2000年(平成12年)の十勝毎日新聞より転載


風評被害の懸念


「終息宣言」まで“忍の一字”


制限地域の規制経営にダメージ


具体的な対策見えず

「出てしまったものはしょうがない。安全宣言までじっと耐えるしかない」
「直前に発生した宮崎の例が幸いし、適切に対応できている」
口蹄疫の疑似患畜が発生して一夜明けた十二日、農業団体の関係者は一見、冷静さを装った。

移動制限地域内の立ち入り検査が“シロ”と判明すれば、早期に「終息宣言」が出る可能性もある。

「具体的な救済策についてはこれから。とにかく今はウイルスのまん延防止が第一」と十勝支庁は強調、生産者サイドもひたすら“忍の一字”だ。
しかし具体的な対策が見えてこない中で、不透明な終息日を待つことほど、辛いものはない。


後々の影響を心配

「制限地域内では移動のほか人工授精や放牧も禁止された。

出荷できない肉牛農家への影響はもちろん、受精適期を逃すことで酪農経営の効率低下も懸念される」と、JA北海道中央会帯広支所は漏らす。

基本的に農業共済は家畜の死亡、病気の場合に適用となり、今回のような経営的ダメージ時の補てんにはならない。

制限期間の負担は、エリア内の農家に直接のしかかるのだ。
一方、風評被害が後々に与える影響を心配する声は多い。

全十勝地区農民連盟(杉山照委員長)では、制限エリア内ではなく、十勝全体の問題として国に対策を求めようと、情報収集に乗り出した。

だが、口蹄疫が発生して間もないこともあり、地区レベルの被害状況をまとめきれないでいる。

まして風評被害となれば、なおさらだ。
書記長は

「制限地域内の農家の所得補償は当然のこととして、十勝ブランドのイメージ低下が与える影響にも何らかの手だては必要。

宮崎県では百億円の緊急措置が取られたというが、中身を早急に精査したい」という。
また口蹄疫の発生要因として輸入飼料が考えられていることから、穀物防疫体制など国の政策全般にも疑問を投げかける。

「輸入飼料が原因とは限らないが、外国に穀物を頼ってきた国内農政のゆがみが現れた形。法定伝染病による災害だけに、きちっとした対応を求めたい」と語る。


住民の理解と協力を

口蹄疫の発生が明るみになってから、市内の一部大型店では「十勝産」の食肉を店頭から撤去する動きが出てきた。

中には口蹄疫とは関係のない鳥肉までも自粛したケースもある。
道帯広食肉衛生検査所では「感染牛の肉を食べても人体に影響はない。それに二重のチェックが施されており、実際に口蹄疫に感染した肉が市場に出回ることはない」と訴える。
スーパーや大型店が過敏になるのも仕方がない。

しかし「売り場から撤去すれば逆に不安をあおる」「地元のことを考え十勝産はなくしたくない」と冷静に対応したり、あえて「食べても安心」と張り紙で説明する所もある。
消費者である住民一人一人の正しい理解と協力が、何よりの対策であり支援なのだ。(口蹄疫問題取材班)




注意


十勝毎日新聞のHPより転載いたしましたが、お名前は省いております。


転載元URL http://www.tokachi.co.jp/kachi/jour/kouteieki/2.htm

2000年(平成12年)5月27日の十勝毎日新聞より転載


口蹄疫終息へ(中)


風評被害、偏見に怒り


町民一丸で困難突破へ


「われわれは牛の病気の広がりを防ぐために必死に取り組んでいる。

それは十勝、北海道の基幹産業である農業を守るためでもある。

本別町内中にウイルスがまん延していると錯覚し、町民をばい菌扱いするとは。

同じ十勝人としてなさけない」。

本別町口蹄(こうてい)疫防疫対策本部(本部長・町長)に続々と寄せられる風評被害にだれもが怒りの声を発し、唇をかんだ。



本別の人はお引き取りを

帯広のそば店で「本別の人はお引き取りを」と追い出された、

農家が同じ移動制限区域内の他町の食堂で入店を断られた、

音更のある小学校が本別公園への遠足を変更した、

少年野球大会で本別の少年団の親に対し相手側から「本別の人間がここに来ていてもいいのか」と言われた-など数限りない。

六月二日に本別で公演する劇団希望舞台は次の公演先の網走管内のある町から本別を通過するなら来てほしくないと一時言われた。
二十八日に豊頃町(※とよころちょう)で開催されるYOSAKOIとよころフェスティバルに出演を予定していた町内の「義経爛漫」は「この緊急事態にわれわれだけ楽しい思いをしていいのか」と内部協議。

町民感情を配慮して出演を自粛することとしたが、十勝の仲間から「応援するからぜひ元気を出して参加してほしい」と要請があり、二十六日の夜、再度出演を決めた。


自衛策には厳しさ必要

風評被害は農家経済ばかりでなく偏見となって町民や町そのものにまで向けられている。

町民は「本別には行くな、来るな、寄るな、触るな-か」と悔しさをにじませる。

事実もあれば、うわさの域を出ないものもある。

ぴりぴりと張り詰めた毎日を送っている町民にとって、相手の悪意のない何気ない言葉や冗談も今は重く響く。
町内の酪農家(55)は「家畜を飼っている者から言わせれば、当然のことと受け止めなければならない」と語る。感染経路が明らかになっておらず、空気感染も全くないとは断言されていない中、畜産農家にとっては死活問題となるだけに自衛策に何重もの厳しさは必要だ。

消毒ポイントで作業する人たちの昼食の炊き出しボランティアを毎日続けている女性たちからも

「口蹄疫がほかの町で発生したときにはやっぱりそこの町にはなるべく近寄らず、農産物も避けると思う」の声もある。


補償と感染経路究明を

本別町農協組合長は

「これまで周辺国で口蹄疫が発生していながら日本では対策が取られていなかった。

危機管理意識に欠けている。

農家経済への補償はもちろん、感染経路は国の責任においてきっちり究明すべき。

そうでなければ安心して牛を飼い続けられない。

周囲の風評被害も消えない」と強く指摘する。

同時に、「信頼回復には飼料管理を徹底し、今まで以上に安全で良質の農畜産物を提供していくこと」と組合員の奮起と行動を促す。
町長は町内外に「口蹄疫に対して正しい認識を持ってほしい」と訴え、町民には「清浄性が確認された今、冷静に対応すれば、こうした風評被害も消えていく。

町民一丸となってこの困難を乗り切ることで、町民が固く結ばれる」と前向きな思考への転換を呼び掛けている。

(口蹄疫問題取材班)





注意


十勝毎日新聞のHPより転載いたしましたが、お名前は省いており、また※のよみがなは転載者がつけたのでHPの文章には付いておりません。


転載元URL http://www.tokachi.co.jp/kachi/jour/syusoku/2.htm

2000年5月18日の北海道新聞より    同日分の記事です。


2000年(平成12年)5月18日(木曜日)の北海道新聞より転載


畜産王国 苦悩深く


口蹄疫発見から1週間


【帯広、本別】


ウイルス性の家畜伝染病・ 口蹄(こうてい)疫が、十勝管内本別町押帯(おしょっぷ)の畜産農家で発見されて十八日で一週間。

「家畜の移動制限はいつまで続くのか」

「出荷できない牛の補償は」-。

 出口の見えないウイルスとの戦いに、地元農家や行政は苦悩を深める一方、風評被害もじわじわと広がりを見せており、「十勝ブランド」へのダメージが懸念されている。


農家 牛売れず影響深刻


 「市場に牛が出せず、このままでは死活問題だ」。

本別町勇足(ゆうたり)地区で農家を営む男性(五五)は、家畜市場に集荷するため、バリカンで産毛をそった十二頭の牛を見つめる。

勇足地区は感染農家から半径十㌔圏内の家畜移動制限地域内。

現在も消毒液を積んだトラックやパトカーが行き交い、ものものしい雰囲気が続く。

市場は出荷直前に口蹄疫発生の影響で閉鎖された。

このまま出荷できなければ十二頭分で四百万円の損失。

「市場が再開しても売れるかどうか。 感染農家でなくても被害が出ている。 国は補償してくれるのか」

同地域内の牛はすべて採血され、農家は十九日ごろにも判明されるとされる検査結果を戦々恐々として待つ。

ある農家は

「感染が見つかったら、牛を返すと言っている本州の出荷先もあるようだ」と声をひそめる。

十勝支庁の防疫対策本部は、本別町の口蹄疫が遺伝子的に宮崎で発生した口蹄疫ウイルスと同一と断定した。

しかし、飼料や牛舎の床に敷く敷料(※しきりょう)はいずれも宮崎との接点が見つからず、感染経路の解明にはまだ時間がかかりそうだ。


対策 情報不足不満の声


 「情報が不足してうわさが飛び交っている。何とかならないのか」。

公式発表翌日の十二日、十勝支庁が管内の市町村や農業団体約二百二十人を集めて開いた連絡会議。

多くの出席者が矢継ぎ早に道の担当者に質問を浴びせた。

十一日早朝には口蹄疫を理由に家畜市場が休場。

この情報が生産者にもたらされ、騒ぎが広がった。

ある取引業者は、「昼に本州から電話が来て発生を知った。本当にびっくりした」と話す。

肉牛だけで二百億円規模の粗生産額を誇る十勝。

「口蹄疫、道内は問題なし」との見出しが躍るホクレン機関紙を手に、ある畜産農家は

「問題なしというのは根拠がない。正しく情報を出してほしい」と憤る。

情報不足との指摘を受け十勝支庁は十六日、まん延防止対策をまとめた資料を農協などを通じて各農家に配布し始めたほか、記者発表資料も含めホームページに掲載している。


流通 新工場は開店休業


 札幌のある大手スーパーでは口蹄疫発生の報道後、十勝産牛肉が売り場から消えた。

独自検査で安全と判断し、近く販売再開に踏み切る予定だが、産地にかかわらず牛肉全体の売り上げは落ちているという。

担当者は「消費者の買い控えが進んでいる」とみる。

十勝管内芽室町に新工場を建設し、稼働が始まったばかりのニチロ畜産十勝工場も、枝肉が十分に入らず開店休業状態。

一日五、六十頭分の枝肉が入る予定だったが、市場の閉鎖で十頭分前後しか処理できず、生産は目標の十分の一。

工場長は「十五日から本格稼働が始まる予定だったが、出ばなをくじかれてしまった。まあ、待つよりしょうがないでしょう」。

パート従業員も自宅待機状態だ。

十勝管内の食肉加工大手の十勝総合食肉流通センター(帯広)では、現在も通常通りの取引が続けられている。

取引価格に大きな影響はないと言うが、ある職員は「心配する業者も少なくないため、その都度説明している。早く安全宣言が出てほしい」と話す。

一方、本別・仙美里(※せんびり)郵便局では、地元産アスパラガスのゆうパックを申し込んでいた札幌の主婦から、キャンセルが入った。

同郵便局の局長は、「口蹄疫と野菜は関係ないと分かっていても、本別産を避けたい心境なのでしょう」と被害拡大を心配する。



※のよみがなは、転載者がつけましたので、実際の記事には載っておりません。


敷料については こちら


ホクレンについては こちら      を参考に