ただ今、土屋は技術評論社から 「 生物ミステリー プロシリーズ 」を刊行中です。
このシリーズ を執筆するにあたり、和洋問わず、さまざまな文献を参考にさせて頂いております。その中で、シリーズ既刊の参考書籍から、Amazon.co.jpで購入可能な書籍(で、このブログでまだ紹介していなかったもの)を、2015年の1月から順次紹介しています。
今回は8月に刊行した、
で参考にさせて頂いた、こちらの本について。
生物ミステリー プロシリーズ でもお世話になっている、群馬県立自然史博物館の長谷川善和名誉館長の著作です。
フタバスズキリュウ、学名「Futabasaurus suzukii」は日本を代表する古生物であり、おそらく日本で最もその和名が知られている古生物の一つでもあります。
そして、そのフタバスズキリュウの化石が高校生によって発見され、その後、学名がつくまでに30年以上の歳月がかかったのもよく知られた話でしょう。
本書は、そんなフタバスズキリュウの発掘と研究の物語です。
1968年に高校生の鈴木直さんから国立科学博物館に届いた一通の手紙。
その手紙からはじまる物語が、まさにその発掘と研究の中心人物だった長谷川名誉館長の一人称で綴られていきます。
「~鈴木少年は自分の発掘した骨をもってきており、駅構内でそれを見せてくれました。
パッと最初の骨が新聞紙から取り出されたときは、心臓がドキドキしたものです。~」
「しまった。自分でやるべきだったと悔やみましたが、もう遅い!~」
「化石の岩塊が取り出されて、ポッカリと開いた穴のように、私たちの心も一瞬ポッカリと穴が開き、呆然としていました。」
などと、「古生物学者・長谷川善和」の心の声が、当時の情景を克明に浮かび上がらせます。
私も 生物ミステリー プロシリーズ などのいくつかの書籍を書かせて頂いていますが、こうした「研究者ならではの視点」は、研究者にしか書けません。
その文章がここまで「読ませる」ものであるとしたら、これはもう、日本の古生物に関わる以上、一読は必須の1冊といえるでしょう。
とくに、これから古生物学に関わっていこうと思っている少年少女には、「必読の1冊」として推したいと思います。
フタバスズキリュウの知名度と、その知名度が果たした古生物学やひいては科学全般に対する貢献度を考えれば、「日本の科学史」という面でも貴重な1冊です。
フタバスズキリュウがいかに発掘され、研究されてきたのか。
おすすめです。
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