世界化と組織化 | 人はパンのみにて生くる者に非ず 人生はジャム。バターで決まり、レヴァーのようにペイストだ。

ドイツ7-1ブラジルは衝撃的だったが、その4年前にもドイツはアルゼンチン相手に4-0のスコアで大勝している。

ドイツの崩しが深いのに比べてアルゼンチンは浅い、エグっている感じが余りしてこない。アルゼンチンは細かいパスを主体にドリブルで突進してくるイメージだが、個々のクリエイティヴなタレント性に全面的に依存している。ドイツは組織立っていて、考える暇が無くオートマティックにパスと突進を繰り返している感。そしてドイツらしからぬ柔らかなタッチ。元々足元の技術は結構あったのだが、何か不器用な印象が拭えなかった。ドタドタとした動きで硬い感じ。それが消えてしまって、南米勢・東欧勢と比べてみても余り遜色がない。組織化の波が押し寄せたこともあって、南米と東欧からクリエイティヴな要素が薄まった点も考慮に入れる必要はある。世界化してドイツは進化し、逆に南米や東欧は後退してしまった。

個の創造性が奇跡の交わりを織り成さないと技術が高いところに超組織化してしまった相手には勝てる見込みがしない。予想外の大差がついた試合と云うことでは、98年大会のナイジェリア対デンマークを思い起こす。

試合前の感覚では、ナイジェリアの選手自体がそうだったのだが、デンマークのことなんか眼中になく、次のブラジル戦に思いを馳せていた。ところが蓋を開けてみたら、アフリカ勢特有の脆さがもろに出て、デンマークにディープに崩される展開が続いた。最後に意地の1点を返したことが却って、この悲惨さに花を添えた感が拭えないのは、ドイツ7-1ブラジル同様である。


デンマークは次のブラジル戦でもあわやの展開に持ち込んだ。

ブラジルのディフェンスもナイジェリアと大差ない脆弱さを曝け出した。但し、攻撃陣のタレント性がナイジェリアを大幅に上回って、力ずくでデンマークをねじ伏せた恰好。ブラジルはこの後、オランダと互角、フランスに惨敗。02年もイングランド相手に際どい勝利(決勝のドイツは、幸運な勝ち上がり+バラック欠場を考慮して除外)と欧州の強豪相手にすっきりとは勝てなくなってきていたわけだ。

元々、個の南米、組織の欧州と云う色分けはされてきたが、南米の個がどうかすると衰えている一方で、欧州の組織は更に磨きがかかってそこに世界の才も集っている。世界化されたからこそこれを有効に運用するためには、更なる組織化の必要に迫られたのだとも云える。欧米支配層や配下の若年層が世界化の流れに抗う風潮に対して、やれレイシズムだ排外主義だと非難を浴びせるのも、サッカーで露わになった成果を見れば、ここから社会全般もその傾向なのだろうと類推すれば…分かる。

日本の場合は意外と、この「世界」の組織を相手にすることが出来る。寧ろ、個の創造性を全開にされた方がズタボロになる。だからこの世界的潮流に対して、何とか対応してやれてしまう部分がある。それが決定的な遅れへと繋がる不幸の蕾を成育させているきらいがある。繰り返すがこれは表向きサッカーの話だが、サッカーだけに止まる話ではない。