富山坪野鉱泉発室蘭貯水池行き 室蘭女子高生失踪事件考9 | 人はパンのみにて生くる者に非ず 人生はジャム。バターで決まり、レヴァーのようにペイストだ。
1996年、廃墟に肝試しに向かった当時19歳の女性2人がそのまま消息を絶つ事件が富山県で発生した。県西部の氷見市民だった2人が向かった先は、県東部・魚津市の坪野鉱泉にある廃ホテルと見られていた。魚津に居ることをポケベルにて友人に伝えていたことから、2人がどうやら目的地付近に到達したであろうことが推測されていた。目的地の廃ホテルは心霊スポットとして知られている。また、暴走族の溜まり場としても知られていたが、2人は以前にも訪問したことがあり、無論、その時は無事帰還していた。場所が場所だけに2人は暴走族との間のトラブルに巻き込まれたのではとの憶測が為された。また富山は日本海側だけに北朝鮮拉致説も流布されてきた。いずれにせよ、クルマごと消失していることからみて、やはりどこかに転落した線が有力であるように感じていた。それが何者かに追い詰められたせいであったか、単純なハンドルミスによるものかは別にして。

2020年3月、この事件は大きな進展を見せた。伏木富山港(富山新港)の海底から乗用車が引き上げられ、中から複数の人骨が出てきたのである。この乗用車は失踪女性所有のもので人骨を鑑定した結果、失踪女性2人のものであることが確認された。

現場は当時、ナンパスポットとして地元では有名な場所だったそうだ。実は乗用車が現場の海へと転落したのを見た人が居るとの情報が2014年までに上がっていたのである。そこからそれが誰なのか突き止めて事情を聴いたのが2020年1月のことだったとの由。どうやら真相としては、目撃者の3人が被害者2人に対してナンパを仕掛けて車のドアに手を掛けるなどした為、被害者が車を後ろ向きのまま急発進、そのまま海へと転落したようである。きっと前方を男たちに塞がれていたのであろう。

ここで重要な事柄は、クルマが海へ転落したのを見たと証言した人が存在し、また、クルマが海へ転落したのを見たと云っている人が居ることを知っていた人が複数存在している点にある。目撃者の特定まで5年以上要していることを見るに、恐らくそれは噂レヴェルのものであった筈だ。しかし地元にそう云う噂が立っていたわけである。但し、それが坪野鉱泉失踪事件の被害者であるとは認識されていなかったが。

本件の結末を知り、思い浮かんだのが室蘭女子高生失踪事件である。この事件では被害者の遺体が現場周辺の貯水池付近に存在するとの噂がこれまで立ってきたからだ。

室蘭は今でこそ人口8万人余りの、その数字だけを見れば小規模にも思える都市だが、高度経済成長期には国勢調査で16万人、住民基本台帳で18万人台の最大人口を記録した北海道一の工業都市であり、事件当時も辛うじて10万人台を維持していた。室蘭の隣市は、登別である。登別と云えば温泉に代表される観光都市のイメージを抱きがちだが実際には、室蘭のベッドタウンと云うのが登別第一の実相である。温泉のある登別地区、市役所のある幌別地区(登別市は元々、幌別町を名乗っていた)、鷲別地区の3つに登別市は大まかに分かれるが、この内、鷲別地区は完全に室蘭市街地と一体化しており、その市街地は断続的に幌別地区まで連なっている。室蘭と登別の人口を合わせれば事件当時は15万人台、今でも13万人に達している。これだけの人口を擁し、且つ、室蘭には大規模工場が立地している為に、周辺には幾つかの貯水池が存在する。その付近に被害者の遺体があるらしいとの噂が立ってきたわけである。

富山の件を踏まえて考えるに、この事件は単独犯ではなく複数犯によって行われたのだと云うことが推察される。少なくとも遺体処理の場面に於いては、複数の人間が関わったと云うことだ。そうでなければこんな噂は立たないのである。その「告白」が噂へと化けたとは云えども、積極的に証言することもなく、殺人事件や怪しい失踪事件が恐らくは発生していないことを踏まえれば、口止め料を貰っている可能性はあるかもしれないがそれ以上に主犯の人間を恐喝することもなく、したがって彼らの間には一定の上下関係や共犯関係が構築されていることが窺われるものでもある。貯水池、複数犯と云う要素を加味すれば、疑惑のパン屋とその周辺の他に、室蘭工大関係者の関与を想起しないわけにはいかないものである。しかし何と云っても自分自身にもやましい点があるのだろう。つまり、直接殺害には関与していなくとも、被害者に声を掛けて車に乗せた、被害者を凌辱したと云った行為に加担していたわけである。完全単独犯、若しくは全員が直接的に殺害に関与していたなら、このような噂話は流布されまい。誰も「告白」しないからである。