レクリトワール:優雅な文具箱
「レクリトワール/Ecritoire」。
フランス語らしい、美しい響きの言葉。
これは「文具箱」という意味の言葉であり、「インクスタンド」と訳されることもあります。
「Ecritoire de Porcelaine」
(陶器のレクリトワール)
プリント 1745年頃
from V&A Collection
恐らくはインクスタンドがまず在り、その周囲に小物入れのようなお皿がつき、やがれそれを格納するような箱が考案され、ひいては文具全般を収納する箱をそのように呼ぶようになったのではないでしょうか。
そして、書き物をするスロープ状の台までが上手く組み込まれるようになってゆきます。
このような箱は英国でもみることができ、ライティング・スロープ、もしくはライティングボックス、ステーショナリーボックスなどと呼ばれています。
The Love Letter by Jean-Honoré Fragonard(1732-1806)
主として筆記具をおさめた携帯用の箱は、古代よりあらゆる文化において使われてきました。
ただ、フランスのレクリトワールや英国のライティングボックスのように、高度な技巧と工夫をこらしたものが富裕層を中心に多く使われだしたのは18世紀頃からといわれています。
また、同じような言葉に「Escritoire/エスクリトワール」がございます。
こちらはもう少し家具的な要素が強く、ビューローの一種の書き物机を指すことが多いようです。
レディスエスクリトワール
19世紀フランス
たとえばこちらはルーブル所蔵の、マリーアントワネットのレクリトワール。
蓋裏に日本の蒔絵が嵌め込まれているようにも見えます。
凝ったレクリトワールを所有することは、特権階級の愉しみのひとつであったのでしょう。
パンカーダには、19世紀フランスのレクリトワールがございます。
http://pancada.net/item/subcategory_a/post_1691.html
贅を凝らした逸品、詳しくご説明いたしましょう。
まず、仕上げは黒塗装にブラス(真鍮)象嵌が施された、ナポレオン三世時代より人気の意匠。
ポイントでマザーオブパール、ターコイズカラーのエナメル、そしてブール象嵌と思われるものが施されており、華やかな印象です。
小さな鍵を廻して開ければ・・・
そこは赤いレザーのスロープと、バーズアイメープルで飾られたレターラック。
レターラック側は、左右2か所のインク壺に、中央にはペン入れ。
ペン入れは二重底で、片側を押せば上のトレイを外すことができます。
インク壺は開けることもできます。
小さな蓋がついた小物入れもございます。
下部のスペースは書類や手紙などを仕舞っていたのでしょう。
ちょうどA4サイズが収納できます。
格調高く優雅なデザインのレクリトワール。
ディスプレイとしてはもちろん、大切な書類を仕舞う唯一無二の文具箱としてお手元においてみてはいかがでしょうか。
このレクリトワールはパンカーダのウェブショップにて掲載中です。
こちらからどうぞご覧ください。
*古いものですので、インク壺や小物入れの蓋は少し外れにくい場合もございます。
*ご不明な点はどうぞお問い合わせください。
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