6月の蜜蜂の群れは銀のスプーン
マザーグース(ナーサリーライム)に、こんなものがあります。
A swarm in May is worth a load of hay;
a swarm in June is worth a silver spoon;
but a swarm in July is not worth a fly.
5月の蜜蜂の群は
干草いっぱいの価値がある
6月の蜜蜂の群は
銀のスプーンの価値がある
7月の蜜蜂の群は
ハエほどの価値もない
'Common humble bee', from The Naturalist's Library,
vol. 38 Entomology, edited by William Jardine
(Edinburgh, W.H. Lizars, 1840)
英国の田舎の女性達が歌った詩からきているものともいわれるこの詩。
蜜蜂が活躍するのは5月から6月、春から初夏にかけての花盛りに蜜を集めます。
蜂蜜を集める女性たちは、蜜蜂の群れをみて、甘い蜂蜜を作ってくれている蜂たちは大した価値がある、と歌っていたのでしょう。7月になり、蜜集めのピークを過ぎてしまえば、もう価値はない・・・と、かなり現実的な割り切り方となっているところが微笑ましく感じます。
さて、この詩で今回注目したいのは「銀のスプーン」。
干し草やハエなど現実的な例えに対し、この言葉だけは異質なように思えます。
「Born with a silver spoon in one’s mouth/銀のスプーンをくわえて生まれてきた」という言葉があるように、ヨーロッパにおいて銀のスプーンは特別なもの。
洗礼式のあとに親族からスプーンを贈る習慣があり、上流階級ではそれが銀のスプーンであることからうまれた言葉のようですが、はじめて食べ物を口にするときに銀のスプーンを用いると一生食べ物には困らないとも言われています。
Christening of Victoria, Princess Royal
BY Charles Robert Leslie 1841
from Royal Collection
こんなことから、「小さいけれどとても価値があるもの」ということを伝えるために、「銀のスプーン」という言葉が使われたのかもしれません。
パンカーダには、フランスから来た銀のスプーンがございます。
エレガントなデザインが美しいティースプーン。
プロヴァンスの街、アヴィニョンの紋章をもつスプーン。
小さいけれど、特別な、価値のあるもの。
6月に蜜蜂を見かけたら、ヨーロッパの言い伝えやマザーグースの詩と共に、銀のスプーンを思い出してみてください・・・。
*銀のスプーンはサイト未掲載です。詳細はお問い合わせください。
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