ウェンガー先生の講演 | pancho's diary

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こんにちは。
よろしくお願いします!

どうも、こんにちは。

昨日、香港大学の教育学部が主催するEtienne Wenger-Trayner先生の講演会へ行ってきました。
Wenger先生と言えば、
 Community of Practice(実践共同体)
 Social Learning Theory(社会的学習理論)
で有名な方です。
香港はこういう著名な方々が時々来ていただけるので、本当に感謝しています。
(というか著名な先生方も香港にはたくさんいらっしゃいますし)

昨日の講演では
『Learning in Landscapes of Practice: New Developments in Social Learning Theory』
と題して、Social Learning Theoryのこれまでとこれからの方向性についてお話しされていました。

前半は主に例を提示しながらのSocial Learning Theoryのお話でした。
教科書などでは理解していましたが、もっとクリアに理解することができました。

そして、最後にSocial Learning Theoryについて下記の通りまとめていました。

Learning is Social Experience of...
学習は次の社会経験のことである

Meaningfulness ⇒ Meaning drives learning
意味のあること ⇒ 意味は学習を推進する

Practice ⇒ Practice is where knowledge lives
実践   ⇒ 知識は実践の中にある

Identity ⇒ Learning transforms identity
アイデンティティ ⇒ 学習はアイデンティティに変容する


これをぱんちょは日本語教育の現場でどうなっているのか考えてみました。

意味のあること…
ずっとぱんちょが叫んでいるのですが、日本語教育の場合、すごくドリル練習や形を覚えたり、練習することばかりに焦点が当てられすぎていて、それをいつ使うのか、何のために使うのか軽視されがちな気がします。特に、学習者にとってそれを学ぶことで何が言えるようになるのか結びつかなければ、学習者の身近なものにはなりませんね。もっと初級からでも自分のことを表現するような活動を取り入れてもいいんじゃないでしょうか。

実践…
それで、やっぱり実践が伴わないとだめですね。昨日のウェンガー先生の話を聞いていて思っていたのは、教室内の学習者同士の実践でも十分学びが生まれるのではないかと思いました。日本語と言うと、すぐに日本語母語話者との話し合いとなりがちですが、最近学習者にインタビューをしていると、学習者同士でも十分日本語でやりとりし、それに対して「秘密ごとを話す」や「単に話していておもしろい」といった独自の意味を見出していることがわかりました。その学習者曰く、最初は少し恥ずかしかったけど、普通に話しているとそれが当たり前になったそうです。そういうコミュニティーの創出で、海外でも十分に実践の場を創出できるのではないでしょうか。意外と教師は「母語話者と話す」と言うことを意識していますが、学習者にとってそれはそこまで重要じゃないのかもしれないです。

アイデンティティ…
そして、学んでいると、それがすべて学習者の個性として表れてくるんですよね。
先日お話ししたスピーチコンテストの2位の学習者も、日本語を「成長させてくれるもの」と認識していて(詳しくはこちら)、まさにそれと一致するのかなと思いました。今、いろいろな学習者にとって日本語学習はどういうものなのかインタビューをしているのですが、それぞれおもしろい考え方を持っていて、いつも勉強になります。そして、それぞれの学習者の考えがおもしろいぐらいに多種多様なんです。そういう学びの場を創出することが日本語教育でも求められているのかなぁと思います。

そして、Wenger先生はまとめとして、
これからのSocial Learning Theoryはアイデンティティの時代に入るといい、学習者のアイデンティティだけではなく、教師自らのアイデンティティが重要になってくるとのことです。ただ単に知識を教える教師ではなく、なぜそれを教えるのか、どのような実践を目指すのかなど考え抜いた教師が学習者にも強く影響を与えるそうです。このあたりの話、今早稲田大学の細川先生がおっしゃっている「私はどのような教育実践をめざすのか(詳しくはこちらで)」と似ているところがあるなと感じていました。

また、ぱんちょ自身が今携わっている勉強会も権威ある人や知識を持った人を崇め、その人からの一方的な知識伝達になるのではなく、知識を受け取り、それをみんなで一緒に対話をしながら、さらに深めていくことが重要なのではないかと思い、今実践しています。そんなわけで、勉強会では香港内・世界のいろいろな参加者が意見交換できる場を創造できるように、インターネット回線を駆使し繋がろうとしています。

そういえば、その勉強会、ついに明日開催です!

$pancho in hong kong

今回の勉強会では、カナダトロント大学有森丈太郎先生に話題提供をしていただき、
みんなで「継続学習を支援する―教育機関・教師間のつながり」についてみんなで考えたいと思います。みんなで考えることを目的としていますから、世界中の参加者(アメリカ、カナダ、韓国、マレーシア、エジプト)の先生方が香港会場とつながり、意見交換をします。その後5月12日には時間を変え、今度はヨーロッパとアジアの先生方で意見交換をする予定です。

USTREAMで生中継される予定です(録画保存もします)ので、お時間の都合がよろしければぜひご覧ください!


日  4月29日日曜日
時間 11:00AM~1:30PM(日本時間)
http://www.ustream.tv/channel/hkuspace-benkyokai からネット配信!
(詳しくはこちら

なんか宣伝になってしまいましたね…。

ではでは、また明日(本当にいろいろな人に見てもらいたいです)


そういえば、自分のことを表現する教材なのですが、

Lave & Wengerの正統的周辺参加についてお詳しい大阪大学の西口先生が最近出版された下記の教材や

NEJ:A New Approach to Elementary Japanese <vol.../西口光一

¥1,995
Amazon.co.jp

http://nej.9640.jp/で教材の中身など見ることができます。)

くろしお出版から出ている下記の教材などが

わたしのにほんご - 初級から話せるわたしの気持ち・わたしの考え/杉浦千里

¥1,890
Amazon.co.jp

いいのかなと思ったりします。
こういう自分のことを表現するような教科書・教材がどんどん出てくるといいですね。

さてと、今日はこんなところで。