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    “中古”が地球を救う!? EVバッテリーに秘められた可能性

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    “中古”が地球を救う!? EVバッテリーに秘められた可能性

     

    「EVのバッテリーって、環境に優しくない面もあるんですよ」「環境に優しい」という触れ込みで今、話題のEV=電気自動車。その心臓部である「バッテリー」も当然エコだと思っていた私(記者)はこの言葉を聞いて、驚きました。EVのバッテリーについて取材を進めてみると、奥が深い実情や意外な可能性があることがわかってきました。(大津放送局記者 光成壮)

    EVバッテリーをめぐる皮肉な現実

     
    EVバッテリーをめぐる皮肉な現実

    こちらがEVのバッテリーです。車を長距離走らせるため、家電用品に使われるものより容量は大きいのが特徴です。加えて、充電と放電を繰り返しても、長期間使い続けられるような仕組みになっています。原料は、リチウムやコバルトなどレアメタルです。レアメタルは、スマートフォンや半導体などにも使われ、今、急速に需要が伸びています。ただ、レアメタルの産出国は南米やアジア、アフリカなどの一部の国に偏っています。

    その名のとおり希少性が高く、争奪戦の様相を呈しています。
    このためレアメタルをリサイクルする必要性が高まっていますが、これが「環境に優しくない面」を生み出しています。というのも、リサイクルする過程で使用済みのEVバッテリーの多くが燃やされているからです。二酸化炭素が排出され、環境にダメージを与えるという皮肉なことが起きているのです。

    開発進む新技術 “燃やさずに”リサイクル

    環境に優しい方法で、中古EVバッテリーをリサイクルする方法はないのか。新たな技術開発を進めているのが、東京に本社がある大手発電会社です。

    この黒い物質は、バッテリーから取り出したレアメタル。
    薄いシート状のアルミニウムに接着剤で貼り付けられた状態になっています。手でこすってみても、簡単には剥がれません。

    燃やすと、二酸化炭素が排出されるうえ、溶けたレアメタルがアルミニウムなどと混ざり合ってしまいます。さらにいざ、混ざり合った素材からレアメタルだけを取り出してリサイクルしようにも、精錬などの工程が増えてしまい、手間やコストがかかってしまいます。そこで、この大手発電会社では、燃やさずに電気を使う方法を開発しています。

    この新しい方法では、電気を使うことによってレアメタルだけを分けて取り出すことができます。

    水中に入れたレアメタルに電気の衝撃波をあてると、接着剤で貼り付いていたレアメタルがアルミニウムから剥がれていきます。

    水中から取り出してみると、触るだけで簡単に剥がれるようになっていました。この方法ではレアメタルがアルミニウムと混ざらず、ほぼすべて回収できます。二酸化炭素も排出されません。実際に採算を取るためには、現在手作業で行っているバッテリーからレアメタルを取り出す工程などを機械で自動化する必要があるということです。

    兵庫県などにあるバッテリー生産工場とも研究を進め、2030年ごろの実用化を目指しています。

    発電会社「JERA」 尾崎亮一 技術開発ユニット長
    「火を使わない、かつ電気も将来的には脱炭素すると、CO2を排出しないリサイクル手法として確立できるのではないか。こういったところは地球に優しいという理解をしています」

    他の活用も ガソリン車をEVに

    高性能の中古EVバッテリー。リサイクルするだけでなく、別の方法で活用する動きも広がっています。滋賀県近江八幡市にある中小企業の社長が見せてくれたのがこちら。

    一見レトロなデザインの車。
    それもそのはず、イタリアの自動車メーカー「フィアット」が1980年に販売を始めたシリーズ。その2002年式の車両です。
    しかし、実はこの車も立派なEV=電気自動車。社長はこう言います。「もとはガソリン車だったものをEVに改造したんです」

    車のバックドアを開けてみます。
    すると、もともとあった後部座席が取り外され、代わりに銀色の箱が設置されています。この銀色の箱の中身がバッテリー。
    しかも「廃車となったEVから取り出したバッテリー」だと言うのです。

    アプデエナジー 王本智久 社長

    この中小企業の王本智久社長は、ウェブサイトの制作やシステム開発などを手がけてきました。もともと電気工事屋の息子だったこともあり、環境に配慮したエネルギーについて研究を進める関西地方の企業の集まりにも参加しています。

    その中で、EVバッテリーの性能の高さに注目しました。使用済みEVバッテリーに可能性を感じた社長、これまでにガソリン車7台をEVに改造しました。バッテリーに加えて、車体も再利用するため、改造する際に二酸化炭素がほとんど排出されない点が、環境に優しいと言います。王本 社長

     

    電池もリユースのものを使いますし、車体もリユースのものを使いますので、その製造とかに関わるCO2はほとんどゼロにできる。再生可能エネルギーなどを充電に使うことができれば、本当にCO2を限りなくゼロに近づけるような乗り物ができるのではないかということで力を入れています」

    カギはバッテリーの“劣化度合い”

    ただ、ここで素朴な疑問が…

    いくらEVバッテリーが高性能で、長期間使い続けられるとはいえ、「中古」です。バッテリーは使えば使うほど劣化していきます。だとすれば、劣化したバッテリーを使ってしまえば、走る距離が短くなってしまうのではないか。社長が注目したのが、「バッテリーの劣化度合い」です。

    EVに載っているバッテリーは、多くのバッテリーがつながれた状態になっています。そして、それぞれの個別のバッテリーは使用状況によって、劣化度合いが異なると言うのです。

    この劣化度合いを滋賀県草津市にキャンパスがある立命館大学と連携して診断し、劣化度合いが小さいものだけを集めて、改造車に積み込みます。イタリアの自動車メーカーの車両を改造したケースでは、そうしたバッテリーを40個積んでいます。
    1回フル充電すれば、およそ200キロ走行できるということです。
    今後は、高級車「ロールス・ロイス」のEVへの改造なども手がけるとしています。通常の中古車だけでなく、いわゆるヒストリックカーと呼ばれる車の改造に需要があるのではないかと、可能性を感じているということです。

    劣化したバッテリーにも使いみち

    劣化したバッテリーにも使いみち

    「EVには載せられない」と診断されたバッテリー(上図の赤い枠のバッテリー)もムダにはしません。新たな使いみちとして、考えたのがこちら。

    自動販売機です。
    劣化が進んだバッテリーを、自動販売機のそばに設置。
    それに近くの太陽光パネルで発電した電気を充電します。

    夜になっても、充電した電気だけで稼働させることができるため、一般の電線からの電力供給は必要ありません。

    気象観測機器(中央) 防犯カメラ(右)

    気象を観測する機器や防犯カメラを追加で備え付けることもできます。さらに、USBをつなげるようにすればスマートフォンの充電も可能だと言い、災害時には緊急的な電源としても活用できると期待しています。世界中でEV化が加速するなか、会社ではバッテリーの再利用が新たなビジネスチャンスにつながると見ています。

     

    アプデエナジー 王本智久 社長
    「世の中がどんどん環境のほうに変わっていき、EVでないといけないというような時代になってきたので、自分たちのやっていることがやっと日の目を見るような時代になってきた。なんとか使いみちの活路を切り開けたらなと思っています」

    EVバッテリーの可能性に熱視線

    2つの企業の取り組みを紹介しましたが、今、企業や各国の間ではEVバッテリーの再活用への関心が高まりつつあります。

    EVバッテリーの原料のリチウム

    その背景には、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の実行に向けて、レアメタルの需要が急速に伸びていることがあります。IEA=国際エネルギー機関によりますと、EVバッテリー向けレアメタルの2040年の需要は、2020年と比べて、リチウムとニッケルが40倍以上、コバルトも21倍になると予測されています。この需要の伸びが続けば、レアメタルの入手は難しくなります。

    このため経済産業省でも蓄電池産業を最重要技術の一つと位置づけ、去年から資源の確保やリユース、リサイクルをどう促進するのかについて議論を重ねてきました。

    東京の発電会社も、リサイクルだけでなく、リユースしたバッテリーを発電所に設置し、地域の電力供給に生かそうという取り組みを大手自動車メーカーのトヨタ自動車と始めています。
    バッテリーとして、すでに国内にある資源をうまく使っていくことは、もはや欠かせない状況になっているのです。

    欧州では「アメ」と「ムチ」が…

    この流れは、もはや日本だけでなく、世界でも潮流となっています。EUでは2035年にガソリン車やディーゼル車の新車の販売が事実上、禁止される方針です。去年、スウェーデンの巨大工場をはじめヨーロッパのEVバッテリー事情について詳しく取材したNHKの有馬嘉男記者は、こう話しています。

    ヨーロッパ総局 有馬嘉男 副総局長
    「ヨーロッパのリサイクルは日本のずっと先を走っているように見えます。こちらではいま、巨大なバッテリー工場が各地に次々と作られていますが、そうしたバッテリーはすべてリサイクルされることが法律で義務づけられることになります。特に希少金属については、高い割合でのリサイクルが求められることになりそうで、この規制、早ければことし中にも法制化される見通しです」

    スウェーデン北部に建設されているバッテリー工場 ヨーロッパで最大規模

    ヨーロッパ総局 有馬嘉男 副総局長
    「最大の特徴はEU=ヨーロッパ連合は企業を厳しく規制するだけでなく、補助金を出して育てようとしていることです。リサイクル技術を持つ優良な企業を支援する。ヨーロッパは規制と補助金、アメとムチを使って、バッテリーとリサイクル産業を育てようとしています」

    取材を通じて~本当の意味で環境に優しい活用を

    滋賀県の中小企業が進めているガソリン車からEVへの改造。これには現状、200万円から300万円ほどの費用がかかります。新品のバッテリーを使う新車のEVと比べると安いもの、ガソリン車であれば新車を購入できる価格です。このコストを私たちがどう考えるのか。コスト面をはじめEVのバッテリーという新しい技術には、今も数多くの課題が残されています。

    その一方で、今回の取材では、再生エネルギーなどと組み合わせてうまく再活用できれば、二酸化炭素の排出量を減らし、貴重な資源の有効活用にもつながるという大きな可能性を秘めていることがわかりました。

     

    EVへの転換は、今後日本でもますます進んでいくとみられます。製造や廃棄の過程で「結局は環境の負担になっている」と捉えられないよう、本当の意味で環境に優しくEVやバッテリーを活用していくための議論が、欠かせないと感じました。