内務大臣となるジェラード・コロンブやオランド政権では防衛大臣、後に外務大臣となるジャン・イブ・ル・ドリアンを社会党から引き抜くことに成功したマクロン陣営。残すは共和党の大物政治家の助けが必要であった。

 

ここで登場するのが世界的に有名な思想家ジャック・アタリである。彼は親交の深い共和党議員エドワード・フィリップにマクロン陣営への協力の意志を尋ねる。すると、エドワード・フィリップは共和党候補者フィヨンが戦う大統領選第1回投票では何もできないが、その後、状況が状況なら協力すると伝えたという。ちなみに、このエドワード・フィリップはマクロン政権で内政の総指揮を執る内閣総理大臣に任命される。

 

2017年4月23日、日曜日、5年に1度のフランス大統領選挙の第1回投票が行われた。上位4名がそれぞれ約20%の得票率を獲得する接戦であった。

 

主要候補の得票率

マクロン(En Marche)→24%

ルペン(国民戦線)→21%

フィヨン(共和党)→20%

メランション(不服従のフランス)→19.6%

アモン(社会党)→6.7%

 

この結果、決選投票へはマクロンと国民戦線のルペンが駒を進める。

 

そして、この第1回投票日の翌日、エドワード・フィリップを乗せた車はEn Marche本部へと向かっていた。マクロンと極秘に打合せするためだ。マクロンはエドワード・フィリップが席に着くなりこう切り出したという。

 

≪ここまで来てくれてありがとう。あなたにとってこの事がどれだけ簡単ではないか私にはわかります。≫ 

 

そして、目の前に座る相手を口説き落とすためにこう言った。

 

≪あなたは保守政治家グループを立て直すのに時間を削るよりも、フランスを再建するべきだ。≫

 

ついに5月7日の決選投票でエマニュエル・マクロンはルペンをダブルスコアで突き放し、フランス共和国大統領の座を射止めたのである。

 

マクロン(En Marche)→66.1%

ルペン(国民戦線)→33.9%

 

5年前までフランス政界では全くの無名であった男が、劇的な勝利を収めた2017年フランス大統領選挙は、フランス政治史の中で一種の大地震であり、また津波のように保守もリベラルも破壊した。

 

仏ニュース専門チャンネルBFMTVで放送されたこのドキュメンタリー映画は最後に、1976年ニースでおきた銀行強盗Le Casse du Siècle (世紀の破壊) の主犯アルベール・スパジアリが去り際に金庫の壁に記した言葉を引用しながら幕を閉じる。

 

≪Ni arme, ni violence et sans haine (武器も、暴力も、憎悪もなしに)≫

 

旧来の政治システムを破壊し、自ら大統領へと昇りつめたエマニュエル・マクロンならこう述べるであろう。

 

≪Ni parti, ni passé et sans pitié (政党も、過去も、同情もなしに)≫

 

(完)