きを取り戻すとテギョンがゆっくりと顔を覗きながら微笑んだ。


「オッパ・・・自分勝手でごめんなさい。私の事嫌いになりましたよね」テギョンの顔を見れず下を向いたまま離しかけた。


「嫌いになっていたらお前に会いに来たりしない。連絡も取れない期間どれだけ心配したか分かるか?。何があったんだ?」


「話すと呆れてしまうと思います」


「聞いてみないと分からないだろう?。何を聞いても怒らないから話してくれ。俺はお前がそばにいてくれるだけで良いんだ」


「だったらこのままお話しても良いですか?」

ミニョはテギョンの胸の中にしがみつきながら話を始めた。テギョンはミニョを優しく包み込むように腕を回した。


「本当に、本当に呆れたりしないで下さいね。


電話をしなくなった日、テレビでオッパとソ・ミナssiとのCMを偶然見たんです」

テギョンは一瞬何の事だか分からなかったが随分前にやった仕事だと思い出した。


「オッパの歌が聞こえて急いでテレビの前に行ってみてたんです。最初は歌だけがと思っていて暫く見続けていたら白いタキシードを着たオッパが映って車から指輪の入った小さな箱を持つとソ・ミナssiの待ってる所に駆けつけていらっしゃいました。

そこでウエディングドレス姿のミナssiを抱きしめて・・・。ミナssiとオッパの幸せそうな表情が自然に見えたんです。

その後、二人で仲良く教会を歩くシーンや見つめあっている表情で・・・。勿論その時はテレビの中の事だと分かっていたんです。でも終わった後も頭に残ってしまってオッパが他の方と結婚してしまったような気がしてしまいました。


もしかしていまオッパが私の恋人だというのも夢なのかもしれない。


お仕事だからどんなシーンもやるものだ分かっています。ミナムオッパの代わりにMVの撮影をした時、オッパとユ・ヘイssiとのキスシーンを見た時もお仕事だし本当に付き合っていらっしゃると思っていましたから本当は胸が苦しかったですけど自分の中で仕方ないと諦めていました。

でも今はオッパが他の女性を抱きしめるシーンも手を繋ぐのも凄く、凄く嫌だったんです。幸せそうな表情で見つめ合っているのも・・・見たくありませんでした。

見なければ良かったと。すぐにテレビを消せばよかったと。


胸が苦しくて苦しくて・・・。そんな気持ちでいつものように電話をしてオッパの声を聞いたらきっと泣いてしまうと思いました。

敏感なオッパに理由を聞かれ何と説明して良いのか分かりませんでした。そんなお仕事をしているオッパは見たくないと言ってしまいそうで。

そんな事を言うような私はこオッパの恋人の資格がないと思いました。でもオッパと離れたくないからどんなシーンを見ても平気になればオッパともいつも通りに話が出来たり顔を見る事が出来ると思ったんです。

まだ平気ではありませんが、このままではいけないと思って今日お電話しようと思っていました。


本当にすみませんでした。ご迷惑をお掛けしました。これからはオッパがどんな方とお仕事されても大丈夫と思うように努力します」

テギョンの顔を見上げ小さな声で謝った。


「あれはお前が帰ってくる前の仕事だったから俺自身すっかり忘れていた。

嫌な気分にさせて本当に悪かった。今度からお前に嫌な思いをさせる仕事は絶対にしない・・・と言いたいところだがお前が言うようにどうしてもやらなければいけない時は仕事だと割り切ってやる事にする。それは前もこれからも変わらない。相手には感情はないから心配するな。事前に言う事でお前が少しでも安心するそうする。

お前が見たくないと言ってくれて嬉しかった

。前に“嘘つき妖精”の映画の試写会に皆で行った時の事を覚えているか?。レポーターに恋人としてユ・ヘイのキスシーンの事を聞かれて“何も思わない”と答えた事を。あの時は恋人でもない興味も何も無かったから本音で答えたがもし同じ質問をコ・ミニョが誰かに聞かれ同じように答えられたら俺としてはショックだ。むしろお前が嫌だと言ってくれてホッとした。

俺の事を好きでいてくれてるんだと。

俺は他の女性には全く何の興味も無いから安心しろ。大勢の男性が綺麗だと言う女性より世界にたった一人しかいない珍種の“テジトッキ”の方が俺は好きだから。俺みたいな物好きは世界中探してもなかなかいない。

心配するな、お前の事を嫌いになったり呆れたりする事はない。」


「ありがとうございます。

我儘だったと分かっていますがオッパに気持ちが伝えられて良かったです。オッパ・・・我儘をもう一つだけ言っても良いですか?」

お願いするような顔をして見上げるとテギョンは優しく微笑んで頷いた。


「あと五分だけで良いんです。このままオッパの胸にいても良いですか?」

許可を貰うとテギョンの心臓の音を聞くかのように胸に耳を当てジッとしていた。

何も言わずただ胸の中にいるミニョを愛おしく思いながらテギョンはミニョの頭の上から呟いた。


「今後、アジアツアーに出掛けるとお前と会えない時間が増えて来る。一人にしておくとまた変な事を考えるだろう?。

仕事を辞めて付いて来いとは言えないが近い所であれば会いに来ないか?。ホテルに一人で待っているのが嫌ならまたスタッフと混じって働いても良いし?。

いや、そうなるとまた倒れてコンサートどころではなくなるな・・・。どうするコ・ミニョ?」


「コ・ミニョ?」

名前を呼んでも返事がない。そっとミニョの顔を覗き込むとスヤスヤと眠ってしまっている。


「たった五分で良いと言っていたのにもう眠るのか?。俺はお前のベッドではないんだぞ。

お前も眠れていなかったんだな。仕方ないもう少し俺の胸の中で寝ていいと許可してやる」

テギョンはミニョの寝顔を見ながら呟くと上着のポケットから携帯電話を出し電話を掛け始めた。


「俺だ、悪い打ち合わせの時間に遅れそうなんだ。先に始めてくれて構わないから」


「もう少し掛かりそう?。一時間くらいなら先に皆と食事に行ってくるからゆっくり帰って来ても大丈夫だ。練習室で待ち合わせにしよう」

シヌはそういうと電話を切った。

「テギョンヒョンから?」ミナムが聞いた。


「ちょっと遅れるからって。先に食事に行って来よう、テギョンが来たらすぐに始められるように。今日は何時までやるか分からないだろう」

メンバーは先に食事に行こうと練習室を出て行った。


ぐっすりと眠ってしまったミニョをそっと抱き上げベッドルームに向かった。ベッドに横たえると布団を掛けベッドに腰掛けたテギョンはミニョの寝顔を見つめていた。


「ベッドに一緒に寝るより隣にいてお前の寝顔だけを見る方が多いような気がするな」テギョンはフッと笑った。このままミニョが起きるまでそばに付いていたいと思った。打ち合わせにいかないとメンバーにも迷惑が掛かると思いミニョの額にキスをした。テギョンはベッドから立ち上がり名残惜しそうにミニョの頬を撫ぜベッドルームを出た。


テーブルの上にミニョ宛のメモを残しドアの向こうのミニョを思い浮かべながら部屋を出て行った。



打ち合わせの時間に遅れたテギョンは急いで事務所に向かい真っ直ぐ練習室に向かった。

メンバーはまだ食事から戻っておらず内心ホッとしながら必要な資料を出して読み始めていた。

ミニョの寝顔を見ながら思ったアジアツアー。今の国内のツアーなら留守にする日にちも少ない。


「一度出てしまえばこっちでの仕事が無い限り戻って来ないという事になるな。仕事で戻ってもすぐにまたツアーに戻らなければならないからこっちでミニョと会う時間を作るのも厳しくなりそうだ。あいつはそれを我慢できるだろうか?。

いや、あいつより俺の方が我慢できないかもな・・・」

ミニョが現れ自分にとってかけがえのない存在になってしまってからはいつも頭から離れない。


「あいつに出会ってから俺も変わってしまったようだ」

頭の中にさっきまで自分の胸の中で幸せそうに眠っていたミニョの顔を思い浮かべていた。



「ヒョン、まだかな?。珍しいね、もしかしてミニョと仲直り?」

食事から戻った三人の声がだんだん大きくなってきてテギョンは“仲直り”の言葉にピクンと反応した。


(仲直りだと?。もともと喧嘩すらしてないのに・・・。どうしてあいつらがそう思うんだ?)

テギョンは顎に手を当て考えていると勢いよく練習室のドアが開いた。


「テギョンもう良いのか?」

シヌの問いにテギョンは無言で頷いた。


「何、何?。ミニョとの事解決したの?」

ミニョの名前を出されテギョンは顔を上げ驚いた表情でミナムを見た。


「お前、何か聞いていたのか?」


「聞いてないよ。最近何となくヒョンが落ち込んでるように見えたけど今は全く表情違うし。なんか晴れ晴れとした顔してるよね、シヌヒョン」

シヌも笑って頷くとテギョンは口を尖らせ面白くなさそうにメンバーを見ていた。


「で、何でミニョと喧嘩したの?。教えてよ~」

ジェルミがソファーに座ったテギョンの横に来て腕を掴んでせがむように言った。怪訝な顔をしジェルミを見たテギョンは“喧嘩などしていない”ジェルミの腕を振り払い怒った顔をして練習室を出て行った。


呆気にとられた三人は顔を見合わせキョトンとしていたが、一斉に笑いだしいつものテギョンに戻ったと喜んでいた。







今回でこのテーマを終わりにしようと思い書き始めましたが結局ダメでした。

あと一話だけお付き合い下さい。

もしかしたらここで終わった方が良かったと思われそうな気がしないでもありません。

お越しいただきありがとうございます。


今回のテーマは短編で終われそうです。



ではお話に。




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ミニョはシヌに渡そうと買っておいたお茶の葉を持って出掛けた。いつもは嬉しくて弾むような足取りで向かう合宿所の道も今日はいつもと違って一歩一歩が重く感じられた。

皆に食べて貰おうと常備菜も準備したがテギョンに内緒で合宿所に行った事が分かってしまうと思い一度用意したタッパーを結局は自分の家の冷蔵庫に戻してきた。


「二度とオッパに内緒の事は作らないって誓ったのにもう破ってる。こんな私ではきっと嫌いになってしまいますよね」

ミニョは後ろめたくなりいつかは本当に呆れられて嫌われてしまうのではないかと思った。それでも今はまだテギョンの声を聞く勇気も無かった。


テギョンが自分の事を心配してくれているのは留守電に入れられたメッセージの声から充分伝わっていた。

最初は冗談のように怒った口調だったテギョンが今では連絡をしないミニョに“掛けて来ない理由が知りたいんだ”と問い掛けるような切ない声だった。自分勝手でどんなに心配を掛けているのかもわかっている。


(自分の気持ちを素直に言える自信が持てたら・・・)


道の途中で立ち止り頭に浮かんだ言葉を振り払おうと首を左右に振った。合宿所の坂が見える所でもう一度ミニョは立ち止ると気持ちを切り替えようと目を瞑り顔を上げ“いつものミニョになって”暗示を掛けるように自分に言い聞かせ坂を上り始めた。



シヌは約束の時間より早くからウッドデッキでミニョが来るのを待っていた。

ミニョが立ち止り何かを考えている様子もよく見えていた。今朝、テギョンに会ったがミニョの事に何も触れずに仕事に出掛けた様子からミニョが来ることを知らないようだった。


(ミニョもテギョンに言ってないのか?)


テギョンに内緒でミニョを呼んだのを少し後ろめたく感じたが昨日見掛けたミニョの暗く悩んだ表情を少しでも軽くすることが出来るのなら・・・ただそれだけだった。テギョンと違った形で支えてあげたいと今でも思っていた。

ミニョの様子を見ていた事に気づかれないよう椅子に座って待っているふりをした。


階段を上がってきたミニョは座っているシヌの姿を見て驚いた顔をした。


「シヌヒョン、ここで待っていて下さったんですね」ミニョがシヌの横に座った。


「そろそろミニョが来る頃だと思ってたった今出て来た所。今日はお天気も良いからお茶はここで飲む?。それとも中の方が良い?」

ミニョは外にしたいと言うと二人は一緒にキッチンに行った。ミニョは持って来たお茶を渡すとシヌは喜んで受け取ってくれた。

シヌが慣れた手つきでお茶を入れそれをミニョはその姿を見つめていた。


「ミニョと一緒に飲もうと思って用意していたお茶もあったんだけど今日はこっちのお茶の方がミニョの気分にも良いかなと思って。買って来たお茶はまた次の機会にしよう」

優しく微笑みながらミニョに話しかけカップをミニョの前に置いた。ミニョはカップを持ち上げまずは香りを楽しんだ。


「ジャスミンですね。匂いを嗅いだだけですごくリラックス出来ます」

ニッコリ微笑んでシヌを見た。

二人はそれぞれ自分のカップを持ってウッドデッキに上がり向かい合って座った。


「シヌヒョン、いつもありがとうございます。とっても美味しいです」

持って来たハーブティーを一口飲んで微笑んだ。


「喜んでくれて良かった。


ミニョ、元気が無いように見えるけどテギョンと何かあった?。

少し前に車の中からミニョの事を見かけて気になっていたんだ」

お茶を飲みながらさりげなくミニョに聞くとお茶を飲むことを止めミニョはシヌをジッと見て俯いた。


「言えない事ならこれ以上は何も言わない。


ただミニョの表情が気になったからもし誰かに言って気が楽になるならと思っただけだから。

最近テギョンの様子も気になって考え込んでる事が多いからミニョと何かあったのかと心配していたんだ。二人の事だから他人が口を挟むべき事ではないんだけど・・・」

ミニョはカップを置いて黙ったまま下を向いた。


「ごめん。余計な事を言っちゃったみたいだね。俺が言った事忘れてくれて良いから」

重くなった空気を換えようとシヌはわざと明るく言った。


ミニョが下を向いたまま小さな声で話始めた。



「オッパは何も悪くないんです。私のせいなんです。


シヌヒョンに恋人がいて・・・。もし、もしもですよ・・・・。その恋人がシヌヒョンの仕事の事を言ってきたらどうしますか?。気分悪くなったりしますか?」


「仕事の事って?、具体的にどういう事?」


「例えば・・・ドラマとかCMで女優さんと一緒に仕事をする機会がありますよね。そのお仕事の中でやるラブシーンを見たくないって言われたらどう思いますか?。やっぱりそんな事をいう恋人を嫌いになりますか?」

シヌはミニョの質問に答える前に最近のテギョンの仕事を考えた。一緒の時もあれば個々での仕事もある。細かい内容までは知らないとしてもお互いどんな仕事をしているかは分かっていた。


(最近の仕事で女性と一緒の仕事?。

CM以外にあったかな?。最近、テギョンはドラマの仕事も断っているはず。CMも社長に極力女性との仕事はしないって言ってると聞いたしどうしても断れないものだけはやっていたみたいだけど。そのMP3のCMだってミニョには全く問題ないはず。一体何を見たんだろう?)


「まず俺には今恋人がいないからそういう心配もないんだけど。

オファーを貰った段階で内容を聞いて自分が納得してやりたいと思った仕事であればそれは恋人がいてもやると思うよ。

オンエアーされたら必ず相手だって見るから事前にこんな仕事をするからとは説明しておくかな。

あくまでも仕事だと割り切ってるし。共演する女優さんやタレントさんが魅力的でも気持ちまではいかないよ。共演がきっかけで付き合い始めたり結婚したりする人たちもいるみたいだけどね。テギョンはミニョがいるからそれは心配しなくても良いんじゃないかな。

恋人が見たくないって言ったら・・・むしろ嬉しいかな。“焼きもちやいてくれてるんだ。俺の事を好きでいてくれてるんだ”って嬉しくなってもっと恋人を大事にしようと思うけど」

そんな事を言ってくれる恋人が今はいないからとシヌは笑っていた。


「シヌヒョンは嫌いにはならないって事なんですね」

ミニョの問いにシヌは笑って頷いた。


「テギョンはどうだろう?。元々音楽の仕事の方が好きだしCMも一人か俺たちと一緒が多いし。この前のMP3は仕方なく引き受けたんじゃなかったかな?。でもそれはミニョには何の問題もないはずだけどそれ以外でミニョが気になるような物はあった?」

突然テギョンと一緒に撮ったCMを持ち出されミニョはビックリしてシヌの顔を見た。明らかにあの女性はミニョだよねと念を押したようにも取れた。

顔が映ったのは一瞬だったはずでジェルミとシヌにはばれていないと思っていた。一番最初にミニョを女性だと気づいたシヌであれば他の誰よりも先に気づいて当たり前かもしれないと思った。ミニョは偶然テレビで見たテギョンのCMの話をポツリポツリと話し始めた。

黙って聞いていたシヌはミニョが話し終わるとミニョの顔を覗き込みながら話し掛けた。


「ソ・ミナssiとのCMか・・・。

確かミニョが帰ってくるだいぶ前に撮影されたものなんだよね。オンエアーされたんだね、あのCMの撮影が終わって偶然俺たち見る機会があったんだよ。その時テギョンはジェルミとミナムにからかわれて怒ったんだよ。

ミナムが“ヒョン、予行練習しようと思ってこの仕事引き受けたんだ”、ジェルミは“本番の時同じことしたらきっとミニョに怒られるね”って。テギョンは絶対にそんな事は無いと言ってたけどね」
笑いながら言うシヌにミニョはCMの内容を思い出し頬を赤く染めた。


「ミニョ、気が付いてるかどうか分からないけどテギョンの見せる笑顔はミニョの時とそれ以外の女性とは全く違うんだよ。

今度ゆっくり見比べてごらん。俺にはすぐわかるくらいミニョに見せる笑顔は本当に嬉しそうだから。仕事場ではなかなか見せない表情だよ。テギョンに言えば同じだって言いそうだけど。

ミナムの代わりをしていた時にも気がつかなかった?。ファンは凄く大事にしてるけど仕事場で会う女性には驚くほど無関心だよ」

自分に見せる表情が違うと言われミニョは少し嬉しくもあり恥ずかしくなった。


「その事で悩んでいるなら正直にテギョンに言ってみたら。テギョンはミニョの考えてる事を知りたいと思っているし正直に話してもきっと全部受け止めてくれるから。気分悪くなったりしないと思うよ。

電話じゃなくてちゃんと顔を見て話した方が気持ちが伝わるよ」

ミナムでいた時のようにミニョの頭を優しく撫ぜ励ました。ミニョは“頑張ってみます”と自信がなさそう言って頷いた。

シヌに話を聞いて貰い少しは元気が出たと言ったミニョはシヌの仕事の時間が迫って来たので合宿所を後にした。

家に帰ってもずっとテギョンと電話をしていなかったのにどう言って話を切り出して良いのか分からなかった。


「今更、オッパに電話をして“何の用だ”って言われたら・・・。電話にも出てくれなかったら・・・」

何度も電話を掛けるようにとメッセージを残してもらっていたのに一度も掛ける事が出来ず、ミニョの心の中は不安で一杯だった。


(上手く自分の思いが伝えられるでしょうか?。)


ソファーに座って携帯電話を見つめてもなかなかその先の行動が取れなかった。

時間だけがどんどん過ぎ、結局テーブルの上に電話を置いてベッドに入った。

目を瞑り眠ろうとしてもテギョンの怒った顔しか浮かばず眠ることが出来なかった。


朝ぼんやりとしながら仕事の準備をしていつものように孤児院に出掛けた。仕事の合間も椅子に座ってぼんやりしていると子供たちが心配そうに話しかけてきた。

笑顔を見せその都度“何でもないよ”と返事をするものの子供たちが離れて行くと大きな溜息しか出なかった。


「私が電話をして、オッパは出て下さるでしょうか?。出て頂けなくても仕方ありませんね。私がオッパに同じことをしているんですから・・・」

空を見上げ呟くとミニョの目から涙が出て来た。ここでは泣いてはいけないと子供たちに気づかれないよう下を向いて涙を拭った。


夕方仕事が終わると重い足取りでバス停まで向かって歩いた。今のミニョの気持ちを表すように前を向いて歩くことが出来ず下を向いて歩いていた。前から歩いて来る人に何度かぶつかりそうになりその都度頭を下げ謝っていた。

同じことを何度も繰り返している自分が情けなくなりその場に立ち止り泣き笑いしていた。


「このまま消えてしまいたい・・・」そう呟き再び歩き始めた。




「落し物でも探しているのか?」

留守番電話でしか聞いていなかった声のする方を振り向くとそこには青い車にもたれたテギョンが立っていた。ミニョと目が合うとサングラスを外して真っ直ぐミニョの顔を見つめた。

予想もしていなかったテギョンの姿に言葉も出ず、慌てて今来た道を戻ろうとするミニョの手首をテギョンは思いきり掴んで引き寄せた。