パリの地下鉄に乗っていると面白い看板広告をみつけた。フランスで最も権威あるスポーツ新聞≪レキップ≫の広告だ。なかなか興味深かったので、じっと見入ってしまい、おかげで電車を3本ほど乗り過ごしてしまった。今回のブログでは、この看板広告を皆さんに紹介したい。写真を携帯で撮ったのだが、画質があまりよくないので、お許し願いたい。
この看板広告は、フランス人の日常生活とスポーツ、そしてレキップ紙の関連性を訴求するものとなっている。この広告をじっくり読んでいると、フランス語やフランス社会の勉強にもなるし、この国にも、日本のようなお正月の箱根駅伝や夏の甲子園といった恒例スポーツイベントがたくさん存在することがわかる。
また、ユーモアの奥に潜む、フランス人の潜在意識をも観察することができるのだ。
看板の一番外側に日常生活の一場面が書かれており、そこから連想する言葉や感覚が次に書かれていて、中心部に行けばいくほどスポーツを連想させるのだ。最後にレキップ紙のロゴが看板の中心に据えてある。文字で説明してもわかりにくいので、いくつか紹介したい。
① Le petit jaune → Le petit jaune→la pétanque →L’équipe
Le petit jauneとは日本語で小さい黄色という意味だが、この言葉はフランスではパスティス酒のことを意味している。パスティス酒は南仏マルセイユの名産品でマルセイユに住む人たちは朝から晩までずっとこのパスティス酒を飲んでいるというのが、フランス人の共通認識だ。そして、そのパスティス酒を飲みながらペタンクを楽しみ、ペタンクの情報と言えば、レキップ紙とこうきてるのだ。
マルセイユ名産 パスティス
その調子で次にいってみよう。
② Les rillettes → Le Mans → la course automobile→L’épique
リエットとは豚肉をラードの中で煮込んだ、ペースト状の保存食で、これをパンに塗ってフランス人は食している。このリエットはフランス西部に位置するル・マンという町の名産で、このル・マンでは世界的に有名な24時間レースが開催されることもあり、モータースポーツの聖地の街なのだ。モータースポーツ情報といえば、レキップ紙ということだ。
③ Les sushis de la semaine dernière → le danger →la course automobile →L’épique
これは、日本人にとって聞き捨てならない。フランス語で説明すると、≪先週食べたお寿司→危険→モータースポーツ→レキップ紙≫
若いフランス人のほとんどお寿司が大好きだが、レキップ紙を購読する年配のフランス人には今でも生で魚を食すことに抵抗がある人が多い。だから、寿司を食べたら、お腹を壊す危険がある、危険と言えばモータースポーツ、モータースポーツといえばレキップ紙となるのだ。
④ Le premier jour des soldes →les mêlées→ le rugby→ L’équipe
バーゲンセールの初日→ごちゃまぜ→ラグビー→レキップ紙
文字通り、フランスで年に2回あるバーゲンセールの初日はどの店もラグビーの試合のような雰囲気なのだ。これは面白い。良い例えだ。
最後は、少し歴史の勉強。
⑤ Jacquie et Michel →la libération sexuelle→ mai 68 →les pavés →le cyclisme →L’équipe
Jacquie et Michelというのはフランスの素人アダルトサイトだ。ここから、性の解放を連想させ、性の解放といえば、今からちょうど50年前フランスで巻き起こった五月革命(mai 68)。この五月革命では、旧来型の価値観にとらわれた旧世代に対して若者らが男女平等を実現するために立ち上がったのだ。この革命では、革命参加者がles pavés(道路の敷石)を剥がして、それらを警官らや治安当局に投げて抵抗したのである。
このles pavés(道路の敷石)からフランス人が連想するスポーツイベントと言えば、毎年4月中旬に開催されるパリ~ルーベ間260キロに及ぶ自転車ロードレースだ。このレースの見どころは何といっても、途中27か所にも及ぶles pavés(石畳)上のルート。
凸凹した石畳の上を自転車で駆け抜ける様子はフランスの春の風物詩なのだ。
少し、説明が雑になったが、この広告のお陰で、私もいろんなことを知ることができた。フランス、フランス語に興味がある人にとってはとても面白い看板広告に違いない。



