プラチナ相場に復調の兆候、工業用金属に安値修正の動き広がる

2024年04月10日18時48分 配信



プラチナ相場に復調の兆候、工業用金属に安値修正の動き広がる<金相場の高騰が続く中、貴金属市場で循環物色の動き>NYMEXプラチナ先物相場は4月9日の取引で一時1,000ドルの節目を回復する展開になった。3月は900ドルの節目を挟んで売買が交錯する不安定な地合になっていたが、4月に入ってからは年初から上値抵抗となっていた950ドルを上抜き、更に1月3日以来となる1,000ドル台乗せを達成している。単純な見方としては、過去最高値更新が続く金相場に対する割安感や出遅れ感が評価された影響があろう。金相場は3月時点でも急伸していたが、プラチナ相場は目立った反応を見せず、逆行安になるような場面さえみられた。しかし、4月に入ってからは銀やパラジウムと同時にプラチナ相場に対しても値上がり圧力が目立ち、金相場の過去最高値更新が続く中で、ようやく他の貴金属相場に対しても循環物色の動きが広がり始めたことが窺える。金相場は2,300ドル台定着が進んでいるのに対して、プラチナ相場は漸く1,000ドル水準まで切り返している状況に過ぎない。金・プラチナ相場のスプレッドにロジカルな適正水準がある訳ではないが、1,300ドルを超える過去最大のスプレッド環境にあって、プラチナ相場の値下がりリスクは着実に低下し始めていた。こうした中、値上がりし続ける金相場が漸くプラチナ相場を含む他貴金属相場の水準切り上げを促し始めたのが現状だろう。急騰が続いていた金相場からプラチナ相場に対して資金をシフトする動きとうよりも、プラチナ市場内においてファンドがショートカバー(買い戻し)から途転(どてん)買いにシフトし始めている模様だ。最近の傾向としては、プラチナ相場は瞬間的に急伸しても早めに戻りを売り込まれることで、結果的にボックス相場から抜け出せない状況が続いていた。今回は950ドルに続いて1,000ドルも上抜いたが、ファンドが戻り売りを仕掛けることを回避できるのか、チャート環境と同時に内部要因環境にも変化が生じるのかが焦点になろう。<工業用金属全体が安値修正フェーズに移行している>一方、4月で大きく変わったことは、工業用金属相場全体が強気スタンスに傾斜していることだ。例えば、LME銅相場(3ヵ月物)は約14カ月ぶりの高値を更新している。銅相場は昨年1月に1トン=9,400ドル台まで値上がりしていたが、昨年後半から今年2月にっかけては8,000ドル台前半から中盤で上値を抑えられる展開が続いていた。しかし、足もとでは9,000ドル台中盤まで値上がりし、1万ドルの節目回復も見通せる状況になりつつある。もともと、銅相場に関しては脱炭素による再生可能エネルギーにシフトする動き、更には人口知能(AI)分野の需要拡大を受けて、長期的には国際需給が引き締まるリスクが強く警戒されていた。国際同研究会(ICSG)は2024年下期に大幅増産が実現することで、24~26年は年間30万~50万トンの供給過剰になるとの見通しを示している。一方、2020年代中盤には鉱山供給の伸びが抑制され、2032年までに必要な追加生産能力600万トンを確保できず、2030年までには供給不足になるとの見通しも示している。このため、足元の需給がタイト化している訳ではないが、今後の銅需給の安定化、更には脱炭素やAI産業成長の環境整備には、銅価格を押し上げて将来の増産を促すことが求められる難しい状況にある。それにもかかわらず銅相場が低迷し、銅鉱山開発の動きにブレーキが掛かっていたのは、最大消費国中国経済の低迷だった。中国の需要が抑制されるのであれば、少なくとも短期需給のひっ迫リスクは限定されることになる。しかし、中国の製造業PMIは昨年12月の49.0をボトムに、1月に49.2、2月に49.1と小動きだったが、3月には50.8まで比較的大きく改善している。活動の拡大・縮小の分岐点である50を上回ったのは昨年3月以来のことであり、中国産業サイクルが短期的に底入れした可能性が示唆されている。このため、中国経済リスクを背景とした工業用金属相場安が一服している。インドネシアなどの増産で長期的な需給緩和リスクが警戒されるニッケル相場でさえも、大きな反発こそみられないが下げ一服となっている。1トン=1万5,000ドル割れが回避され、1万6,000~1万9,000ドル水準で下値を固めつつある。こうした非鉄金属相場全体の底固さも、プラチナやパラジウム相場を押し上げるエネルギーになっている模様だ。原油を含めた産業用素材市況全体に安値修正の動きが強くなっており、こうした中でプラチナ相場は貴金属と工業用金属の双方の視点から安値修正が促されやすくなっている。プラチナ需給動向は殆ど材料視されていないマーケット環境であり、NYMEXプラチナ先物市場でも期近限月がディスカウントされて順サヤ(期近安・期先高)傾向が強く、需給ひっ迫リスクを織り込むような動きは鈍い。まずは慎重に900ドル水準はボトム圏との評価を強化する形で、支持線を950ドル、1,000ドルと切り上げ可能かを打診する環境になる。昨年12月28日高値1,031.00ドルを上抜くと、強気評価をもう一段階引き上げることが可能になる。


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