東京では青山や雑司ヶ谷など、都会のど真ん中に大規模な墓場があることはそんなにめずらしくない。パリでも同じように、数多くの墓地が街の中に存在している。パリ市内には20カ所の墓地があり、その全てをあわせた面積は422ヘクタールで、なんと東京ドーム90個分だ。そんなパリ市内の複数の墓地で、昨日26日土曜日、パリ市役所が大規模なイベントを催したのだ。

 

パリの墓地は死者を想う場であると同時に、その歴史や生態系の観点からも文化的価値が高い。野生の狐もたまに出没することから、生物の多様性からも専門家の間では注目されてきた場所なのだ。そんなパリ市内の墓地の潜在的な価値をパリ市民に広く知ってもらおうと、パリ市役所が今年の1月からイベントを企画してきた。

 

 

なかでも、歌手のマリア・カラスやエディット・ピアフ、フランス文学界の神様、プルーストらが眠るパリ最大のペール・ラシェーズ墓地では昨日数多くのイベントが行われた。フランス料理界の巨匠8人が、フランス食文化と墓地に眠る故人との関係を説明しながら散策するイベントや、映画監督や俳優らと多くの映画の舞台にもなったこの墓地を巡るツアーも催された。

 

なかでも、物議を醸しているのが、墓地内で開かれたミニコンサートだ。クラシックギターのコンサートや、オペラ歌手らがその作曲家の墓地の前で歌唱するコンサートも行われたのだ。

 

イベントが催された墓地の中には、2015年のパリ同時テロで犠牲となった方々も眠っていることから、多くの政治家や市民から批判の声が上がっている。

 

パリ15区選出のパリ市議員Jean-Baptiste Menguy氏はフィガロ紙のインタビューでこう語っている。

 

『死者に対する尊厳の問題、特に一連のテロ事件で命を落とされた方々を思えば。悲しみと瞑想の場所で、こんな祭りをするのは適当だと思えない。なんて愚かなパリ市役所のアイデアなんだ。』

 

一方、パリ市役所が企画した今回のイベントに肯定的なパリ市議員Pascal Julienはこう語っている。

 

『これはパリの墓地を活気つける一つの方法だ。もし、みんなでジャンヌ・モローのお墓の前で、彼女の曲≪途切れる思い出≫を歌えば、彼女を追悼することを意味している。私たちはその場所に敬意をもっている。率直に言えば、感動があった。これが、私が感じたかったことで、実際に(昨日)みたことだ。来年も開催されることを期待します』

 

普段あまり、フランス人の友人らと彼らの死生観やお墓に対する思い入れについて話したことがないので、昨日の墓地内でのイベントについてどう思うか聞いてみたいとも思っている。