それでは、どうぞ。
あなたの優しさの理由が知りたかったあの頃。それは確か、まだ冬の冷たさが残る卒コン終わりの小雨の降る夜だった
ガチャッ
理)んー、、夏鈴ちゃん、
夏)おはようございます。
理)おはよ…今日も早いねぇ、
夏)理佐さんがねぼすけなだけ。
眠そうな目をパチパチさせながら寝室から出てきた理佐さんはいつもより髪の毛がボサボサしてた
たまにしか見られない理佐さんのだらしない姿が愛おしい。きっと昨日は遅くまで仕事してたんだろうな
なんて思いながら私はリビングの椅子に座って淹れたばかりのブラックコーヒーを一口飲んだ
夏)朝ごはん食べますか?
理)ん、食べたい。
夏)食パン焼きますね。
理)えーご飯がいい。
夏)今日はパンしかない、我慢して。
理)ちぇっ、はーい。
夏)…5歳児。
今日の朝ごはんの担当は私。と言っても、私たちは別に付き合ってるわけじゃない。理佐さんが卒業してちょうど3ヶ月が経つ頃に、理佐さんがいきなり私の家に転がり込んできた
最初こそびっくりしたけど今はもう慣れっ子で、私はもう1人で暮らしてた頃に感じてたあの虚しさを忘れてしまった
理)夏鈴ちゃん今日休み?
夏)休みじゃなかったらこんなゆっくりしてないです。
理)あ、そっか。ごめんごめん笑。
夏)理佐さんは?
理)私も休み〜、デートしよ〜。
夏)っ/////、
なんて呑気な声で言ってくる理佐さんは、いつの間にか私が座ってた椅子に体育座りで小さく座ってた。不意にパジャマの隙間から理佐の胸元がチラッと見えて顔が急に熱くなる
あーもぉ…引っ込め変態
夏)はぁ、どこ行きたい?
理)うーん、夏鈴ちゃんとならどこでも楽しいからなぁ。
夏)それは嬉しいけど、困ります。
理)そーだよね笑。
こんな中身のない会話をしていたら、あっという間に朝食の準備ができてしまった。机に運んだ料理を理佐さんは、まるで高級料理でも食べてるのかと思うほど目を輝かせながら食べてくれて、私はそれがやけに嬉しかった
でも多分この調子だったらもうどこにも行かずに家でゆっくり過ごすんだろうな
理佐さんとならそれでもいいけど
理)んー!美味しい!最高!
夏)大袈裟な。
理)ほんとだよ?
夏)はいはい。
理)むー、生意気。金髪になっちゃったから反抗期なの?
意味わかんない発言を無視して、理佐さんと向かい合うよう頬杖をついて座る。こうして座るといつもこの人の顔の綺麗さに見惚れてしまう。性格はちょっと難ありだけど
夏)顔だけ美人。
理)それ褒めてる?貶してる?
夏)どっちもです。
理)なにそれ笑。
あの日の夜の小雨は、まるで理佐さん以外のメンバー全員の心を表してるようだった。すごく単純な『寂しさ』という感情。私にとってそれは、生まれて初めての強い感情だった
だから尚更、今のこの関係が不思議に思う。理佐さんは今どんな気持ちで私と一緒にいるのか、理佐さんがなんで他のメンバーじゃなく私のところに来たのか…
私は理佐さんのことを恋愛的な目線で見ているのか
夏)気まぐれですか?
理)ん、何が?
夏)私のところに来てくれたの。
私から無意識に出てきた言葉に理佐さんは少し驚いた顔をして、すぐに考え込むように眉間にシワを寄せた
理)気まぐれっていうか…まぁ夏鈴ちゃんのこと好きだからかな?
夏)それはどういう好きですか?
理)いや、この状況でただの後輩としてとかだったら私だいぶ痛い先輩じゃない?笑。
夏)…そうですね。
理)そこは否定してよ笑。
長い時間モヤモヤしてたことがこんなにもあっさり晴れてしまうと逆に変な感じだ。だけど多分、私も理佐さんと同じ気持ちなんだと思う
夏)私もっ、
理)知ってる。
夏)まだ何も言ってないですけど。
理)夏鈴ちゃんは私のことが好きだよ、あの頃からずっと。
他人のことだってのに、なんでこの人はこんな自信満々にそんなことが言えるんだろ。やっぱり変な人だな
夏)まぁ…そういうことにしといてあげます。
そう一言呟いて、私はまた少し緩くなったコーヒーを一口だけ飲んだ
おわり。