篠崎菜菜緒は部室の前で立ち止まる。ドアに手を伸ばすが、ノブに触れるのを躊躇する。中に笹村薫が居たらと考える。何を話していいか悩んでしまう。頭の中でいろいろシミュレーションを重ねていくが、結局何もいい案は浮かばない
「何してんの?」
後ろから声をかけられドキッとした
「入るの?」
ゆっくり振り向く。腰に手を当て、呆れ顔の谷田凛がいた。声でわかってはいたが、薫でなかったことでホッとした
凛「もう」
と言って凛がドアを開けようとする
菜菜緒「ちょっと待って」
と言ったが、凛はかまわずドアを開けた。中には誰も居なくてまたホッとする
凛「入んないの?」
菜菜緒「は、入る」
2人は無言のまま着替える
凛「さて」
ロッカーを閉めながら振り返り
凛「何があったのかしら?」
菜菜緒「いや、別に…何もない…」
凛「って感じじゃないでしょ」
菜菜緒「…」
菜菜緒がうつむく
凛「そう言えば」
凛は菜菜緒を見て話題を変える
凛「彼から何か聞けた?」
菜菜緒は無言のまま拳をギュッと握り、小さく震える。そんな菜菜緒を見て凛は菜菜緒を抱きしめた
凛「いいよ。何も…」
菜菜緒の目から涙がとめどもなく溢れた
つづく