ダジャレでございますとも・・・

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 田中啓文著 一応ジャンルはSFか?
 SFなのか?
 ☆☆☆
 書店の店頭でこの本を見かけたとき、
 いちもにもなくビビビっと来た。
 残念ながら著者については全く知らなかった。
 何がビビビっと来たかというと、その無茶苦茶
 なタイトルとアメコミを思わせる毒々しい色使
 いの表紙絵だ。 
 いやもうタイトルからして『銀河帝国の興亡』
 (創元推理文庫刊)をパロっているのは一目瞭然。 
 妖しい本を見かけてしまうとついつい手にとって
 みたくなり、手にとってみるとついつい読んでみ
 たくなるのが私の悪い癖だ。

 

家に持ち帰って読んでみた。
こ、これは!この本は新たなジャンルを開拓する画期的な本かも!!(嘘) 
一応、年代記ともとれる銀河史の体裁はしているが、後から無理やり
そうしたんじゃ・・・と思えるようなあからさまな短編構成。 
そして、その短編がどれもこれも見事な駄洒落オチなのだ。 
駄洒落をもとに短編小説をSF仕立で作ってしまえる才能も凄いと
いえば凄いが、あまりのオチは笑いを通り越して読者を唖然と
させてくれるだろう。 
いや、私、こういうの決して嫌いではない。
唖然文学? いや、駄洒落文学? 駄洒落文学なのか?

 

 

例えばひとつだけ簡単に紹介してみよう。ある惑星が外宇宙より
侵略を受ける・・人類には超光速で侵略のあった事を伝える技術がない。
侵略者は人類の居住惑星を次々と滅ぼしていくだろう、という状況で。 
考え出されたのが時間・空間を問わない通信手段としての「呪殺」である。
思念の強い家系が選ばれ各惑星にひとりは「呪殺士」が居る。 
その呪殺士は有事には決められた星の呪殺相手を呪い殺す。 
呪い殺され役の側にはその星での呪殺士がずっと控えている・・・という、
言わば呪殺チェーンとも言うべきネットワークでつながれた銀河世界に
ホントに侵略者がやってくる。 
アホらしい内容を大真面目な語り口調で物語りは展開されていくのだが・・ 
この話、『呪いはノロイ』という駄洒落から来ていることは、カンの良い方
には既にお分かりだったろう。
本作の挙句のオチは・・・ あ、いや、やめとこ。 
ヒントはメールなのだが、想像にお任せする。

 

 

表題作『銀河帝国も弘法の筆の誤り』では妖しい空海が登場するが、
彼らの禅問答はこれ駄洒落合戦。 
なんだか、吉本のかんぺいちゃんのギャグを見ているような感じでこれまた話が進んでいく。
本作、SFマガジンに連載された短編を一冊にまとめたもののようだが、SFマガジンの
購読もここ何十年していないし、全く知らないままに集大成を一気読みすることになったのだ。
正直、「あほくさ!」の短編と爆笑ものの短編とにやっと笑ってしまう短編がある。 
肩の凝らないものばかりなので、息抜きに読むにはいいかもしれない。
ただし・・・あまりの駄洒落さにムカついたときはどうかご容赦のほど。 
毛色のかわったSFなのであえて紹介してみた。ほんとにSFなのか?