ネタがないので過去作です。


それでは、どうぞ。
















































由)渡邉さん、放課後にみんなのプリント集めて私の机に持ってきてくれないかな?

理)分かりました。

由)ありがとう、お願いね。



真面目で礼儀正しい子には、ついつい頼ってしまう。教師は生徒に平等に接しなければいけないのは分かってるけど、やっぱり聞き分けのいい生徒の方が私は好き


そしてその代表と言えるのが、真面目で程よく陰キャの渡邉理佐という生徒だ。彼女は根は極度の陰キャだが、そのビジュアルの良さから一軍女子達に一目を置かれている



美)お疲れ由依ちゃん!

由)おっ、うん。



なんてことを考えていたら、いつの間にか職員室に戻ってきてたみたい。隣のデスクのみぃちゃんはガムシロップがアホほど入ったコーヒーを飲みながら、先日行われた数学のテストの採点をしていた



由)丸つけ大変そうだね。

美)そうやなぁ、、由依ちゃんはもう終わったん?

由)え?終わってるわけなくない?

美)うん、そうやろうなとは思ってたわ笑。



そう言いながらペンを走らせるみぃちゃんには本当に尊敬しかない。途中で『土生ちゃんまた赤点やわ〜』なんて言いながら優しい笑顔浮かべていて、なんだかこっちまで心がほっこりする



美)あっ、

由)ん?



みぃちゃんが手を止めて凝視していたのは、渡邉さんの回答用紙。字が綺麗に書かれていてとても見やすい。流石真面目さんって感じ



美)渡邉さんってほんまに頭ええよな。ざっと見た感じ、このテストも100点や。

由)だよね。国語も毎回90点代か満点だもん。

美)…なぁ由依ちゃん、渡邉さんの噂って知っとる?

由)渡邉さんの噂?なにそれ笑。



その話を切り出した途端、みぃちゃんの顔が少し強張った気がした



美)渡邉さん、中学生の時にっ…、



ガラガラガラ



瑞)失礼しまーす!みぃちゃん先生いますかー?

美)あっ、土生ちゃん!ごめん由依ちゃん!また後で言うな?

由)りょーかーい。



そう言い残して、みぃちゃんは颯爽と土生ちゃんのところに行ってしまった。仲良いよね、あの2人。早く付き合えばいいのに。いや、それはダメか


てかみぃちゃん何言おうとしてたんだろ。渡邉さんの噂?あの真面目な渡邉さんに一体どんな噂があるんだろう。まぁなんでもいいや、私は真面目な生徒の噂ならどんな物でも構わないし



由)…丸つけやろ。



ーーーーーーー



放課後.



結局、みぃちゃんから渡邉さんの噂を聞くことができずに放課後になった今はホームルームが終わり、自分のデスクでテストの採点ををしながら、渡邉さんがプリントを持ってきてくれるのを待っている



由)全然終わんないし。

理)小林先生。

由)うぉっ!びっくりしたぁ、、



終わる気配のない採点にイライラしていると、いつの間にか渡邉さんが来てくれていた。お互いの顔の距離が近くて、少しだけ体が熱くなる



理)お疲れ様です、プリント持ってきました。

由)おっ、ありがとう。助かったよ。

理)いえ、じゃあ私はこれで。

由)あっ、待って!

理)はい?

由)これあげる。みんなには内緒ね?



私はデスクの引き出しにストックしていた桃味の飴を渡邉さんにあげた



理)ありがとうございます。飴好きなんですか?

由)いや、別に特別好きってわけじゃないんだけど、授業がない時間に眠たくならないように常に持ってるんだ。

理)そうなんですね、なんか可愛い笑。

由)っ////、



そう言いながら小さく笑う渡邉さんに、不覚にもキュンとしてしまった。長い前髪から見える目が細くなって、少しだけ上った肩、こんな渡邉さんを私は今日初めて見た



理)いただきます。

由)あっ、うん。



パクッ



理)んっ、すごく美味しいです!

由)でしょ?良かった〜喜んでもらえて。

理)…ほんと、、マジ美味いわ、

由)え、、、



渡邉さんが私から目線を逸らしたと同時に呟いた言葉は、とてもじゃないけど彼女の『真面目』という看板がグラつくような口調だった



理)あっ…じゃあ私帰りますね?飴、本当にありがとうございました。

由)え、あっ、、うん。こちらこそありがとね?

理)………では。

由)気をつけて帰ってね。



逃げるように帰ろうとする渡邉さんの後ろ姿見て、不意にみぃちゃんが言いかけた噂の話しを思い出した。それを思い出したと同時に、私の体は勝手に動いていて…



由)待って渡邉さん!

理)っ、、



身勝手に渡邉さんの手首を掴んで、帰るのを拒んでいた



理)…どうしたんですか?

由)ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、向こうの空き部屋で話さない?



こんな断られることが確定してる提案をする程、今の私は教師らしからぬ行為をしてる。ただの噂…ましてやその内容なんて全く検討もつかない


だけど…何故かこの時だけは、気にならずにはいられなかった



理)、、、、、、いいですよ。

由)ありがと、じゃあちょっと行こうか。



私は渡邉さんが持ってきてくれたプリントを乱暴に置いて、今はほとんど使われてない空き教室の扉の鍵を開けた



ーーーーーーー



空き教室にて.



この部屋は極端に狭くて、そこそこ散らかっている。無駄に大きいソファーもあって、ただの物置にしとくには勿体無いなって思う



理)学校にこんな部屋あったんですね。



そう言いながら、渡邉さんは飴を舐めながらソファーに深く腰掛けた。ここに来て少しだけ渡邉さんの雰囲気が変わったのは、私の気のせいってことにしとく



由)ごめんね、呼び止めちゃって。

理)…。

由)ちょっと聞いただけだからあんまり知らないんだけど、渡邉さんってなんか、、その…噂?みたいなのがあるの?

理)っ、



多分不都合な事があったんだと思う。この話をした瞬間、彼女の顔は怒っているような、悲しいような表現を浮かべた



由)別にいえない事だったら言わなくていいよ!ほら、私は担任じゃないし。

理)…。

由)無理に聞こうなんて思ってないからさ!

理)………私が、、、

由)ん?

理)もし私が、少年院帰りだって言ったら…先生は私を見捨てる、?

由)、、は?、



思いもしなかった事に、つい言葉を失う。この部屋に流れているなんともいえない空気は、まるで私たちを飲み込んでしまいそうなほど埃っぽい



理)中2の時、友達を半殺しにした。そのせいで…今はもう親とも縁が切れてる。

由)…。



そう俯きながら苦しそうに言う渡邉さんに、私は思わず胸を締め付けられた。でも多分、私は彼女に同情とはまた違う感情を抱いてしまったんだと思う



理)怖いんだ、、、また誰かに化け物を見るような目で見られるのが…、

由)渡邉さん…、

理)…えっ、



ギュッ



理)せん、、せ、?

由)苦しかったよね…ごめんね、

理)っ!、



気づいたら、ソファーに小さく座る渡邉さんのことを優しく抱きしめていた。きっとこれが同情とは違う感情の正体。壊したくない、離したくない…この子を守りたいと、そう心の底から思えた



由)全部教えて?私は渡邉さんを知りたい…渡邉さんの全てを包み込める存在になりたい。



彼女が『真面目』という仮面を被っていたことによる驚き、彼女のぽっかりと空いた心の穴を埋めるという覚悟、彼女を愛したいと思う欲望


私の心がこんなにもグチャグチャになっているのは、間違いなく彼女のせいだ



理)…耳にはピアスの穴が空いてる。一個じゃない、沢山。

由)かっこいいじゃん。

理)……腕にはタトゥー入ってるよ?

由)だから一年中長袖だったんだね。

理)体にはっ、、傷跡がいっぱいある、

由)それはちょっと勲章っぽい笑。

理)こんな私でも、、、受け止めてくれますか、?

由)当たり前じゃん。こんな魅力的な人、もう一生出会えないかも笑。

理)っ、先生!、、



これが本当の渡邉理佐だったんだね。真面目で陰キャな私の好きなタイプとは大違いの彼女。そんな彼女に心惹かれるなんて、人生何が起こるか分かんないな



理)好きだ、

由)ちょっ/////、急にはやめてよ////////、、

理)え?先生こんなんで照れるの?笑。



舌を出しながらちょっと悪そうに笑う渡邉さんに、また心臓がうるさく鳴る。しっかり舌ピアスも開けてるのも、なんかいいなって思っちゃった



理)へへっ、かわい。

由)揶揄うな!////、

理)怒らないで?



この先、理佐と見る未来はどんな物語になるかな?少なくとも、私はずっと飽きることは無いと思う



理)私が色んな景色を見せてあげる。

由)渡邉さん、、

理)理佐がいい。ね?由依。

由)り、理佐…好きっ///////、

理)ふふっ、嬉しいなぁ。



私達はこの殺風景な部屋の中でお互いの気持ちを確かめて、混ざり合った


その時に露わになったになった理佐の腕に彫られたタトゥーに釘付けになってたのは、ここだけの秘密だ



















































要望があれば続きだします。

おわり。