2024年03月27日19時36分 配信

金価格に関係なく買い進む中国現物筋、価格鎮静化を促す役割を放棄


 金価格に関係なく買い進む中国現物筋、価格鎮静化を促す役割を放棄

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<過去最高値圏での取引が続く>

COMEX金先物相場は1オンス=2,200ドルの節目を巡る攻防になっている。3月21日に過去最高値を2,225.30ドルまで切り上げた後は調整売りが上値を圧迫したが、2,100ドル台中盤から後半では早くも押し目買いを入れる動きがみられ、先高感を維持した展開が続いている。


短期目線で注目されているのは米金融政策環境であり、3月19~20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米金融当局者が2024年中に3回の利下げ見通しを示したインパクトが大きかった。1月と2月のインフレ指標は強めだったが、昨年12月時点の金利見通しが大きく修正されることはなく、多くの当局者が利下げへの転換を想定していることが確認されている。実際に年内に3回の利下げが可能かについては今後発表されるデータ次第になるが、まずは6月にも初回利下げに踏み切り、その後に追加利下げの余地を探る展開が想定されている。


米長短金利は改めて抑制されており、金市場に対する資金流入が促されている。米国以外でも利下げを巡る議論が活発化しているためドルの値動きは鈍いが、それでも為替要因で金相場が値を崩していく必要性は薄れている。3月29日に2月PCEデフレーター、そして4月5日に3月雇用統計と、インフレと雇用指標を確認しつつ、利下げを織り込む形での堅調地合が想定される。


<過去最高値の金を買う中国>

一方、米金融政策環境以外の視点からも金相場に対するサポートが強化されている。それが中国現物市場の動向だ。中国通貨人民元安の影響で人民元建て金相場は過去最高値を更新しているが、中国現物市場における金需要は衰える兆候が見られず、逆に勢いを増している。


これまでの経験則であれば、金相場の上昇は「西側投機買いをアジア現物売りが抑え」、「アジア現物買いと西側投機売りが抑える」形でバランスをとってきた。このため、金相場が過去最高値を更新した局面ではアジア現物筋が買い控えを行い、金相場の急伸が阻止されるのが通常の相場パターンだった。


しかし3月上海黄金交易所の売買状況をみていると、一貫して高水準の売買が続いている。金価格が上昇しても下落しても高いレベルの買い圧力が維持されている。昨年9月のように金相場が大きく変動した局面での出来高が、今や通常の水準になっている。高値で買い控えるのではなく、逆に買い急ぐような動きが観測されている。


まだ3月全体の売買動向は確定していないが、3月に関しては月初から月末にかけて、一貫して大規模な買いが入っていることは間違いない。仮に投機筋が利食い売りを入れても、この現物需要環境であれば値を崩す余地は乏しい。


変化がみられたのは3月4日であり、1日(金曜日)の欧米市場でドル建て金相場が2,000~2,100ドルのボックスを上抜けし、週明け4日(月曜日)の上海市場でパニック的ともいえる買いがみられた。中国現物需要が、「安値を買い拾う」から「価格に関係なく買う」に転換している。


1月と2月の段階でも中国現物市場には勢いがみられ、2月の春節の連休中の金需要の強さなどは各種メディアでも報じられていたが、その時よりも金需要は勢い付いている。中国経済の先行き不透明感、株式や不動産に対する信頼感の低下もあり、小口から大口まで資金が安全性が高いと評価されている金市場に流入している。


中国人民銀行(中央銀行)も1月、2月と買い続けている。1月が10トン、2月が12トン、2ヵ月合計で22トンの需要が報告されている。民間と公的部門が大量の金を吸収していることが、米金利やドルの動向から正当化される以上の金相場の力強さをもたらしている。


<インドは婚礼需要停滞、ETF需要が堅調>

一方、これと状況がやや異なるのが中国と並ぶ主要な金消費国であるインド市場の動向だ。インドは婚礼シーズンの終わりを迎えるタイミングだが、インド通貨ルピーが底固いものの国内金価格は過去最高値を更新している。このため、都市部と農村部の双方で需要の減少が報告されている。宝飾加工業者も、在庫手当を急ぐ必要はないと考えており、価格が低下するのを待つスタンスに傾斜している。


インドでは金上場投資信託(ETF)に対する資金流入傾向が強まるなど、投資分野では金需要は寧ろ高まっている。有望な投資先として金が選択されている。一方で、婚礼用などのインドの伝統的な金需要に関しては、明らかに価格高騰からダメージを受けており、金需要の二極化が進んでいる。


また、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は4~6月期のインド金需要が低迷を続ける可能性も指摘している。インドではこの時期に総選挙が行われるが、過去の総選挙時期の金需要が抑制される傾向が報告されている。過去4回の総選挙期間中の金需要は、直近の2019年は前年同期比プラスだったが、その前の2014年、2009年、2004年はいずれもマイナスになっている。選挙期間中は不正防止のために金や現金の動きが厳しく監視されることもあり、金需要が先送りされる傾向が報告されている。


いずれにしても1年で最高の吉日とされる5月10日のアクシャヤ・トリティヤ周辺に需要回復が期待されるが、インドに関しては短期目線で金相場の値上がりにブレーキを掛けつつ、値下がり局面での下値をサポートする効果が想定される。


なお、インド中央銀行も1月に9トン、2月に5トンと、2ヵ月合計で14トンを購入している。中国の22トンには届かないが、中央銀行の金需要が従来の中国とロシアの二ヵ国から多様化を見せていることに注目したい。まだ中央銀行の金準備を増強する余地は大きいとみられている。



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