それでは、どうぞ。





























大好きな人がいた


その人に何かあっても、私がそばにいて守ればいいって…そんな浅はかなことばかり考えてた


その人にとってのそういう存在が、私じゃなかったかもしれないのに


ガラッ



保)夏鈴ちゃん。

夏)ん、

保)保乃にも一本ちょうだい。

夏)……だめ。



真っ黒になった灰皿にタバコを押し付けて火を消した。まだ半分以上残っていた。これが無駄になってしまったのは、辛そうな表情を浮かべながらベランダに出てきた保乃のせいだった



保)なんで?

夏)汚れてほしくないから、私みたいに。

保)…。



あの子がいなくなって、私は私を卑下することが当たり前になった。大切な人を守れなかった私に価値なんかない。こう思うのは当然のことだった


でも…それでも保乃は私に『生きてていい』と言ってくれる。最初は何様だと思った。知ったような口を利くなと何度も思った



保)夏鈴ちゃんは汚れてなんかない。

夏)…なんでそう思う?

保)保乃のために生きててくれるから。

夏)またそんな、

保)保乃はそれだけで嬉しい。



被せ気味に言い放った保乃から目線を逸らして、私は空を見上げた。星はどこにもない、月も見当たらない


その真っ暗な空はまるで私みたいだと、そう烏滸がましく思う



保)なぁ夏鈴ちゃん。

夏)ん?

保)保乃じゃ…あかんの、?

夏)…。



そう悲しい目で訴えてくる保乃に何も返せなかった。その目は少しだけあの子に似ていて、それがちょっと懐かしくて…目の奥がじんわり暖かくなる感覚がある



保)それとも…まだ麗奈ちゃんのことがっ、

夏)保乃のことはね、嫌いじゃないの。

保)っ、、なら、

夏)でもね、怖いんだ。また大事にしたいと思った人がいなくなるのが。

保)…、

夏)弱いよね、ほんと。自分でも笑えてきちゃう。普通こういうのって『私が守るよ』とか言うのが普通なのに。

保)保乃は…おらんくならんよ、?



そう呟いた保乃の言葉を信じられなかった。所詮は口約束、そこにどれだけ強い想いが乗っていたとしても、無理やり剥がされることだって容易にあり得ることを私は知っている



ーーーー



麗)ねぇ夏鈴ちゃん、もし麗奈が死んじゃったら、

夏)麗奈はずっと私と一緒にいてくれるでしょ?そんなこと言わないで。

麗)…ふふっ、そうだねぇ、、



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神様はいつだって不平等だ


どうして麗奈に乗り越えられない試練を与えた?どうして麗奈が死ななきゃいけなかった?



夏)はぁ…ズルいなぁ、神様って。

保)夏鈴ちゃん…、



保乃が私を呼ぶ声は細くて、今にも消えてしまいそうだった


保乃と一緒にいることをきっと麗奈は許してくれる。『忘れていいよ』って、『幸せになって』って…きっとそう言ってくれる


でも私は私を許さない。どれだけ周りが…麗奈が許しても、私は絶対に許さない。大切な人を守れなかった私に、許される権利なんてあったらダメなんだ



夏)保乃。

保)んっ…なに?

夏)保乃はさ、私の前からいなくならないでね。



そう一言だけ吐き出して、私は麗奈への弔いを上げるように、またタバコに火をつけた




























おわり。