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著: 半村良 
ジャンル 伝奇
  ☆☆☆
 なんだ、私最近紹介している本はみんな洋書ばっかりじゃないか。
 ・・・って事で、私が高校生の頃に読んだ記念すべき「伝奇」小説
 の第一号も紹介してしまおう。 
 私はこの頃から日本人作家一辺倒の時期が以後20年以上続くのである。
  ☆☆☆
 この本、学友が「面白いから読め」と貸してくれた。
 外国作家のSFばかりにかぶれていた私は日本人作家を正直小馬鹿に
 していたきらいがあった。 
 私にこの「電気」でも「伝記」でもない「伝奇」という聞きなれない
 ジャンルの小説を貸してくれた学友は、その前にも平井和正の
 「狼男シリーズ」で見事に私を日本人作家にハメてくれた憎いヤツなのだ。
 で?「伝奇」ってなんだ? 
 ・・・伝承を元にした奇妙な小説という解釈を私は独断と偏見で行ったが、
 まぁ、案外ハズレてはいなかった事が後にわかる。 
 正直、「半村良」という作家はこれを読むまで全然知らなかったのだ。
 何せ、30年以上前の話なので、こんなに有名な作家になろうとは思わなかった。

 

 いや、はまった。 
 何がはまったかというと、当時高校1年生、多感な時期である。 
 この本、結構エッチな描写が多いのだ。あはははは。 
 いや、今となっては可愛いものなのだが、それでも当時は十分うひひひである。 
 こんな本読んでいるのが親にばれたらどうしようかと、書店で買った他の本の
 ブックカバーを掛けていたのを思い出す。
 物語はズバリ、「吸血鬼伝説」がテーマだ。 
 当時は吸血鬼っちゃ、ブラム・ストーカーのドラキュラしかなかった。 
 ヴァンパイアなどというお洒落な言い方は誰もしなかった。 
 吸血鬼=ドラキュラだ。この『石の血脈』という作品、吸血という行為は
 一種未知のウイルスによってもたらされた伝染病という解釈をしていた。
 「ほほぉ~!」だった。 
 エッチ描写も含めて、私はその内容にのめりこんだ。(私って正直だなぁ)

 

 

 日本における古代の神々の伝承、巨石信仰にまつわる話とウイルスによる吸血鬼の話。 
 さらには遺伝的に抗体をもった家系が吸血ウイルスを注入されると吸血鬼にならずに獣人
 (狼男だな)に変貌してしまうという解釈に私は目をみはった。
 吸血行為そのものが、血を吸うわけではなく、肉体に舌からウイルスを注入する・・・
 必然性的描写がある。 
 ひとたび吸血ウイルスに冒されると、主従関係が発生し、注入者はねずみ講のような関係に
 広がっていく。 
 同時に肉体にも変貌がおとずれ、紫外線にさらされると火ぶくれのような症状を引き起こし、
 赤い色しか見えない部分色盲となる。 
 日本の鳥居や神社が赤く塗ってあるのは「神」を迎える道しるべだという解釈には心底面白い!
 と思った。 
 やがて、肉体の変貌が進み、食事は液体しか受け付けなくなり、最終的に永遠の生命を得る
 ためのケルビム(石像のような状態)になるには大量に人間の血液を必要とする。 
 その、石像のような状態で何100年もの眠りにつき、次に目覚めたら1度だけのウイルス射出
 の後に不死、血液すら必要でない「神」となる・・・こういった謎が主人公やその妻、周囲の
 女達のドラマで解き明かされていく。
 まさに、巨石信仰と古代神と吸血鬼や狼男伝説をひっくるめたような「伝奇」ものなのだ。 
 私の記憶が確かならば、本作は泉鏡花賞をとっていた力作だ。

 

 

 偶像破壊(イコノクラスム)とか、当時の私には想像も出来なかった難しい言葉の連続も
 多かった、「大人向け」の本であることは読み始めてすぐにわかったが、夢中で読んだ。 
 この後、著者、半村良の作品は「産霊山秘録(むすびのやまひろく)」とか映画にもなった
 「戦国自衛隊」とか、ちょっとなんじゃこれ?の「亜空間要塞」とか、ええかげんにせーよの
 「亜空間要塞の逆襲」とか・・・まぁ、そういったものは読み漁った。 
 いや、もっとエッチな本だったらもっとファンになった・・いやいや。

 

 

 私に平井和正と半村良という二大作家を目覚めさせてくれた学友のMくん。 
 彼はいま何をしていることやら。 
 その後彼は私のニーズを満たすべく究極の「大藪春彦」という作家を紹介してくれた。 
 大藪春彦っちゃ、銃と車と女しかでてこない。
 あ、中には単車とか狩猟もあるが・・・ もう、エッチもエッチ、たいがいエッチで
 アクション満載!きゃっほ~!だった。
 おかげで、未だに我が家の本棚は「大藪春彦全集」に占拠され、海外旅行に行っては
 ひがな一日実弾射撃ばかりする立派な人間に成長してしまった。 
 肝心のエッチは・・・まぁ、世の中そうそううまくはいかない。
 人間、固いだけが全てではない。 そんな時期もあるんだ。 あるでしょ? あるよね? 
 絶対ある!!

 

 

 菊地秀行風に今回は締めくくってみよう。

 

 

 『あるある大辞典を観ながら』