投資は自己責任で

2024年01月31日19時28分 配信

 

<2023年の金需要は10年以降の統計で最大>

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2023年の金需要は10年以降の統計で最大になっている。総需要は4,898.8トンだが、これは22年の4,751.9トンを3.1%上回っている。これまでの最高は19年の4,878.2トンだったが、それを上回る数値になっている。

項目別でみると、宝飾が1.2%減の297.8トン、テクノロジーズが3.5%減の297.8トン、投資が15.1%減の945.1トンとなっているが、OTC需要が7.5倍の450.4トンに達している。すなわち、需要拡大の最大の要因はOTC需要の急増によるものになっている。

金需給の統計上、OTC投資はその他扱いされることも多いが、WGCからはソブリンファンド、富裕層、ヘッジファンドなどが地金投資を行った影響が指摘されている。すなわち、通常の小売店などとは異なるルートで大口の資金が金市場に流入した可能性が高い。

<OTC含む投資と中央銀行の需要が強い>

OTC投資以外だと、宝飾需要は2年連続で減少しているが、金価格が過去最高値を更新したことを考慮すれば、底固さを維持したと評価できよう。主要市場だとインドが6.4%減の562.3トン、中国が10.4%増の630.2トンになっている。インドは金価格高騰を受けて、金含有量の少ない宝飾品が好まれた。一方、中国はゼロコロナ政策の終了の影響の方が大きく、二けたの需要拡大になった。

テクノロジーズも同じく2年連続の減少であり、10年以降の統計では最低になっている。金価格高騰の影響というよりも、電気製品全体の市場が落ち込んだ影響が大きかった。ただ、年後半はLEDやワイヤレス製品、スマホなどの需要回復が報告されている。

投資は地金・コインが2.7%減の1,189.5トン、上場投資信託(ETF)関連が244.4トンの売り越しになっている。地金・コインは減少に転じたが、WGCからは急増したOTC投資と合わせてみる必要性が指摘されている。インドは6.7%増の185.2トン、中国は28.1%増の279.5トンとなっている。インドは金価格高騰が宝飾需要を抑制したが、投資需要は逆に価格高騰で堅調だった。中国は宝飾と同様にゼロコロナ政策終了の影響が大きいが、金価格のパフォーマンスの良さ、通貨安、上海株式相場軟化の影響なども指摘されている。

ETFは欧州で180トン規模の売却が報告されており、北米も82トン売却になっている。各国中央銀行のタカ派姿勢が金ETF保有残高の圧縮につながった。金利上昇や通貨高が利食い売りを誘っている。米地方銀行の信用不安問題などが一定の需要を創出したが、年間でみると3年連続の売り越しになっている。

公的部門は前年比マイナスになったが、2年連続で1,000トン台を確保した。主に新興国の中央銀行が購入しており、中国が225トン、ポーランドが130トン、シンガポールが77トン、リビアが30トンなどになっている。10~21年までの平均が473.3トンに対して、22~23年の平均は1,059.6トンであり、明らかに22年前と後では需要環境が急変している。

全体としては、OTC投資を含まなければ22年の4,699.0トンから4,448.4トンまで5.3%減少する一方、OTC投資を含むと4,751.9トンから4,898.8トンまで3.1%の増加になっている。そして、このOTC投資の大部分が地金と推計されていることを考慮すれば、金需要拡大の牽引役は地金・コイン投資との評価になろう。

<WGC=2024年も金需要は底固い見通し>

さて、23年の金需要は金価格高騰の影響を受けて抑制されるのではなく、逆に金価格高騰の牽引役になっていることが確認されたが、WGCは23年と同様に24年も中央銀行とOTC投資が堅調なことが、他セグメントの落ち込みを相殺する形で、強めの需要環境を想定している。

宝飾は、世界経済の減速と金価格の高騰で弱めの想定になっている。特にインフレ率が大きく低下すると、実質ベースでの割高感が需要にネガティブな影響を与える可能性が指摘されている。テクノロジーズについては、半導体市場の回復、人工知能(AI)の熱狂を背景に底固く推移する見通しになっている。

地金・コイン投資は欧州市場の鈍化が、インド・中国市場の底固さで相殺される見通しになっている。3年連続で売り越しになっているETF関連投資については、各国で利下げが始まること、地政学リスクが維持されていることで、年後半には買い越しに転じる見通しが示されている。

中央銀行は23年水準を下回る可能性があるにしても、22年より前の水準は上回る見通しになっている。各国中央銀行が長期戦略に基づいて保有量を拡大する見通しになっている。

OTC投資に関しては、23年の反動から調整売りが膨らむ可能性は指摘されている。また、米大統領選の年で投資家がポジション圧縮を進める可能性も指摘されている。ただし、これらを考慮に入れても投資需要は強いと予想されている。WGCからは、長期金利の低下、ドルの鎮静化、地政学リスクの高まりなどが、金需要にポジティブと指摘されている。逆に経済成長鈍化、インフレ率低下がネガティブと指摘されている。

 

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