サティ最寄りの「東町2丁目」バス停付近で被害者は同級生2人と挨拶を交わし、これが最後の目撃情報となっており、13時31分発「中央町・工大循環線」外回りに乗車したと「推察」されている。そして13時40分にパン屋最寄りの「東通」で下車したと「推察」されている。その根拠は、サティ最寄りの「東町2丁目」から「東通」、それも丸井今井付近にある方の「東通」ではなく、パン屋と目と鼻の先に位置している方の「東通」バス停に到達する正に最適なバスがこの便であり、「東通」下車客の一人が通学定期を用いたためだ。また、13時40分過ぎに交際相手が立て続けに2回、被害者のPHSに連絡を入れているが2回とも、受信したアンテナが「東通」付近をエリアにするものだった。が、20人以上いるバスの乗客も、「東通」で下車した10人以上の乗客も、誰一人として、被害者のことを覚えていないのである。
以上の点から、果たして被害者は件のバスに本当に乗車していたのかどうか、疑問視するものである。恐らく、乗ってはいなかったのだろう。根拠はある。
思い起こすべきであるのは、被害者が本店勤務を希望したその理由だ。「学校の帰りに立ち寄れるから」である。つまりそれは、通学経路上に位置している、即ち白鳥台線沿線だからである。被害者の意識の中には白鳥台線のことしかインプットされていなかったのではなかろうか。事実、この当時の白鳥台線は、白鳥台行だけでも1時間当たり2-3本、すずかけニュータウン行を含めると1時間当たり3-4本の運行があった。地方都市でのこの水準、事足りるには十分過ぎるものがある。そんな被害者が循環線のバスに乗るだろうか。彼女は隔絶のニュータウン・白鳥台の住人であり、日常的に東室蘭市街地にやってくるようになったのは、たかだかここ1年のことに過ぎない。循環線が「東通」を通ることを把握していなかったとしても何ら不思議ではないのだ。また、循環線には外回りと内回りがあり、内回りに乗ってしまうとかなりの遠回りを強いられる羽目に陥る。
更にもう一つ、問題点がある。白鳥台線と循環線では経路が異なる。彼女が持っていたのは、白鳥台線の定期券だ。出発地と目的地が同じであっても、経路は異なり、殊にバス停の位置が大きく異なる(白鳥台線は丸井今井付近、循環線はパン屋付近)と云う非常に決定的な部分もあるだけに、自分が所持している定期券では循環線に乗れないものだと…仮に循環線が「東通」を通ることを把握していたにせよ…考えることはごく自然な成り行きだ。実は当時の時刻表を眺めると、被害者がサティからバスに乗ってパン屋へ向かったと思われている13時台のみ白鳥台線のバスは少ないのである。東町ターミナル基準で見ると、13時16分発の次が14時16分まで無い。こんなに間隔が開くのは13時台だけであり、他の時間帯を見ると、12時台は20分発の次が50分発、14時台は16分発の次が30分発、15時台は10分発の次が26分発、更には35分発、45分発と頻繁に運行されている。したがって被害者は、30分頃にバス停に行けば、白鳥台線のバスがあるものと感覚的に思っていたわけである。ところが13時台には、白鳥台線のバスは走っていなかった。
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