ステンドグラス特集・Vol.7 王の肖像
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Stained Glass
~Kaleidoscope of time~
時の万華鏡・ステンドグラス
Vol.7 王の肖像
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今日は珍しい形のステンドグラスをご紹介いたします。
19世紀の終わりころに作られたエナメル絵付。
絵柄は「Kings Head」。
顎鬚のりりしい男性が描かれています。
果たして、これは誰なのでしょうか?
良く見ると、この男性には顎鬚のほかに
もうひとつ、大きな特徴があります。
それは、顔の周りをうめるフリルの襟。
この襟は英国で16世紀に流行ったもの。
有名なところでは、エリザベス1世が身につけていたことで、
このようなスタイルを「エリザベス・カラー」とも言います。
…もっとも、この「エリザベス・カラー」は現代では
怪我をしたペット用の、傷口を舐めないための道具として呼ばれているのですが。
16世紀、エリザベス女王が生きていた付近に王となった顎鬚の男性と言えば・・・
エリザベス女王が亡くなった後に王位を継いだ、ジェームス一世。
そう、このステンドグラスはジェームズ一世の肖像画。
チャールズ・ジェームズは1566年6月19日、
スコットランド女王メアリーの第1子としてエディンバラ城で生まれました。
わずか1才でスコットランド王となり、そして1603年にエリザベスが
死去すると、イングランド王となりました。
スコットランド出身のため、イングランドでは冷遇された
かわいそうな王でありましたが、本をよく読み、
欽定訳聖書の編纂を命じたことでも知られる学識ある統治者でもありました。
ただ、彼は魔女の存在とその超自然的能力を信じ、
自ら執筆したという『悪魔学」Daemonologieという本まで発刊しています。
ちょっと変わっていたのかもしれません。
(・・・変わっていない王などいない、という話もありますが)
ちなみに、「Kings Head」(王の肖像、とでも訳せばよいのでしょうか?)という
名前のパブは英国にはかなり沢山あります。
多いのはどうやらヘンリー八世。
ジョージ三世も人気があるようです。
恐らくこのステンドグラスも、どこかの古いパブに飾られていたものかもしれません。
ご存知の方も多いかと思いますが、
英国のパブには入り口がふたつあるものが多くあります。
片方がパブリック・バー。
片方がサロン・バー。
内部はつながっているのですが、なんとなく
サロン・バーのほうがインテリアが凝っていて、
床には絨毯がしかれ、ゆったりとしたソファやチェアがあり、
壁のクロスも雰囲気あるものになっています。
これは、かつては階級によって入り口が別々だったことに由来しています。
エナメル絵付けのステンドグラスは高級品。
きっと、「SALOON」バーの窓や壁を飾っていたことでしょう。
肖像画とはいえ、このジェームズ一世も
長い時の移り変わりを見てきたに違いありません。
決して色褪せることのないエナメル絵付けの王の肖像。
その双眸を傍らにおき、歴史を紐解いてみるのはいかがでしょうか。
パンカーダでジェームス一世がお待ちしております。
どうぞこちら からご覧ください。
by N