さよならも告げずに姿を消した主を飼い猫は健気に一途に待ち、探し始める。



生きていられないと繰り返しながら君はそれでも生きていく。
やがてほとぼりの冷めと同時に新しい宿主を捜し求め、また君は同じ戯曲を繰り返す。


君の首にかかった十字架は救いの証ではなく、救われない死への餞のクロス。



硝子の名前を受けた哀れな猫は砕かれる。



二度と現れない名前を繰り返しながら。
さぁ、終わりにしようか。
哀れな捨て猫。


戯曲は突然劇中に幕を閉じる。

そして舞台の上にいたはずの主はどこにも見えず、客席も空のまま。

一人芝居を続けていたヒロインは哀れにも、それが自己満な一人芝居だと気付くことはできない。





お待たせしました。

砕いて壊して消してさしあげましょう。
大丈夫、安心したらいい。
込み上げる虚無感と淋しさは気のせいや勘違いや高望みなんかじゃないよ。

君が感じ始めた猜疑心も孤独感も、満たされない欲求も必然的に起こるべき症状。



何故なら以前より確実に、君はあの人に必要とされていないから。
そして残酷にもあの人はそれを隠そうとはしないで、言葉の端々で明かしている。


君は恐らく感じている。

以前と打って変わって繰り返されなくなった言葉。

見られなくなった積極性。

能動的ではなく他動的に切り替わった執着。

望めばこそ応えてくれても、自らは与えられない甘い夢。

必死さの無い嗜め。

興味の薄さを感じ取らせる受け答え。




言いようのない淋しさは、君の前に広がる不変の事実。



そしてそれが今まで君が勘違いし続けてきた夢幻ではなく、本当の現実。