にぎやかだった頃の母の実家みたく、
またおばあちゃん家がにぎやかになった。
おれがインテリアを少しいじっただけなんだけれど、
おにんにんは(おれの伯父)は”見違えるようだな”と言った。
照明を落とすとブラックライトが点灯する仕組みと、
大きいテーブルの上にはピラミッド型のザリガニの水槽を作った。
猫がいっぱいいて、人が程よくいっぱい来て、
おばばあちゃんのご馳走がいっぱい出てきた。
・・・・
おれはどっかの放送局で働いている。
たぶんNHK。
おれは格安でチケットを提供する、
局員だけで構成される舞台演劇のシナリオとキャスティングをしている。
毎日、お客さんが少しずつ増えるのが嬉しい。
”森の中の赤い川”というタイトルだ。
敢えて、局のユニフォームだけを衣装として、
中学生の文化祭の出し物みたいな感じで演出している。
おれは食堂で配膳する事を度々手伝う。
高良みゆきさんと、若瀬いずみさんと一緒にメインディッシュと、
ドリンクを用意する係だった。
もう一人はアルバイトの稲垣さん。女性。
稲垣さんがレッドアイのレシピを間違えて、
若瀬さんがそれを豪快に飲み干して、稲垣さんに間違いを指摘する。
稲垣さんはしょんぼりするが、
おれが”誰にでもあることだよ”と慰める。
ある日、きしめんみたいな、赤いソースが絡められた主菜があって、
”それジャージャヤー麺?”と高良さんに聞くと、
ドミグラスソースだと、おれにジェスチャーで伝える。
夢の中で夢を見る。
巨大なピンクの塀の前の流れる川に寝転んで
星のきれいな夜に
舞台の役者兼スタッフと一緒に星を眺める。
おれは体温を測る為にわきの下に体温計をはさむが、
何回やっても26℃~27℃の間しか測定されない。
看護婦にこれはどういう事なんだと尋ねると、
スイッチを入れたらすぐ、わきの下はさみなさいとの事だった。
酒を飲んでいてテーブルをはさんで救護のおばさんが、
”貧乳ギャル”にいきなりせまられたらどうしちゃうのよ?
とおれに問いかけるが、
おれは、”なかなか貧乳も好きですよ”と答えると、
スーツをセクシーに着た丸田さんというなかなかきれいな女性が、
”あたしだとどんな感じ?”とおれに問うてくる。
丸田さんに注目すると”ほっちゃっり”という形容が当てはまる、
不愉快ではない豊かな肉の付き方と、大きな乳房が印象的だった。
おれは”そういうのもいいですね”と言った。
寝転んでいると流れ星が見えると誰かが言った。
おれも流れ星を見たが、
その星はやがてくねくねと縦横無尽に動くではないか。
”UFOだ”、”アダムスキー型だ”と皆が口々に言う。
おれたちは見た事をデータとして明確に動画に記憶できるので、
目撃者は人間を統べる宇宙人に追われてしまうのだ。
目撃者は逃亡するために逃げる。
友達が逃亡の際のバイクのキーを無くしてしまい、
おれたちはやけくそになる。
そんな夢の中で見た夢。
”森の中の赤い川”はそんなに長い歌じゃない。
むしろ短い。
けれど、おれは独自の解釈で演出するんだ。
クライマックス。
”ある日晴れた森の中 あの人を見つけた”
”とても愛しい人よ あの人を見つけた”
”家へ帰りベッドの上 あの人は待っている”
というシーンでは、
敢えて最後の犠牲者たる役の男を局内で一番醜く、
皆に軽んじられている小太りで出っ歯の男のスタッフを選んだ。
猟奇殺人者の役の、美しいスタッフに、
ベッドの上で首を噛んで血を吸われるという演出を最後に、
醜い男はベッドの脇に引きずられてゆくという最後。
大喝采のもとに舞台は終わる。
おれもチョイ役で出ていた。
スタッフロールの様に出演者兼スタッフが
大演団しながら客席の中央を抜ける。
大喝采。
客席の裏側の局内におれが出ると、
おれの上司たちが驚いておれに寄ってくる。
日通の頃の安藤さんという、
”アンブー”と言われて皆に馬鹿にされてた昔のアルバイトの上司が
”お前がやったのか?”と言うから
”おれが書きました、脚本”と言う。
何でもチケットピアではチケットが飛ぶような売れ行きだったという。
みんなが大いに驚いた。
急遽、局を挙げてのパーティーが開かれた。
おれの周りにたくさんの人が寄ってくる。
若く美しい白人が達者な日本語で
”おれもいつか使ってくれよ”と言う。
おれは桃太郎伝説の”酒呑童子”に起用してやる、と言う。
酒呑童子が不屈の魂で生き延びる様を説明する。
竹井くんが着物を着て”タケクリ、タケクリ”と淡々と面白い口調で、
おれの前をレレレのおじさんみたく左右に動く。
おれは”きみも是非、起用するよ”と言う。
座敷の席で一番奥の隅っこの席におれは座る。
松下由貴さんが座っており、爪を切っている。
飛散した爪が、おれのおつまみに飛び散っており、
”松下さんの爪、かなり高値で売れるんじゃない”と言ったら、
松下さんは嫌がりながら困った。かわいい。
”西川なんかすごい喜びそう”と更に言う。
冗談だよと言って爪を払う。
すると、後ろの席の山田邦子が爪を切りだし、
周りの男たちに切った爪をばら撒いている。
男たちは群がり、爪を拾う。
おれは成功した多幸感に満たされていた。
更におれは伸びる。
どこまでも伸びる。
伸びろ。
伸びろ。
伸びろ。
伸びろ。
おれは何処までも尽きない。
だれかが喜び続けてくれるかぎり。
北小金の家に、あのにぎやかさをぜったい取り戻すんだ。
北小金のあの豊かな正月をぜったい取り戻すんだ。