先頃、「集団お見合い」らしきものを体験した。ニッポンの慣習と異なり、一夫多妻(多夫)もしくは一妻多夫(多妻)という大混交を大前提としており、しかも婚姻期間が1年間という限定つき!?

 ホントの色恋沙汰の話、ではなく、大学院の修論研究の指導教官選び、である。
 筑波大学社会人大学院人間総合科学科・生涯発達専攻カウンセリングコースでは、8名の教官が手分けして25名の学生を指導する。基本は学生の意思が尊重され、指導を受けたい先生との「お見合い」、もとい個別面談を経て、第1~第4希望まで先生の名前を書いて提出。先生方の厳正なる協議の結果、教官1人につき学生3~4名のゼミが決定される。各ゼミ、先生も生徒も男女混交なので、つまりは重婚状態(!?)になるわけだ。

 そもそも、苦労して大学院に入ったのは修論研究のため、という私たちにとって、指導教官の決定は、大学院のQOL、並びに研究の出来栄えを左右する大イベントである。
 4月から12月までの必修・選択の授業や研究構想(この時点ではまだ“構想”というより“妄想”と言われる^^); )発表会を通じ、各先生の専門領域や人となりに接し、また、自分の研究構想に対するコメントも収集済。それぞれ「この先生がいいなあ♡」というほのかな想いを、徐々に育んでいく。

 そして迎える、11月下旬から1か月の「集団お見合い」期間。お目当ての先生との個別面談は、熱い想い♡を縷々打ち明ける告白タイム!? 先生側も、ゼミの進め方の説明やこちらの研究テーマに対するアドバイスをして、「私のところにお嫁(お婿)に来れば、こんなことがしてあげられるよ」とアピール。
 (私)本当にこの人に(修士号取得の)運命を委ねていいんだろうか…。
 (先生)本当にこの人を一人前の修士に育て上げられるだろうか…。
 まさにお互い様の相性診断、お見合いそのもの♡

 個別面談は最大4人の先生と設定でき、本命にフラれたときの二番手・三番手の選定も同時に行う。そのあたり、先生方は鋭く見抜く。にこにこ顔で「ボクのこと、本命じゃないんでしょ」と言われてドキッとした友だちも。
 逆に大勢の学生の人気を博す先生の場合、こちらが第一希望にしても、選から漏れるリスクがある。日頃から意中の先生に果敢にラブコールを送っていた友だちは、面談で「ごめんね、今日ははっきり『YES』って答えられないから」と言われ、さらに胸キュン♡
 そんなこんなの面談結果をシェアし合い、「誰が第一希望?」と訊き合いながら、自分で自分の想いを確認・再確認・再々確認し、第1~第4希望の順番を慎重に検討する。第一・第二希望とも人気の先生を書いたら、両方にフラれるリスクが高いから、第二は「当選確実」な先生にしたほうがいい、という案も飛び出す。
 希望リスト提出日まで心は揺れに揺れ、千々に乱れる。
 提出したあと、「あれでよかったんだろうか」「意中の人に選んでもらえるだろうか」と、そわそわ落ち着かない毎日にならぬよう、という先生方の気遣いだろうか、提出日は12月21日。クリスマスだ年末年始だと取り紛れ、気づくと冬学期の授業初日の前日である。

 かくいう私は、修論研究が始まると1年後の提出まで遊ぶヒマがなくなる、というわけで、年始に海外旅行を企てた。松の内に出発、授業前日に無事帰国し、NEXを待つ成田空港駅のホームで、メールが飛び込んだ。
 「本日の会議で修論指導教員が決定しました。研究室に掲示しましたので、ご確認ください。」
 電車に乗ったあと、友だちから、超ありがたいLINEメッセージが。
 「今日大学行ったから、帰りに研究室で掲示みたよ。写真撮ったけど、見たい? それとも明日自分の目で確かめる?」
 「見たい!」と即レス。
 次の瞬間送られてきた写真、私の名前の横にあった教官名は・・・!?
 お見合い成功♡。めでたく第一希望の先生であった。

                                                          ・・・(下)につづく