それでは、どうぞ。



































保)この花束、夏鈴ちゃんが作ってくれたん?

夏)あぁ、うん。

保)すごいなぁ…ほんまに綺麗やわ!



控室の鏡の前に座りながら、夏鈴が作った花束を眺めるウエディングドレス姿の保乃を横目で見る。眩しいぐらいに輝くその顔は、まるでスイートピーみたいな優しい匂いがしそうやなって、咄嗟にそう思った


今日は雲ひとつない快晴の日で、結婚式にはうってつけの日やって誰かが言ってた。おかしいな、夏鈴には曇り空にしか見えんのに



保)夏鈴ちゃんがお花屋さんでほんまによかったわ〜。

夏)…なんで?

保)そりゃ、見ず知らずの人に作ってもらうより、保乃の1番の親友に作ってもらった方が嬉しいやろ?

夏)、、どうやろ。



保乃の発言の一つ一つが針みたいに心を刺してきて、腹の底から何かが這い上がってくる感覚がある


『花婿さんより夏鈴の方が保乃のこと好きやと思うで』


何かってのは多分こういうのだと思うけど、夏鈴にとって誰よりも大切な保乃を困らせてしまうなら、それを押し殺して飲み込むのが1番良いって思う



保)この花はなんなん?

夏)トルコキキョウ。

保)おぉ!これは?

夏)アンスリウム。

保)すごっ笑。これは分かるで!バラやろ?

夏)違う、それはラナンキュラスやな笑。

保)えー!違うんか!



保乃の高笑いに釣られて、夏鈴まで大きな声で笑ってしまう


こんな風に楽しい時間を過ごすと、もっと欲が出てしまいそうになる。保乃はずるい人や、最後の最後までいい思い出を作らそうとしてくるんやから



保)はぁー…やっぱり保乃、夏鈴ちゃんとおる時が1番楽しいわ。

夏)まぁそれも今日で終わるけどな。

保)え、なんで?

夏)なんでって、結婚するやん。

保)いやいや!そんなん関係なく保乃達は友達やろ?



まるで夏鈴が冗談でも言っているかのように、保乃はまた眩しい笑顔で夏鈴に笑いかける。こっちが本気でそう思ってるのも知りもしないなんて、残酷にもほどがあると思わずにはいられんかった



保)結婚してもさ、2人で楽しいこといっぱいしよな?

夏)…。



きっと夏鈴が普通に生まれてれば、保乃とこんなに悲しい別れはしなくて良かったのかもな。友達やと思うことができれば…友達で止められていたら、どれだけ楽やったか



夏)…ははっ、そうやな。



楽しい時間はいつかは終わる。それを乗り越えて、人はみんな大人になっていくんかなって、そう都合よく自分に言い聞かせた


君とのさよならは、夏鈴の心の中にある思い出の宝箱にしまっておくな



コンコン


ガチャッ



花婿)保乃、そろそろ時間だよ。

保)あ、うん!ほな夏鈴ちゃん、また後でな!

夏)うん、楽しんでおいで。



花婿さんの元へ向かう君の後ろ姿を見て、やっと曇ってたのは自分の心やったんやと気づく


保乃の隣にいれないなら夏鈴の心はその曇天のままで良い






























おわり。