あの人がいた頃、一緒に見た映画を見ながら寝たせいか、フンワリ夢を見た。
私はアーチ形の階段に横になっていて、その頭の方に、あの人は座ってた。
頭の側にいたから、私にはその顔も表情も見えなかったけど、いつも履いてたジーンズやシャツや、そこにいるという存在感が私を安心させた。
私は、とても安心してた。
あっという間に夢は終わって、何度も何度も、違う夢を見る。
自分が死んだり、家族が死んだり、誰かがいなくなる夢を、何度も何度も見る。
何度目かの夢で、私は真っ暗な部屋のベッドで眠っていた。
暗闇の中に誰かが立っていて、私を見ている。
それは父親ではなかったのだけど、夢の中では私は、その人を父親だと思っている。
その人は、「大丈夫、眠り過ぎだと怖くなっているかもしれないけど、まだ二周したばかりだから。安心して眠りなさい」と言うと、行ってしまおうとする。
ちょっと待って!行かないで。ここにいて。
そう思うのに、声が出ない。どうしても声が出ない。それは、いつのも金縛りとはちょっと違う。
せめてこの手が少しでも動けば。そうすれば起きているときづいてもらえるのに。
待って!お願い!行かないで。一人にしないで。お願い。ここにいて。
っ!!
声にならない自分の声で目が覚めた。
ずっと言えなかった。誰にも言えなかった。言いたいということにさえ気付けなかった。
私はずっと、言いたかったのかもしれない。
ずっと、ずっと、言いたかったのかもしれない。