ステンドグラス特集 Vol.9 夏は来りぬ
1260年頃からある英国の民謡に
「Svmmer is icumen in/Summer is a-coming in/夏は来りぬ」
という歌があります。
世界最古のカノン(輪唱)とよばれる、素朴で親しみやすい輪唱曲。
このタイトルからもあるように、古英語では
「U」と「V」はしばしば混合されがちだったようです。
パンカーダにある19世紀のステンドグラス
。
中央に描かれているのは、
花冠を被った乙女と「SVM」「MER」の文字。
つなげて読めば「SVMMER=SUMMER」・・・!
そう、これは夏の女神を描いたステンドグラスなのです。
ギリシア神話で夏の女神といえば、
時間をつかさどるホーライのなかの1柱、アウクソー(Auxo)。
生長を象徴する女神でもある彼女は、
しばしば髪に花を飾ったヴィジュアルで表現されています。
ステンドグラスの乙女がもつ、
花や葉で飾られた、初夏の風になびく柔らかな髪。
伏し目がちな表情のなかにも、わずかに微笑みだしそうな口元。
少女から大人の女性になりかけたような雰囲気は、
まさにこれから夏を迎えるようにも見えます。
深い青に囲まれた、初夏の女神の控えめな微笑みを、
貴方のものにしてみませんか?
by N