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 リフレーミングをする際のTipsとして、3つ挙げてみたい。

 

 ひとつは、「好奇心を全開にすること」

チロル堂で、ダダダダと工事の音がうるさい。うるさい、不愉快、やめてくれ、という受け止め方を一旦脇に置き、好奇心を働かせて、「何をどうやったらあんなにうるさい音が出るんだろう」と自問すれば、「何やってるのか、ちょっと見てみよう」となり、「働くおじさん観察コーナー」が出来上がるわけである。

 

 2つめは、A氏のようにできるだけ「ポジティブに考えてみる」こと。

 「別の」「他の」観点から考える際、せっかくなら「別の、もっとポジティブな見方」や「他の、もっと面白い角度」のほうが、たぶん、考えるのが楽しくなる。楽しい方が、発想がより柔軟になり、よりクリエイティブな考えが浮かび、結果的によりよい問題解決や意思決定につながるはずだ。

 但し、なんでもかんでもポジティブならいいというものでもないし、個人的性格によってはネガティブアプローチのほうが性に合う、という人もいる。「最も厳しい見方をすると」「最悪の捉え方をしてみると」といったリフレーミングの仕方でも、それが最終的により適切な問題解決や意思決定につながるのであれば、問題ないと思う。

 

 そして3つめ。「例えば」という枕詞を追加してみること。

 上述の「最も厳しい見方をすると」的なネガティブリフレーミングは、まさに最悪の事態に備える意味で有効だが、ポジティブアプローチ好きの人がやろうとすると、なんだか気分が落ちてくる。なので、最初にあえて「例えば」をつけることで、「別に、ほんとに最悪な見方をしたいわけじゃないんだけど、まあ例えば、とりあえず思考の体操してみるとしたら、ってことで」みたいに、ちょっと気を楽にすることが出来ると思う。逆に、ネガティブアプローチ好きの人は、あえてポジティブリフレーミングをやってみるときに、やはり「例えば」を枕詞にすればよい。

 そんなの、ただの言葉遊び、口先だけのごまかしじゃないか、と思われるかもしれないが、所詮人間は「言葉」でしか物事を考えることができない。そして脳みそは、意外に単純でダマされやすく、言葉の使い方ひとつで真逆の思考回路を走らせることは、心理学でも実証されている。

 

 奈良からマンハッタンに飛び、リフレーミングなんていうつまんない(?)スキル話になってしまった。

 どんな物事でも、ちょっと見方や考え方を変えること(リフレーミング)で、よりよいもの、よりすてきなことにできる、と言いたかっただけかもしれない。

 

 チロル堂の店主さんは、「リフレーミング」と意識していたかどうかはともかく、「別の観点から」工事の騒音対策の第一歩を踏み出したおかげで、それまで無関係、というかむしろ有害な部外者だった工事のおじさんたちが、チロル堂という「フレーム」の中に入って来て、チロル堂に集う子供たちを工事現場というあちらの「フレーム」に連れ出し、チロル堂と工事現場がひとつの「フレーム」へと拡大した。

 言葉の「リフレーム」は、関係性の「リフレーム」につながり、個々のフレームの境界線が温かく拡がっていく。

 そんな人と人とのつながり、拡がりは、しみじみといいなぁ、と感じる。