(BGMは必殺仕事人でお願いします)
またカモが来た(嬉)!と思わせるために
作り笑顔で現れた私達に
両替屋の2人の兄ちゃんは
動揺した様子だ。
(こいつらバカ?...それとも...??)
と顔に書いてある。
引きつりながら
「キョウハ イクラ?イクラ?」
1万円を見せながら「また1万円ね!」
と強い調子で言うと
今度は高額紙幣できっちり出してきた。
昨日と違って数えやすい。
昨日は最初少なくよこしたのだ。
自分のiPhone計算器とも合っている。
夫がお札を数える間
私は「ここはレートが良いから
友達に教えるの!」と
兄ちゃんと両替所の写真を
バシバシ撮った。
手のひらでカメラを遮ろうとする兄ちゃん。
「うん、今度はちゃんとある。」
と言う夫の手から
兄ちゃんがオレに確かめさせろと札束を引っ張る。
そうはさせない!
「イチマンエン モラッテナイヨ!」
そうだった。見せただけで渡していない。
しかしここで閃いてしまった。
どうせワルに正攻法は通じない。
そしてこれはイケる。と(悪)。
私は壊れた折り畳み傘を
勢い良く伸ばし、柄を外すと
尖った先端を兄ちゃんの鼻先に突き付けてこう言った。
「お前ら昨日騙しただろ!これは私達のコミッションだ!!」
「写真をネットで世界中に流す!」
「ポリスに言う!」
後ずさりする兄ちゃん。
と同時にもう一人の兄ちゃんと
札束の引っ張り合いをしている夫に
作戦変更の目配せをすると
ピンと来たらしい。
夫は自分の後頭部にある傷を指差し、
「俺は日本のYAKUZAだ。
後で仲間を連れて来るからな!」
と凄んだ。
その傷は本当は手術痕なのだが
昨日私達を騙した時に兄ちゃん達が
気づいて聞いてきたのだ。
「誰かにやられたのか?」と。
その時は「うん、若い頃にね。」
と答えていたのだった。
ひるんだ兄ちゃんが札束から手を離した隙に走って逃げる強盗(私達)。
この時は腰痛も吹き飛んで
水たまりを跳び越えていた!(笑)
昨日は5000円盗られ
今日は10000円返してもらった。
5000円儲かっちゃった。
それから私達は
予約していたタクシーでウブドを観光し
まっとうな商売をしているバリの人達に
そのお金を還元させて頂いたのだった。
翌日、空港に向かう前に
ホテルの外廊下から
例の路地の入り口を覗くと
あの兄ちゃんが御供え物に向かって
祈りを捧げていた。
彼も敬虔なヒンズー教徒なのだ。
聖水を使ってお祓いの様な仕草をしていた。それはまるで
「もう来ません様にもう来ません様に」
と言っているようだった。


