愛ある三葉虫本 | 化石の日々

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オフィス ジオパレオント代表のサイエンスライター 土屋健の公式ブログです。
化石に関する話題,ときどき地球科学,その他雑多な話題を書いていきます。

もっと早い時期に紹介すべきだったかもしれません。
今回,紹介する本は,たとえば拙著『We're Trilobites シリーズ』などをご覧頂く等して,「三葉虫」という生物に興味をもっていただいた方に,おすすめの1冊。

三葉虫の謎


 著者のリチャード・フォーティは,著名な古生物学者。とくに三葉虫の研究者として知られる人物で,イギリス自然史博物館の元主任研究員。日本では『生命40億年史』という作品でも知られています。

 本書は,そんな著者の「お気に入り」である三葉虫に対しての愛情がたっぷりとつまった本です。ページを開きはじめたときから,まさに「行間」にさえ,著者がいかにこの古生物に惚れこんでいるのかが伝わってきます。三葉虫の殻,脚,眼……。研究者だからこそ書くことのできる視点で,展開していきます。

 ページをめくっていくと,バージェス頁岩動物群の発見者として知られるウォルコットに関する記述に出会います。しかし著者は,ウォルコットをバージェス頁岩動物群の発見者としてではなく,「三葉虫の脚の研究者」として讃え,その業績を紹介していきます。このあたり,ウォルコットを紹介する,少なくとも日本語になっている他の書籍ではみない視点です。

 また,バージェス頁岩動物群といえば,『ワンダフル・ライフ』のグールドと,『カンブリア紀の怪物たち』のコンウェイ・モリスの議論がよく知られていますが(この議論に関しては,『カンブリア紀の怪物たち』をご参考ください),本書の中で著者はその議論をあくまでも紳士的に,評しています。

 その上で,カンブリア“爆発”の「目撃者」として三葉虫を紹介。さらに三葉虫からみえてくる,古生代の大陸配置などにも言及していきます。

 この日本語版自体の刊行が2002年と今から10年前であり,原著の英語版が刊行がさらにそこから2年遡ります。そのため,たとえば今日知られている三葉虫の種名と,本書掲載の種名がことなるなどの些細な情報の“更新”は存在します。
 しかし,そんなことは脇において,読み物として十分読ませる本であるといえるでしょう。

 『ワンダフル・ライフ』にしろ,本書にしろ,高校のときに出会って読んでいたら,絶対人生かわっていました。ああ,なんでみんな,出るのが微妙に遅いんだ(ノД`)・°・
 恐竜だけではなく,ほかにも古生物にはこんな魅力的な仲間がいて,しかもそれに関わる研究をすると,こんなに楽しい人生が送れるんだ。そんなことがひしひしと伝わってくる1冊です。おすすめです。



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