外村千紗は唐沢愛実と別れ1人で帰っている時
「ちょっといいですか?」
後ろから声をかけられる。他に人の気配はないのですぐに自分のことだとわかり振り返る
「やっぱり君か」
声をかけてきた男性は千紗のことを知っているようだったが、千紗はその男性に記憶がない。千紗は首をかしげる
「良かった、無事だったんだね」
無事?と言われてもやはり思い出せない。背が高く、服の上からでもわかる均整のとれた筋肉。顔は千紗の好みだった。これだけイイ男を忘れるはずがない
「せっかく会ったんだ、どこか…」
千紗は頭を下げ
千紗「すみません、急いでうちに帰らなければならないので」
とやんわりと断る。いくら好みの男でも吉田圭子と最後のお別れをした後にそんな気になるはずもない
「だったら送って行くよ」
千紗「すぐそこですので」
「なんだよ」
男がボソッと言う。千紗はその時の男を見て背中がゾクッとした。そして、すぐに別れなければと感じ
千紗「それじゃ」
と言うと走り出した
少しして男を追って来る気配がないので立ち止まる。振り返る、もうけっこう離れているのにまだあの場でこちらを見ている気がした。千紗は急に怖くなりまた走り出した
「なんだ、なかなかやるね。まあここで終わるぐらいなら面白くないからな」
男はニヤリと笑うと、煙のように消えていった
つづく