やぁ~。とっても面白かったですよ。展示解説。

 

今日もお立ち寄り下さいましてありがとうございます。新聞取ってないのに、折り込みチラシには年甲斐無くワクワクと踊らされておりますねぎねぎです。

 

5月19日は徳島市にある文化の森総合公園内の県立文書館に行ってまいりました。

県立文書館では第68回企画展「折り込みチラシに見る徳島の30年展」が開催されておりまして、会期2日目の4月24日にも展示物は拝見させて頂いておりました。

 

 

 

展示だけでも面白かったので、解説も聴講に行くか迷ったのですが、行ってよかった!たいへん面白い解説を伺うことができました。

 

13時半からの解説は文書館館長さんが、主に2015年に新聞に折り込まれたチラシについてお話して下さいました。

講座室には・・・10人前後でしょうか、日曜日の展示解説の割には少なく感じました。

ただ、展示室も狭いので参加してお話を聴くには10人前後で丁度良い様に思います。最初は皆さん遠慮してか後ろの方の席に座られていましたが、館長さんの「(プロジェクターで)拡大表示はしますが、細かいところもあるのでどうぞ前の方へ」とのことで、皆さんの後に続いて私も前方の席に座り直して拝聴しました。

 

文書館は収集した資料を閲覧出来たり、多分館外への貸し出しなども行っていると思いますので、図書館と似ていると思いますが、「本」の形態になった資料を中心に保管している図書館に対して、文書館ではあらゆる書面・印刷物・信書を収集保管しているそうです。

 

これまでの「企画展」や「逸品展」では、「絵はがき」「学校の公文書」「古写真」「県報(広報紙)」「災害記録」「引き札」などの印刷物・写真・信書や公文書が展示されて来ました。

 

皆さんは「引き札」ってどんなものかご存知でしょうか?

 

 

 

 

引き札は江戸から明治・大正期に商店などが開店・売出しの披露や商品広告のために配ったちらしのことで、配布方法こそ新聞折り込みとは違っていた様ですが、上でpickした本の様に広告デザインや美術資料として歴史的価値があるものとして収集されている様です。

 

今回の折り込みチラシも、美術資料としての価値はさておき、紙媒体の広告物という点では通じるところがありますし、今回の解説を伺ってとくに実感したのですが、「時代背景」がとてもよく顕れているんですよね。

 

ほとんどの家庭では折り込みチラシって、日々のお買い物をオトクに済ますには・・・とか、たまには奮発して贅沢を・・・といった目線で見て、いつまでも残してても仕方ないことですし、リサイクルに出したり梱包に使ったりしているかと思います。

そんなチラシでも、時間が経ってから改めて振り返ると、懐かしさとともに時代背景を再認識したりして幸せな気持ちになりました。

 

文書館では開館当初から、折り込み広告も収集してきたそうです。江戸から明治・大正期の「引き札」が現代では歴史的資料として注目されるのであれば、新聞折り込みチラシも収集していけばいずれは貴重な資料に・・・。とのことで開館以来30年あまり収集を続けているのだそうです。

 

こういう資料館って、個人のコレクターの収集物をご遺族の方が寄贈されたり、学芸員さんたちが旧家から譲り受けて収集されているものだと思っていましたが、文書館自身で日々「リアルタイム」でチマチマと収集されていたという事実がとても面白く、なんとも「身近な存在」に感じました。

 

文化の森総合公園は1990年にオープンしていますので、私は22歳になった年です。

そこからおよそ30年間の折り込みチラシが今回の展示テーマなので、年齢的にも「自分史」でもあります。

自分の買い物、我が家の買い物を自宅に届く広告で見て来た歴史がそのまんまのストライクゾーン。

 

館長さんの話によると、こうした収集作業そのものはとても簡単なものだそうで、日々折り込まれた広告を封筒に入れ、封筒には日付を記載するだけ。それだけなのだそうです。

 

集めるのは簡単なんですねぇ。ところが・・・。

折り込まれるチラシをもれなく集めると、年間4箱になるそうです。

そうなると・・・・?

そうです。30年前って歴史資料としては「若者」かもしれませんが、毎日折り込まれる紙媒体は120箱にもなっている訳ですね。

 

膨大な資料です。30年経ったから、そろそろ企画展やりましょうかって準備されたそうですが、おそらく展示室で展示出来るチラシは・・・ねぎねぎ見立てですが100枚未満?詰め込んでも100枚そこそこなんじゃないでしょうか。

(閲覧者にページめくりさせる展示ならもっと見せられるかもしれませんけど)

 

何よりただ数だけ多く展示してても、見る方が情報過多で大変。かといって準備期間や職員の手間からも所蔵するチラシ全ての中から厳選するのは現実離れレベルの大変さ。

そこで1990年(文化の森で開館)、1995年、2000年、2005年、2010年、2015年、2020年の箱(それでも計算上は28箱?)を職員で担当分けしてそれぞれの職員さんが担当範囲から厳選されたそうです。

 

2015年分を担当された館長さんは「プレミアム商品券」や新聞配達業者さんの「独居高齢者向け見守りサービス」について取り上げたとのことで、また、コロナ禍でアルバイト先のお店が閉店してしまった経験をされたという新人職員さんは2020年の折り込みチラシの選択を担当されたそうで、「2020年のチラシに見る新型コロナウィルス感染症の流行」というテーマでお話して下さいました。

 

 

チラシで感染対策をアピールされる様になったのがいつ頃からなのか?

スーパーのチラシでは「工場見学中止」「タイム-サービス休止」「混雑時間帯」など早い時期からチラシ上でも対策が謳われていた様です。

 

国内で新型コロナウィルス感染症感染者が初めて確認されたのがこの年の1月15日で、その後の「マスク転売禁止」や「緊急事態宣言」「三密」の由来など新型コロナ感染症にまつわる社会の動きとチラシ内容の変化についてのお話はとても興味深かったです。

ほんの数年前のことなのにどこか懐かしいような思いもあります。それだけ社会現象というか世の中が大きく変わったということなのでしょうかね。

 

 

更に職員さんの解説によると、チラシ上では「コロナ」と明記されたものは殆どみられなかったそうです。

「バーチャル旅行」「こんな時だから」という言葉が社会を反映しているわけですね。

 

新聞に折り込まれるチラシですが、新聞本体の文体とことば。チラシが用いる文体・ことば。大きく違うこと改めて認識できました。

 

手話や点訳を初めて、日本語や言語・ことばのおもしろさ日々実感しています。

チラシ(の音読)って実は視覚障がい者支援(同行援護従業者養成)でも勉強するんですよ。

ただダラダラとチラシの内容を隅から隅まで読み上げれば良いということではなくて、お店が主張していること、要支援者が求めている情報を把握しながら伝えて行く必要があるので、養成講座を受けた時には「チラシの読み上げ」は奥が深くて難しいと思いました。

 

今回の様な「チラシ」がテーマの展示について、視覚障がい者の方がどんなところに興味を持たれるのか、同行援護従業者がもし支援事業でチラシの展示を手引き案内されたら、どういったところをかいつまんで案内されるのか、興味深いところです。

 

お二人の講話で45分くらいだったかな?そのあと展示室では館長さんの説明のほかカメラ担当の職員からも説明がありました。

展示室には5年刻みで厳選された年代別チラシのほか、「おもちゃ」「携帯電話」そして「カメラ」のチラシもテーマに展示されていて、カメラについてはフィルムカメラからデジタル一眼、コンデジと各世代のカメラやメディアの実物も展示されています。

どうやらその実物カメラは文書館で資料の撮影保存に使われてきたカメラらしい。

なるほど・・・。カメラも「遺品」とか「コレクションの寄贈品」ではなく文書館の備品として使っていたものだったのですね。

 

カメラ本体もチラシも。寄贈や買い取りじゃなく、自らの「まかない」で集められた結果の「展示品」というのは、他の資料館、展示施設ではあまりやっていない様な、とても興味深い展示だったと思います。

 

今回19日の展示解説は2015年と2020年の担当からの解説でしたが、期間中残り2回の展示解説では他の年や今回展示室で説明頂いた、カメラ担当職員さんの詳しい解説も予定されている様です。

 

 

 

展示室での展示(観覧無料)は8月4日まで。残り2回の展示解説は6月1日と7月26日の予定で13時30分からです。

 

 

皆さんの暮らしにとぉ~っても身近な「チラシ」の展示。お時間がありましたら是非行ってみて下さいね。

きっと素敵な「再発見」があると思います。

 

今日もここまでおつきあい、ありがとうございました。